コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【米国の不確実性が安全資産としての金需要を引き続き刺激】
 NY金6月は4月9日に急反発に転じて以降、11日まで上値を探る足取りを展開し
3263ドルに達した。その後は値位置を落としながらも3200ドルを下値支持線と
する高もみが続いたうえ、16日は3358.4ドルまで上昇して一代の高値を更新し
たうえ、終値ベースでも100ドルを超える上げ幅を記録し、金を安全資産として買う
動きが続いている。
 9日にかけて一代の高値を更新する動きが見られたのは、米トランプ政権による米国
へ輸出しているすべての国に対する10%の相互関税と同時に発表された国・地域別の
上乗せ分の関税について90日間の停止が発表されたことで、貿易戦争の激化が世界経
済に与える影響に対する警戒感が後退したことが主因となった。
 特に一律の相互関税および国・地域別の相互関税が発表された9日は、これまでであ
れば安全資産を求める資金の拠り所となっていた米長期債が売り込まれたことで米長期
債の利回りが大きく上昇した。世界的な貿易戦争の震源地が米国となっていることが原
因となって米国発の資産離れの動きが活発化している様子を示唆すると見られると同時
に、金を安全資産としても止める動きを刺激する要因となった。
 なお、米国政府は相互関税の上乗せ分の大部分の90日停止を発表した後も、米ドル
離れの動きが見られるなか、スマホ及びパソコンなどの電子機器に関し一律の10%相
互関税を含めた相互関税の適用除外を発表しており、自ら発表した相互関税の修正を行
っている。
 また、米国で生産出来ない部品や物などはスマホ・パソコン関連部品以外にも多く存
在するためこれらの品目に対する適用除外の発表が行われる可能性がある一方で、スマ
ホやパソコンなどの電子機器への適用除外も一時的な措置である可能性を米トランプ政
権は示している。
 相互関税をめぐり二転三転するトランプ政権による関税政策に不確実性が残ることは
米国への信頼性を後退させ、企業にとっては設備投資計画を踏みとどまらせるものであ
るうえ、米国の資産に対する信頼性を後退させるものにもなる。また、相互関税以外に
もすでに一部の品目や国からの輸入関税が引き上げられたことにより、米国でスタグフ
レーションの発生リスクが高まっていると見られることは、安全資産を求める動きを刺
激する要因となる。

 同時に米国による対中追加関税は145%に引き上げられているうえ、中国側もその
報復として米国からの輸入品に対する関税を125%まで引き上げるなど、米中貿易戦
争が激化していることへの懸念が安全資産を求める動きを支える可能性がある。

 一方の中国も米国への対抗措置として対米国輸入関税は125%までの引き上げたう
え、これで関税の引き上げは最後としながらも、米国の対中関税引き上げ措置に対して
は最後まで付き合う、としている。同時に米国との協議についても、米国の指導者によ
る敬意の表明が無ければ応じない、と強気の姿勢を見せており、現時点では米中貿易戦
争が短期で落ち込むかどうか、見通しが立て難い。
 米国と中国の協議が実現すれば米中貿易戦争に対する警戒感が後退し、金市場にとっ
ては弱材料になる可能性が高まるものの、現時点では米中貿易戦争の激化とこれが世界
経済に与える影響に対する懸念が強い。
 なお、米国では3月の消費者物価指数(CPI)の前年比は+2.4%で前月の+
2.8%から伸びが鈍化していることが明らかとなったが、米国の輸入関税引き上げが
活発化したのは4月以降だけに、今後はCPIにその影響が現れてくる可能生が高い。
 米中間での協議開始の可能性など、米中貿易戦争懸念の後退を促す要因が浮上すれば
NY金市場も軟化を強いられそうだが、日米間での協議が行われるなか、円安是正の可
能性が浮上しているうえ、米関税政策および米中貿易戦争の先行き不透明感が強いなか
では安全資産を求める動きが根強く見られそうで、NY金6月限は3300ドル台を維
持する足取りが続きそうだ。
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