コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【急落のNY金市場は地合い軟化は本格化するか】
 NY金6月限は4月12日に2448.8ドルまで上昇し、一代高値を更新した。今
週に入ってから急落となり、23日に2294.2ドルと今月5日以来の水準まで値を
落とした。
 これまで上値を探る足取りが続いた後で22日から23日にかけて修正安が進んだ。
19日までの上げ幅が2日間で相殺される動きを見せ、調整ムードが強まることが警戒
ていることが警戒される。NY金は今後も急伸後の修正が続いたとしても本格的に地合
いが崩れる可能性は低いと見られる。過去最高値まで金価格を押し上げてきた要因に大
きな変化はない。
 米国の利下げ着手の時期に関しては9月以降になるとの見方が強く、ドル高止まりを
促す要因となることは国際市場ではドル建てで取引される金にとって弱材料になるもの
の、高金利環境の長期化が米経済や米国の財政に与える影響に対する警戒感も根強い。
 一方で連邦準備理事会(FRB)が利下げ着手を実施すればドル離れの動きが広が
り、これが金の割安感を強めるほか、金利の低下を受けて金利により差益が生まれる通
貨や債券などから金利により差益が生じない金へと需要がシフトする可能性が高まる。
 NY金市場では米国の金融政策が大きな影響力を持っているが、利下げ着手、高金利
環境の長期化のどちらの措置が実施されても金市場における買い意欲が刺激される状況
に変わりはない。
 米国商品先物取引委員会(CFTC)の発表で4月16日時点のファンド筋を含む大
口投機家の買い越し数は前週からは500枚程度減少しているが20万1923枚と2
0万枚台を保っているうえ、取組高も前週から1万1979枚増加した51万7193
枚に増加しており、高値更新局面においても金には旺盛な需要が見られていた様子が明
らかになっている。
 NY金が最高値を更新した4月12日には826.72トンまで縮小していたSPD
R金ETF残高は金価格が大きく下落した23日には833.63トンまで拡大してお
り、価格が下落する局面が買い拾われている様子を見せるなど、金に対する需要の底堅
さを窺わせている。
 注目されるのが5月3日に発表される米雇用統計だが、雇用統計で米国の雇用情勢の
軟化、もしくは底堅さのどちらが示されても前述のように金市場では買い支援材料視さ
れる可能性が高い。
 特に高値更新局面においても国内の景気不安やドル高止まりのなかでの外貨準備高の
資産価値防衛のための逃避先として中国が金に根強い需要を見せていることは金の底意
を強いものとしている。なお、上海黄金交易所の取引量は4月15日に約2万9376
キロを記録した後は減少に転じ、9600トン台まで縮小していたが、4月23日時点
では1万1876トン台まで膨らんでおり、回復傾向を見せている。
 イランとイスラエルの衝突については現時点では小康状態にあり、地政学不安に対す
る警戒感は後退した感が強いが、米金融政策がどの方向に向かおうとも強気材料視され
る可能性や底堅い中国の需要が下支え要因となりそうで、買い進まれた後の修正による
下落幅は限られたものにとどまることになりそうだ。
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