【米利下げの可能性を受け金はさらに上値を追うか】 NY金2月限の続伸が続いている。11月14日に1955.4ドルまで値を落とす 場面があったが、その後は反発に転じ、28日は終値ベースで2050ドルを突破。続 く29日にはさらに値位置を切り上げて5月16日以来の水準となる2072.7ドル に達したうえ、終値で2065.5ドルを記録した。 今月4日に発表された10月の米雇用統計で非農業部門雇用者数の増加幅が事前予想 を下回ったことを皮切りに、10月消費者物価指数(CPI)の伸びの鈍化、一戸建販 売件数の落ち込みなど、雇用情勢の軟化の可能性や、インフレや度重なる利上げが消費 動向に影響を与えている可能性を示唆する経済指標の発表が続いた。 依然として10月CPIの前年同月比は+3.2%と米連邦準備理事会(FRB)が 目標とする+2.0%を上回った状態にある。また、FRBのパウエル議長は現在は利 下げの協議を開始する段階ではない、としてタカ派の姿勢を見せてきた。また、11月 公開市場委員会(FOMC)議事録でも、過度な利上げを警戒する声は聞かれながら も、利下げ着手に対しては慎重な姿勢が見られていたことが明らかとなった。 これまでCPIの上昇を下支えしてきた原油価格は9月下旬をピークにその後は軟化 に転じており、11月に入ってからのNY原油は75ドルを下値支持線としてもちあっ ている。また、10月の沈淪上昇率は事前予想を下回ったうえ、前月比では22年2月 以来の低水準にとどまっており、雇用情勢のひっ迫を受け、人手不足を解消するための 賃金引き上げの動きがインフレ率の上昇を促す、というこれまでの流れが緩和しつつあ る様子が示されている。 このような中、これまでタカ派とされていたウォラーFRB理事は、28日に今後数 カ月に渡ってインフレ率の低下が続くようであれば利下げ着手が可能、との発言を行っ た。これに続いて同じくタカ派とされるクリーブランド連銀のメスター総裁も5.25 〜5.50%という現在の政策金利の誘導目標が物価の安定と最大雇用という目標達成 に向け良い水準にある、との見解を示した。 タカ派と見られている両氏がこれ以上の追加利上げに否定的な見解を見せたうえ、一 部利下げに言及する発言も見られたことで、利下げを見込む声が一気に高まりを見せて いる。CMEのFedウォッチによると、来年3月のFOMCでの利下げを見込む比率 は48.6%に達しており、5.25〜5.50%という現在の水準を維持するとの比 率48%を上回っており、両氏の発言を受けて来年3月の利下げ着手観測が一気に強ま っている様子を窺わせている。 一方、SPDRの金ETF残高は11月21日に883.43トンを記録して以降、 縮小傾向を見せ29日時点では878.53トンまで縮小している。ただ、金離れの動 きの可能性よりも2050ドルを超える水準まで金価格が上昇したことを受けて手仕舞 い急ぎの売りが出た可能性の方が高いと見られる。878トンという水準は依然として 高水準であり、今後も880トン前後という水準を維持できるかどうかを注目したい。 特に11月に入ってから米雇用情勢の緩和や賃金上昇率の低下といったインフレ鈍化 の可能性を示す経済指標が発表されると同時にこれまでの追加利上げの影響で利払い支 出が大幅に増加するなか、米国の債務超過に対する警戒感が強まっているだけに、安全 な投資先としての金需要が根強く見られる可能性がある。 また、ドルが売られるなか金を買う動きが活発化していることは金に対する信認の強 さを示唆すると見られる。米利下げ着手の可能性が浮上したことで米債務超過に対する 意識が高まり、これらが安全な投資先としての金需要を刺激していることもあって、N Y金はさらに上値を窺う可能性がある。 警戒されるのは米長期債の金利低下だ。長期債の低下が安心感を強めれば既に高値圏 にある米株式市場が地合いを引き締める可能性がある。堅調な株式市場が個人消費をけ ん引する動きが生まれると再びインフレ率が上昇する可能性が残されている。 12月に開催を控えるFOMCでは金利の据え置きが見込まれているが、今後のイン フレ対策に関しパウエルFRB議長の発言内容に加え、米長期債の金利と株式市場の動 向にも注意を払いたい。 MINKABU PRESS
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