【NY金は依然として投資用需要が根強く高値圏でもみあいが続く】 NY金4月限は3月20日に3065.2ドルと一代高値を付けた後は値を落として いるが、3000ドルが近づくと買い戻されるなど、3000ドルを支持線に下値堅く 推移している。金価格の底堅い足取りを支えているのが米トランプ政権による関税政策 と地政学不安だ。 米トランプ政権は、関税政策については中国からの輸入品に対する追加関税が発動さ れたのを始め、鉄鋼・アルミ製品の輸入に対しては25%の追加関税を発表、3月には カナダ・メキシコに対する追加関税を発表しながらも、その後は米・メキシコ・カナダ ky法廷(USMCA)に準拠した輸入品に対しては4月2日までの関税発動延期が発 表された。 また、4月2日には輸入自動車への塚関税が発動される見通しとなる一方、自動車の 輸入関税引き上げと同時に発表されると見られていた相互関税に関しては免除の調整を 進めているとして、別日の発表になる可能性が浮上している。 このように次々と関税の引き上げが発表されているうえ、発表されても数日のうちに 撤回や免除の発表が行われていることで、トランプ政権の関税政策の不透明感が強い。 また、中国は米国産農産物に対する輸入関税を引き上げるなど、米関税引き上げ政策 に対する報復措置も実施されている。 トランプ政権による輸入関税の引き上げは米国内産業振興を目標としたもので、ホン ダがシビックの生産拠点をメキシコからインディアナ州に移転するなど一部では生産拠 点を移転する動きも見られているが、トランプ大統領の目標を達成するまでには米国内 外の経済に多くの影響を与えることになる。 米国の2月消費者物価指数の前年同月比は総合で+2.8%と予想を下回る一方、エ ネルギーや食料を除いたコアCPIの前年同月比は+3.1%で事前予想を下回りなが らも3%台を維持し、下げ渋る動きを見せている。 その一方で米国の2月小売売上高の前月比は事前予想を下回る+0.2%にとどまっ ており、これまでの物価高が消費行動の重石となりつつある様子を示唆している。 2月CPIには米トランプ政権の関税政策による影響はほぼ取り込まれていないと見 られるが、その一方で米トランプ政権による関税引き上げの動きが活発化し始めている ことで、今後の米物価は上昇せざるを得ず、これが停滞気味の個人消費に追い打ちをか けることが予想される。 関税政策が米国内の経済にもネガティブな影響を与えることが予想されるなか、投資 用としての金需要は増加傾向にあり、SPDRの金ETF残高は今月21日には23年 6月下旬以来の水準となる930.51トンまで増加している。 金に対する安全資産を求める動きを活発化させているのが、トランプ関税による米国 内外への影響というリスクが米国から発せられているため、米ドルや米国債が安全資産 として機能せず、金に逃避買い需要が集まっている点にある。 それだけにトランプ政権の関税政策が経済面に加え米国と諸外国との関係悪化のリス クを意識させる以上、金には安全資産を求める動きが集まると予想されるが、この動き は公的機関においても同様であり、中央銀行は金に対し根強い需要を見せる可能性が高 い。これらの安全資産を求める動きに金価格が下支えられる動きが続くと予想される。 これに加え、パレスチナ自治区ガザを巡る紛争激化などの地政学不安の高まりが、安 全資産を求める動きを活発化させる可能性もある。 米関税リスクに対する警戒感も、米トランプ政権による関税政策が一巡の見通しが付 けば織り込み感が強まり、金市場に与える影響も後退する可能性があるが、それまでは トランプ政権による関税政策見通し不透明感や米関税政策が米国内外に与える経済的な 影響、地政学不安などが安全資産を求める動きを刺激し、金は再び一代の高値を更新す る可能性を秘めながらの高値圏でのもみあいが続く展開を予想する。 MINKABU PRESS
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