【NY金市場は米雇用情勢に注目】 NY金8月限は今月13日に大幅安を記録した。その後は2300〜2350ドルの レンジ相場を形成しているが、依然としてNY金市場の注目要因は米国の金融政策だ。 11〜12日に開催された米公開市場委員会(FOMC)では金利が据え置かれる一 方で年内の利下げ回数の見通しがそれまでの3回から1回に引き下げられたことはタカ 派な印象を与え、NY金の上値を抑制する要因となる一方、高金利環境の継続が米経済 や財政状況に与える影響に対する懸念も強まっている。 FOMC開催中に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比は総合 で事前予想の+3.4%を下回る+3.3%となり、食料とエネルギーを除くコアCP Iも前月の+3.6%、事前予想の+3.5%を下回る+3.4%にとどまった。 CPIの低下は米インフレ率の低下を意識させるものとなっており、FOMCで示さ れた年内の利下げ回数の見通しが1回となっているにもかかわらず、CME Fedw atchでは今年12月時点のフェデラルファンドレートの見通しが4.75〜5.0 0%と予想する向きが44.4%で最大になるなど、年2回の利下げを見込む向きが大 勢を占めている。 実際、CPIの内訳では家賃を含めたシェルター部門が依然として5.4%と高水準 を維持していたほか、運輸サービス、医療ケアサービスなど賃金がその構成の大半を占 めるサービス部門で、それぞれの前年同月比は+10.5%、+3.1%と高い水準を 引き続き記録しており、賃金の上昇がCPI全体を押し上げている様子が示された。 これはサービス部門の成長率が鈍化に転じればCPI全体にも押し下げ圧力が強まる 可能性があることを同時に示している。 サービス部門の成長が鈍化に転じるためには米雇用情勢の軟化とこれに伴う賃金上昇 率の低下が必要となる。米5月雇用統計では平均時給の前月比は事前予想の+0.3% を上回る+0.4%、前年同月比では前月の+3.9%を上回る+4.1%を記録して おり、賃金の上昇が物価の上昇の一因になっている様子を窺わせた。 しかし、米国の求人件数自体は縮小傾向にあるため5月非農業部門雇用者数で見られ たような雇用者数の大幅な増加が継続性を保つ可能性は後退すると同時に、賃金の上昇 率にもブレーキがかかる可能性は高まっている。 賃金の上昇率が鈍化すればサービス部門の成長率も低下することが期待されるが、こ の期待を先取りする形で2回の利下げ実施観測が強まっていると見られる。 5月米小売売上高は前月比0.1%増にとどまり市場予想の0.3%増を下回った。 これも消費者の消費意欲の後退を示す指標でFRBにとっては利下げ着手を促す要因に なるとの見方が強まっている。 FRBとしては利下げ着手を決定するためにはインフレ率の上昇を下支えする要因と なる賃金の上昇率の鈍化、そして賃金上昇を促す要因となる雇用情勢の緩和を確認する 必要がある。安定的かつ継続的な雇用情勢の軟化が確認出来るまではタカ派姿勢を取ら ざるを得ないのが実情と見られるだけに、米金融政策の見通しを判断するためには米国 の雇用動向が金市場にとっての注目要因になってくるだろう。 それだけに金市場は身動きのとりにくい状況が続くと予想され、NY金8月限は現在 の2300〜2360ドルをコアレンジとしての高下が当面は続く可能性がある。 MINKABU PRESS
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