【金は米経済の不透明感強く高値圏を維持】 NY金8月限は6月5日以降、3400ドル前後で推移していたが、軟化に転じたも のの、3300ドル台前半では買い戻される下値の堅さを窺わせる動きが続いている。 依然として金価格の高下に大きな影響を与えているのは米トランプ政権による政策だ が、関税政策は米景気に与える影響の大きさから引き続き注目されている。最も注目要 因となっているのは米中の通商協義だ。 米国と中国はお互いに双方の国からの輸入品に対し145%の高関税を賦課しながら も5月14日からは90日間の暫定措置としたうえで115%の引き下げを実施してい る。注目されるのは、この暫定期間内に通商会議が開催され、合意に至るかどうかとい う点だ。 6月4日にはトランプ大統領が自身が運営するソーシャルメディア(SNS)に習近 平国家主席は非常にタフで話し合いをまとめるのが非常に困難と投稿したことを受け、 米中通商協議が暗礁に乗り上げることが懸念されたものの、9日にロンドンで協議が開 始されて以降、10日、11日と話し合いが続けられた結果、貿易摩擦緩和に向けた枠 組みの合意に至っている。 今後の米中両国の相互の輸入関税など具体的なことは不明な点も多いものの、米中通 商協議が実際に合意に至ればNY金にとって上値圧迫要因になってくることが予想され るが、同時にNY金が大きく下押されるほどの影響を与える影響は薄いと見られる。 合意された枠組みによると、米中双方の関税比率は5月14日からの引き下げ後の税 率が適用される見通しだが、トランプ政権以前より輸入価格が引き上げられることを意 味しており、米国にとって中国からの輸入価格の上昇は免れ得ないものとなっている。 また、国を対象として課した相互関税以外に先日3月12日以降の25%から50% に引き上げられた鉄鋼・アルミの輸入関税や自動車、関連部品の輸入関税など、様々な 分野で輸入関税が引き上げられている。 5月の米消費者物価指数(CPI)は総合が前年同月比は4月の+2.3%を上回る +2.4%となった。変動が激しい食料とエネルギーを除いたコアCPIの前年同月比 は+2.8%で事前予想の+2.9%を下回った。ただ、これまでのところ物価の上昇 圧力が抑制されているのは、関税引き上げを前にした駆け込み需要や手数料を引き下げ ることで物価を吸収するという企業側の努力によるところが大きい。 今後もサービス価格が抑えられることで物価が伸び悩む可能性はあるが、サービス価 格の緩和は賃金の伸び悩みを促す結果、雇用情勢の軟化に繋がる可能性がある。 また、駆け込み需要で蓄えられた在庫が消化されると輸入価格の上昇は小売価格に転 嫁されていくと予想され、今後の物価は次第に上昇に向かうと見られる。実際、今回の CPIでも鉄鋼・アルミを原材料として使用する大型家電は2020年8月以来の伸び となる+4.3%を記録している。 本格的な関税引き上げ前の駆け込み輸入によって蓄えられた在庫を消化する時期を考 慮すると、トランプ関税による影響が顕在化してくるのは7月〜9月とも見られ、米国 の今後の物価は上昇に向かう可能性が高いと予想される。 一方ではトランプ政権の関税政策がたびたび変更・調整されていることや、今後もこ れまで言及されていなかった分野の関税が引き上げられる可能性があることから、企業 の長期的な計画立案が困難となっていることも、米経済に影響を与え始めている。 11日の取引で米5月CPI低下は利下げ観測を強めているが、米関税政策の本格化 と駆け込み輸入で蓄えた在庫を消化による物価高の可能性、物価の上昇を手数料で相殺 する構造が継続されるようであれば米雇用情勢軟化の可能性があるなど、米トランプ政 権による関税政策は米経済成長の重石となってくる可能性がある。 また、米トランプ政権による関税政策の不確実性が企業の安定的な計画の策定の妨げ になっていることも米経済が抱える不安要因となっている。 5月の米CPIが予想ほど伸びなかったことや、米中通商協議の枠組み合意など、米 経済に関する明るい材料があるが、依然として米経済の見通しには不透明感が強く、物 価高が予想されると同時にこれが米経済に与えるマイナスの影響に対する警戒感も強 い。政治的な要因により大きく高下する可能性は依然としてあるが、NY金は高止まり が続く可能性が高い。 MINKABU PRESS
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