プラチナの現物相場は3月、中国経済の先行き懸念などを受けてニューヨーク市場で 大口投機家が売り越しに転じたことが狙われると、買い戻し主導で上昇したが、952 ドル台で利食い売りなどが出て上げ一服となった。ただ900ドル割れでは欧米の利下 げ見通しが下支えになった。スイス中銀が21日に予想外の利下げを決定すると、欧米 の利下げサイクルへの転換期待が高まって金が急騰し、プラチナは4月に入って1月以 来の高値987ドル台を付けた。ただ中長期では850〜1000ドルのレンジ相場が 続いており、当面は欧米の利下げ開始を待つことになるとみられる。 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、年内の利下げが適切との見方でおおむ ね一致しているが、「雇用とインフレの指標はいずれも予想を上回っている」と指摘 し、利下げを開始する前にさらなる議論が必要との認識を示した。2月の米個人消費支 出(PCE)デフレータは前年比2.5%上昇と前月の2.4%上昇から伸びが加速し たが、事前予想と一致した。3月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比30万 3000人増加し、事前予想の20万人増を大幅に上回った。時間当たり平均賃金は前 月比0.3%上昇と前月の0.2%上昇から伸びが加速した。失業率は3.8%と前月 の3.9%から低下した。米FRBの年内の利下げ見通しに変わりはないが、CMEの フェドウォッチで、6月利下げの確率は五分五分に低下し、年末までの利下げ幅は50 ベーシスポイント(bp)の確率が32.6%(前月10.3%)に上昇した。カシュ カリ米ミネアポリス地区連銀総裁は、年内2回の利下げを見込んだが、「インフレ率が 横ばいなら、利下げを行う必要があるのか疑問視される」と述べた。目先は今夜発表さ れる3月の米消費者物価指数(CPI)を確認したい。 【プラチナの供給不足見通しもレンジ相場】 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によ ると、2024年のプラチナは13トンの供給不足と、前年の27トン不足に続いて供 給不足が続く見通しとなった。トレバー・レイモンドCEOは、「供給不足の継続は、 世界経済が困難な状況にあるなかで、プラチナ需要の底堅さと供給の脆弱性を浮き彫り にしている」と述べた。また「プラチナ投資の課題は、価格が基調的なファンダメンタ ルズに対応していないこと」とし、レンジ相場に影響されたアルゴリズム取引などを指 摘した。ただ「水素関連のプラチナ需要は中期的に大幅な伸びが予想される」とした。 中国の全国人民代表大会(全人代)で、2024年の経済成長率目標は「5%前後」 と2023年と同水準とされた。ただ不動産不況に対する懸念などで今回の達成は難し いとみられている。香港高裁が1月に中国の不動産大手である恒大集団に清算命令を出 したのち、碧桂園は3月、世茂集団は4月に債権者が清算を申し立てた。一方、3月の 中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.8と節目となる50を半年ぶりに 上回り、昨年3月以来の高水準となった。前月の49.1から上昇し、事前予想の 49.9も上回った。ただPMI指数全体では各部門で雇用が縮小し、先行き懸念が残 っている。またイエレン米財務長官は中国を訪問し、政府の補助金を受けた安価な中国 製品の流入を米国は認めないとした。電気自動車(EV)、バッテリー、太陽光産業な どへの過剰投資を懸念した。 【プラチナETFは戻り場面で利食い売り】 プラチナETF(上場投信)残高は8日の米国で31.54トン(2月末31.72 トン)、4日の英国で12.71トン(同12.32トン)、5日の南アで11.40 トン(同11.73トン)となった。英国で投資資金が流入したが、米国と南アでは戻 り場面で利食い売りが出た。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告 によると、4月2日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは8589 枚(前週7195枚)に拡大し、2月6日以来の高水準となった。3月5日に4364 枚の売り越しとなったことが狙われたが、買い戻されて買い方に戻った。ただレンジ上 限となる1000ドル付近まで上昇すると、利食い売りが出やすいとみられる。 (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行) *10日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。
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