【米GDPマイナス成長で意識される安全資産としての金】 NY金期6月限は4月22日に3509.8ドルの一代高値を付けた後に反落。23 日以降は3300ドルを下値支持線とするボックス圏内での高下が続いたが、30日に は支持線を割り込んで3275.6ドルまで値を落とす動きを見せている。 この下落の背景となったのが、米関税政策による米国と他諸国との貿易摩擦悪化に対 する警戒感の後退だろう。米トランプ政権は、4月2日に一律10%の相互関税に加 え、国・地域ごとの上乗せ分を発表した。一律10%の関税に更に上乗せ分が発生する ことが世界貿易停滞懸念に加え、米国内の景気見通し不透明感を強めるなかで安全資産 を求める動きが活発化した。 その後、9日に上乗せ分の90日停止を発表しこの間を交渉期間とするなかで米国と 他諸国との間で関税の調整についての話し合いが進められていることが、世界的な貿易 活動の停滞に対する警戒感を後退させた。特に29日には自動車関税の負担措置が発表 されたことにより、米トランプ政権の関税政策を巡る強硬姿勢が緩和するとの期待感が 高まり、金市場で利食い売りを促す一因となっている。 このような中、発表された米今年第1四半期(1月〜3月)の国内総生産(GDP) は3年ぶりのマイナス成長となり、前期比で−0.3%の成長率を記録。米トランプ政 権が関税政策を次々と発表するなか、関税の引き上げを警戒して駆け込みで輸入する動 きが高まったことが背景と見られる。 米国の1月〜3月間の経済成長はわずかながらもプラス成長を見込む向きが大半を占 めていたものの、結果的にマイナスになったが、実際にはこの時期に関税引き上げの対 象となったのは鉄鋼とアルミが中心であり、相互関税や自動車の輸入関税などの措置は 4月に入ってから発表されている。 そのため、関税引き上げを警戒した駆け込み需要の動きは4月以降にさらに広がりを 見せ輸入の急増により純輸出が低下する結果、再びGDPがマイナス成長にとどまる可 能性があるうえ、米国の貿易赤字の拡大を促す可能性がある。さらに、3月PCEコア 価格指数は予想を大きく上回り根強いインフレの兆候を示しているが、関税引き上げが 本格化した4月以降は物価がさらに上昇する可能性を意識させると同時に、今後の米経 済成長の重石になってくる可能性を示している。 米トランプ政権は25%に設定した自動車関税の一部を適用除外すると発表するなど 関税政策に対する強硬姿勢を和らげているが、お互いに100%を超える輸入関税を設 定している中国からの輸入に関しては、適用が除外された項目があるとはいえ、米中間 で正式に輸入関税の調整に向けた協議が行われているわけではない。 ロイター通信は中国側でも米国からの輸入関税の一部適用除外を伝えているが、両政 府間での正式な協議が行われるまでは米中貿易戦争やこの貿易戦争による両国経済への 影響に対する警戒感がくすぶることが予想される。 米関税政策とこれを受けた経済への影響に対する警戒感はすでに出尽くし感があるう え、米政府による関税政策に関する強硬姿勢に緩和の動きが見られることは金市場にと っては弱材料だ。その反面、米GDPのマイナス成長に加え米国内のインフレ兆候が今 後も米景気の重石になってくると想定されるだけに金に対する安全資産を求める動きは 根強いとみる。1日のアジア時間の時間外取引で大幅続落となり、6月限は一時 3240ドル台まで暴落。ドル建て現物相場も3240ドル台まで値を崩し、反発力弱 く推移。メーデーで市場参加者が少ないなか、手じまい売りで急落している印象だ。週 後半に押し目買いが喚起されるに注目したい。 MINKABU PRESS
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