【金は米インフレ再燃懸念の緩和とインフレヘッジ需要から堅調地合いを維持か】 NY金2月限は1月10日に2735ドルまで値位置を切り上げる動きを見せたが、 その後は次第に値位置を切り下げ、13日は再び2700ドルを割り込んだ。14日に 反発に転じ30ドルを超える上げ幅を記録し、2700ドル台に乗せて引けた。 10日に米労働省から発表された12月の米雇用統計で大幅な雇用者数の増加を示 し、利下げ期待が後退し、急落。13日から値位置を切り上げており、強気のセンチメ ントは維持している。 強気材料の一つがトランプ新政権発足後のインフレヘッジとしての金需要増加観測が 挙げられる。1月20日に発足するトランプ新政権下は、輸入関税の引き上げが見込ま れると同時に、これに伴うインフレの加速化も予想されている。このインフレの加速化 に伴いインフレヘッジとしての役割を持つ金に対する需要が高まったのも2700ドル 超えを示現する一因となった。 前述のように13日に2700ドルを割り込んでいるため、トランプ新政権の発足に 伴うインフレ加速化観測は既に織り込まれたと見られる一方で注目されたのが12月の 米消費者物価指数(CPI)だ。 15日に米労働省が発表した12月の米CPIの前年同月比は事前予想と一致する+ 2.9%だったが、11月に記録した+2.7%を上回るものであり、昨年は年末にか けてインフレが加速化している様子が示された。特に前月比が+0.4%で事前予想の +0.3%を上回ったことは、月単位でインフレ率の上昇が続いていることを意味して いる。 その一方で注意したいのが家賃を示すシェルター部門の前年同月比が+4.6%と依 然として高水準にある点だ。シェルター部門の特徴は、家賃の変更は契約更新時などに 行われるため、他の部門に比べてその高下が遅延する傾向が強いところにある。そのた め、12月時点では4%台後半と高い水準の伸びを記録したと発表されているが、これ は実際には他の部門の上昇に時間をかけて追随している可能性がある。 実際、変動が大きいエネルギーと食料を除いたコアCPIの前年同月比は事前予想の +3.3%を下回る+3.2%となっている。依然として3%台を維持しているもの の、インフレ率に若干の緩和の動きがみられるため、高止まりしているサービス部門以 外では物価高も収束傾向を強めているとも考えられる。 物価高収束の可能性は米連邦準備理事会(FRB)による追加利下げの可能性を高め る要因となるだけに、NY金市場では強気材料視される傾向がある。CPI発表後のN Y金はわずかな時間で10ドル程度の上げ幅を記録する急伸したが、これもその反応と 見られる。 トランプ新政権発足後の輸入関税引き上げの動きは、今後、インフレが加速化する可 能性を高めるものであり、12月CPIを受けて高まった物価収束に対する期待感も大 きく後退する可能性がある。 NY金市場の現在の足取りの強さはインフレ率の上昇が見込まれたとしても、インフ レヘッジとしての役割に対する期待や、米金利据え置きによるドル高の動きが資産防衛 としての金需要を意識するとの認識が背景となっているだけに、米経済不安を高めるほ どのインフレ率の動きが見られなければ、NY金市場の底堅い足取りが崩れることは無 いと予想される。 12月CPIの発表を終えてNY金2月限は値位置を切り上げているが、目先の材料 消化感に加え迫りくるトランプ新政権発足を控えるなかで逃避買い需要がより強く意識 されることになりそうで、2700ドルが下値支持線として意識される高値圏でもみあ い継続となりそうだ。 MINKABU PRESS
みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。