貴金属4品週間見通し=金はウクライナ情勢が支援材料も上げ余地は限定的

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
<金>
 NY金12月限は15日に2570.1ドルで引け。前週比で124.7ドルの下げ
幅を記録した。しかし18日以降は反発に転じ、21日は2670ドル台まで浮上し、
11日から15日にかけて記録した下げをほぼ相殺している。
 この動きによりトランプ氏が大統領選に勝利したことで予想される今後のインフレ観
測やこれを受けた追加利下げ期待の後退、米雇用情勢の引き締まり、といった弱気要因
を織り込んだ形となった。
 同時に緊迫化が進むウクライナ情勢に対する意識の高まりから、逃避買い需要が膨ら
んでいる。
 SPDR金ETF残高は14日に867トン台まで減少したが、21日時点で877
トン台まで拡大し、安全資産としての金需要が膨らんでいる様子を窺わせている。
 織り込みつつある印象だが、トランプ氏が米大統領に就任した後、中国からの輸入に
60%、その他の国からの輸入にも最大で20%、輸入関税を引き上げる、という公約
が実施された場合には、輸入物価の上昇は避けられない。
 また、関税引き上げが輸入量の減少につながった場合、国内での供給体制が強化され
る可能性があり、そうなれば軟化傾向にある米雇用情勢が再び引き締まる可能性もあ
る。
 インフレ加速化、そして米雇用情勢の引き締まりが予想されることで、米連邦準備理
事会(FRB)による追加利下げ期待は後退しており、12月の米公開市場委員会(F
OMC)での追加利下げを見込む比率は55.9%と1か月前時点の69.5%から大
きく低下している。
 急落前の水準まで値を戻したこともあってチャート面での上値も重く、2700ドル
水準からの上値が重くなることが想定される。
<銀>
 NY銀3月限は金の上昇に追随高となり21日の夜間取引では3140セント台を回
復している。
 ただ、安全な投資先としての役割の薄さから金に比して上値は重い。また、トランプ
氏が大統領に就任した後に中国からの輸入品に対する関税が大幅に引き上げられるよう
であれば、中国からの工業用としての銀需要の縮小やインフレ加速化の可能性やこれを
受けた追加利下げ期待の後退などが重石になってきそう。
 19日に3200セントに値を乗せた後に値位置を落とすなどチャート面でも上げ一
巡と見られる形になっているため、同値圏での往来継続か。
<白金>
 NY白金1月限は18日の取引で大きく上昇し、945.10ドルで終えた前週末と
なる15日から974.50ドルまで値を伸ばして終えた。その後も堅調な足取りを継
続しながらも980ドルに達したところで値位置を落としており頭の重さを窺わせてい
る。
 ウクライナ情勢が緊迫化していることは白金市場において買い支援要因になり得る
が、トランプ氏が米大統領選に勝利した影響が依然として重石となっている。
 特に、すでに欧米諸国が中国離れの動きを見せているなかでトランプ氏が大統領に就
任した後に公約通りに輸入関税が引き上げられた場合には中国の白金需要の縮小が促さ
れかねないことが警戒されるため、980ドルを上値抵抗線にしての頭重い動きが見込
まれる。
<パラジウム>
 NYパラジウム12月限は白金と同様に18日に大きく値位置を切り上げた後は伸び
悩みに転じているものの値位置を落とすことはなく1050ドル前後で高下。
 金の底固い足取りが見込まれることもあり、現在の値位置を保ったうえでの足取りが
想定される。
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