【12月の米追加利下げ期待が下支え要因ながら依然上値は重い】 NY金2月限は11月25日から26日にかけて大きく値を落とした後に反発に転じ たが、その後2640ドル台〜2690ドル台での膠着状態が続いている。ウクライナ とロシアの対立激化に対する警戒感が強まるなか浮上し2740ドル台に達しながらも レバノンとイスラエルの停戦合意をきっかけに転売の動きが広がったことで2630ド ルを割り込む水準まで値を落とした。大幅な下落を受けて弱材料を織り込んだうえ、 12月の米追加利下げ観測が浮上したことがNY金の下値を支えている。 CMEのFedwatchによると、3日時点で12月17〜18日にかけて開催さ れる米公開市場委員会(FOMC)での利下げを見込んでいる比率は74%に達してい る。1週間前の比率は66.5%だったため、日を追って利下げ見通しが強まっている 様子が示されている。 追加利下げ観測を強めた根拠の一つとして11月26日に公開された11月のFOM C議事録が挙げられる。今回の議事録では時間をかけながら政策金利を中立的な水準ま で引き下げる、との指摘があったが、これが今後も追加利下げを継続するとの見方を強 め、金市場における買い支援要因となった。 ただ、12月FOMCで大方の予想通りに追加利下げが実施されたとしても、来年以 降の追加利下げの見通しについては不透明感が強い。というのも、依然として米経済指 標には強気な内容が目立つと同時に、米雇用統計は米雇用情勢の底堅さを示唆する内容 が多く見られるからだ。 12月に入ってからも強気な内容の経済指標の発表が続いている。2日に全米供給管 理協会(ISM)が発表した11月ISM製造業景況指数は活動の拡大と縮小の境目と なる50を下回りながらも、前月及び事前予想を上回り48.4に達した。製造業が依 然として伸び悩んでいる可能性が示されているもののこれは6月以来の高水準であるう え、新規受注は50.4を記録し活動が拡大に転じている様子を明らかにした。 それだけではなく、雇用も前月の44.4を大幅に上回る48.1を記録するなど、 労働市場の底堅さを示す内容となっている。 また3日に発表された10月の雇用動態調査(JOLTS)での求人件数は事前予想 の747万5000件を大きく上回る774万4000件となっており、改めて米雇用 情勢の底堅さが示されている。これを受けて6日発表の米雇用情勢の注目度がより一層 高まるが、10月非農業部門雇用者数はハリケーンや大規模なストの影響で1.2万人 の増加にとどまっているだけに、非農業部門雇用者数の伸びが前月を上回ったとしても サプライズとはなり得ない。 その一方で注目されるのは平均時給だ。平均時給は人手を求める動きが活発化すると 上昇すると考えられるが、前月雇用統計においても平均時給の前月比は事前予想の0. 3%を上回る0.4%を記録した。そのため、今回の発表で平均時給の大幅な伸びが確 認されるようであればNY金にとっては上値を抑制する要因になってくるだろう。 なお、12月の経済指標を順調に消化しても1月にはトランプ新政権の発足が控えて いる。トランプ新政権成立後の景気拡大期待に加え、大幅な輸入関税の引き上げの可能 性や雇用情勢の引き締まり観測はインフレ率の上昇を促す要因になり得る。それだけに NY金の足取りは底堅さを残しながらも同時に伸び悩むことが予想され、引き続き27 00ドルを手前にしての水準でもちあうと予想される。 MINKABU PRESS
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