コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【米雇用の鈍化や投資用需要増を受けNY金再浮上の可能性】
 NY金2月限は11月13日以降、修正を入れながらも上値を探る足取りを維持し、
12月4日に過去最高値となる2152.3ドルに達した。その後は買い警戒感から値
を落として5日には2027.6ドルまで値を落としたものの、6日は反発に転じるな
ど買い気の根強さを窺わせる足取りとなっている。
 過去最高値に達するほどの上昇となったのはいくつかの原因があるが、最も影響を与
えたと見られるのが米国の利下げ着手観測だ。11月の米消費者物価指数(CPI)で
インフレ緩和傾向を確認した後も弱気な内容の経済指標の発表が目立つなか、11月下
旬には米金融当局者により利下げに踏み込んだ発言が聞かれた。
 これを受けて来年の利下げ着手を見込む動きは一気に広がっており、CMEのFed
ウォッチによると来年1月時点の公開市場委員会(FOMC)における利下げ着手を見
込む比率は早くも14.1%となっている。さらに3月のFOMCでの利下げ着手を見
込む比率は53.1%に達しており、現行の5.25〜5.50%のFFレート誘導目
標維持を予想する38%を上回っている。
 12月に入ってからも中古住宅販売の低迷や、11月の米ISM製造業景気指数が景
気の拡大と縮小の境目となる50を13か月連続で下回るなど、弱気な経済指標の発表
が目立っている。弱気な経済指標は米国のインフレ上昇率の更なる鈍化を予想される。
 これに加え、雇用情勢が緩和傾向を維持していることも利下げ着手観測を支える根拠
となっている。米労働省によると、10月の米求人件数は事前予想の942万人を大き
く下離れた873万人だったが、これを基にすると米労働人口と失業率から米国におけ
る現在の求職者数は650万人程度と推測されるため、一人当たりの求人件数は1.3
件程度と、米雇用情勢のタイト感が強かった今年上半期に記録した1.8件から大きく
低下している。
 人手不足感が緩和に向かうと賃金を引き上げられることで人手を確保しようとする動
きが弱まると予想されるため、賃金上昇によって物価高が吸収されこれがインフレ高止
まりを促す、物価の上昇を支えてきた流れに変化が生じることが見込まれる。

 弱気な経済指標の発表が続くと同時に、タイト感のあった米雇用情勢が緩和傾向を強
めるなかで米経済の見通し不安が高まり、安全資産を求める動きが広がっていることも
重要な金価格上昇要因だ。

 特に追加利上げが実施されている間にドルへと流れ込んだ資金が、安全資産を求めて
金市場へと流れ込む傾向が強まり、ドルが売られるなかで金価格が上昇する動きが見ら
れている。なお、SPDRの金ETF残高は12月5日時点で880.83トンとなっ
ている。10月下旬には860トンを割り込む場面も見られたが、11月を通して拡大
傾向を維持し、11月17日に880トン台を回復した後は、微増減を繰り返しながら
880トン前後を維持し続けており、投資用としての金需要の底堅さを窺わせている。
 米経済や財政悪化に対する警戒感はドルに対する信認も低下させ、これがドル離れの
動きを促していることもドル下落の背景だが、それと同時に中央銀行がドルの代替とし
て金を購入している動きも金価格を底堅いものとしている。
 これまで追加利上げによる金利の上昇がドル購入の動きを活発化させていたが、米経
済不安の高まりや金利引き下げの可能性を受けたドル離れの動きは今後も金価格を支え
る要因となりそうだ。投資用としての金需要の推移にますます注意が必要となる。
 8日には米雇用統計が発表される。雇用者数に加え、失業率、そして平均時給がどの
ように推移しているかが注目されるが、米雇用情勢の更なる緩和が示されインフレ鈍化
や利下げ着手の見通しを更に強めるようであれば、過去最高値を更新した後、修正に入
っているNY金価格が更に押し上げられる可能性がある点を留意しておきたい。
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