【米スタグフレーション懸念されるが不確実性の後退でNY金は利益確定の可能性】 NY金6月は一代高値更新が続いている。3月27日に3102.2ドルをつけ一代 高値を更新後も連日上値を探る動きとなった。今月1日に値を落として3100ドルを 割り込む動きも見られたが、翌日2日に大きく値を伸ばして3201.6ドルを記録し 再び一代高値を更新。この日の終値は3166.2ドルで高値からは値を落としたもの の20ドルを超える上げ幅を記録している。 一代高値を更新する動きが続いているのは、引き続き米トランプ政権による関税政策 に対する警戒感が背景となっている。これまで米トランプ政権は、中国からの輸入品に 対する関税引き上げを始め、3月9日には米国に輸入される全ての鉄鋼とアルミに対す る25%の輸入関税などを発動してきた。 米国の関税引き上げに対抗し、中国は米国から輸入している石炭などに対し最大で 15%の関税をまた米国からの農産物輸入に対してもコーンは15%、大豆は10%な どの報復関税を発動している。 さらにトランプ政権は2日に全ての輸入品に一律10%の関税に加え、各国の米国か らの輸入品に対する関税や非関税障壁に対する考慮の上に国および地域別の税率を上乗 せした相互関税を発表した。 輸入関税の引き上げは米国内では物価の上昇を招くこととなり、米国内総生産(GD P)の約70%を占める個人消費にマイナスの効果をもたらすことが想定される。トラ ンプ政権は今後も自動車の輸入関税の発表を行うと見られるが、これも米国内の自動車 価格の上昇をもたらす結果となり、米国内の消費活動の停滞を招く恐れが高い。 その結果として米国の景気が停滞するにもかかわらず物価が上昇するスタグフレーシ ョンが発生するリスクが高く、これを受けて米国の金融市場から資金が流出すると同時 に安全資産を求める動きが活発化し、結果として金価格が押し上げられる動きが続いて いる。 これまでロシアによるウクライナ軍事侵攻や、中東情勢不安、パレスチナ自治区ガザ での戦闘の激化などの地政学リスク発生時には安全資産を求める動きは米ドルや米債券 に向かっていたが、今回のリスクは米国発でそのリスクに対する懸念も日増しに高まっ ているだけに、米国から資金を引き上げる動きが活発化すると同時に、その資金の一部 が万国共通の価値を持つ金市場に流入している。 これまで米トランプ関税の詳細が不明ななか、厳しい状況を想定して金への逃避買い 需要が膨らんできた可能性がある。相互関税という米国と貿易関係にある全ての国々に 対する関税の発表を終えたうえ、自動車関税については25%の発表が控えていると伝 えられており、トランプ関税による目先の大型関税についての不透明感はある程度消化 され、今後は大きなサプライズとなる関税政策が発表される可能性は大きく低下したと 見られる。 トランプ政権による相互関税の発動や自動車関税の引き上げ発表を受け、米国内のス タグフレーション発生リスクが高まる。同時に、この関税政策が米国への輸出国経済に 与える影響が警戒され、金市場にとっての買い支援要因にはなるものの、不確実性を根 拠とした安全資産を求める動きは一段落すると見られる。 依然としてNY金には安全資産を求める動きが集まりやすい状況が続くとはいえ、今 年3月12日の取引以降から200ドル程度の上昇の後だけに、材料織り込みから利益 確定の動きが活発化する可能性が高まっているのではないだろうか。 MINKABU PRESS
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