石油週間展望=急騰、中東の地政学的リスクを巡り乱高下の可能性も

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
           [6月16日からの1週間の展望]
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         週間高低(カッコ内は日付)     6 月 9 日〜 6 月 13 日
                始  値    高  値        安  値       帳入値    前週末比
ガソリン  先限   78,000    78,000( 9)    73,000( 9)   73,000        ±0
灯  油  先限   79,000    79,000( 9)    76,000( 9)   76,000       ±0
原  油 11月限  55,850    63,200(13)    55,820( 9)   61,920     +5,770
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                                        6 月 9 日〜 6 月 13 日
<海外原油> 週間4本値 始 値  高  値     安 値     終 値   前週末比
  NY原油  7 月限    64.80    77.62(13)   64.20( 9)  72.98     +8.40
ブレント原油  8 月限    66.59    78.50(13)   66.07( 9)  74.23      +7.76
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13日 東京時間の午後3時15分現在 ドル・円 143.58 前週末比 0.49円の円高
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【前週のレビュー】ニューヨーク原油7月限は引き続き60〜65ドルのエリアでのも
み合いとなっているが、このところはその上限を試す展開になりつつある。まだ5月
21日の高値である64.19ドルを上抜けるには至っていないが、目先はこれを上抜
けるのか否かが注目されるとした。

【NY原油は急騰、一時77ドル台】
 ニューヨーク原油7月限は5月中旬以降のもみ合いレンジの上限だった64.19ド
ルを上抜けると上げ足を加速する展開となり、とくに直近は後述するイスラエル軍によ
るイランの核施設攻撃により急騰しており、本稿執筆時点の13日の午後現在、ここま
での高値は77.62ドル。その後は74ドル半ばまで急落しており、激しい値動きと
なっている。イランが報復を示唆する発言も聞かれ、目先はこの両国間の軍事衝突懸念
を中心に乱高下する可能性が高まっている。さらに突発高もあり得るし、逆に打ち上げ
花火に終わる可能性もあり得る。
 チャートを見ると、7月限は昨年7月に付けた一代高値76.83ドルをすでに超え
ており、青天井化しているが、7月限は20日に納会を迎えるため、上昇場面では利食
い売りも出やすくなるだろう。

 材料的には、前述のイスラエルとイランの軍事衝突の行方が目先は最大の焦点となろ
う。基本的にはイラン産原油の供給にどの程度障害が出ることが注目されるが、地政学
的リスクは投機的に買われやすくなるため、テクニカル要因も加わって、オーバーシュ
ート(行き過ぎ)は避けらないため、場合によっては80ドル台乗せの可能性も十分に
あるだろう。とくに世界の原油供給の約30%が通過するホルムズ海峡が封鎖された場
合は100ドル台乗せもあり得る。なお日本の輸入の約8〜9割を占める中東産原油は
100%このホルムズ海峡を通過する。

 イランと米国が核開発協議を続けるなか、業を煮やしたイスラエルが先制攻撃を行っ
た形となっているが、イスラエルののネタニヤフ首相はさらに攻撃を継続する旨の発言
を行っており、国民に対してもイランの報復攻撃に備えて長期間シェルターで過ごす必
要があるかもしれないと警告している。今のところ米国は関与を否定しているが、イラ
ンとイスラエルの軍事衝突が激化することは必至の状況となってきた。

 外部要因を見ると、ニューヨークダウ平均株価は4万2000ドル台後半で高止まり
の様相だったが、イスラエルのイラン攻撃の報道で4万2000ドル台前半まで下落し
ている。
 ドルインデックスはイスラエルのイラン攻撃の報道で97ポイント台まで崩れたが、
その後は98ポイント台前半まで戻している。

【イラン核開発疑惑を巡り非難決議=IAEA】
 国際原子力機関(IAEA)の理事会は12日、イランが未申告の核開発疑惑をめぐ
り、核監視業務への協力を怠ったとして非難決議を採択した。米国、英国、フランス、
ドイツが提案したこの決議は、理事会の35カ国のうち19カ国が賛成票。棄権は11
カ国。反対はロシア、中国、ブルキナファソの3カ国だった。
 またIAEAは直近の発表でイラン当局からの情報として、イスラエル軍による攻撃
の対象となったナタンツ核施設で放射線レベルの上昇はないとしている。

【東京原油のテクニカル分析】
 東京原油の6番限である11月限は12日の引けにボリンジャーバンドの2シグマ
(直近は5万9650円辺り)を引けで突破して、13日は急騰で一時6万3200円
の高値。引けでも6万2000円台を維持して、完全にランナウェイ相場となって来
た。

【NY原油、ブレント原油のテクニカル分析】
 ニューヨーク原油7月限はチャートは12日時点のもの。6日にボリンジャーバンド
の2シグマ(直近は67.15ドル辺り)を上抜けて以降、その2シグマに沿った上昇
相場となったが、13日のアジアの時間帯の急騰で一時77ドル台に乗せた。

 ブレント原油8月限もほぼ同様の値動き。直近はボリンジャーバンドの2シグマ
(直近は68.73ドル辺り)に沿った上昇となり、70ドル水準でいったん上値づか
えとなっていたものの、13日のアジアの時間帯の急騰で一時78ドル台に乗せた。

<当面の予定>
16日【経済】小売業販売額 2025年4月確報(経済産業省)
   【経済】金融政策決定会合(日本銀行)
   【経済】中国住宅価格指数 2025年5月(国家統計局)
   【経済】中国小売売上高 2025年5月(国家統計局)
   【経済】中国鉱工業生産 2025年5月(国家統計局)
   【経済】英住宅価格指数 2025年6月(ライトムーブ)
   【経済】米製造業景況指数 2025年6月(ニューヨーク連銀)

17日【経済】総裁記者会見(日本銀行)
   【経済】金融市場調節方針公表(日本銀行)
   【経済】金融政策決定会合(日本銀行)
   【経済】独景況感指数 2025年6月(ZEW)
   【経済】米小売売上高 2025年5月(商務省)
   【経済】米輸出入物価指数 2025年5月(労働省)
   【経済】米鉱工業生産・設備稼働率 2025年5月(FRB)
   【経済】米企業在庫 2025年4月(商務省)
   【経済】米連邦公開市場委員会(FRB)
   【工業】米週間石油統計(API)

18日【経済】機械受注 2025年4月(内閣府)
   【経済】貿易収支 2025年5月速報(財務省)
   【工業】原油・石油製品供給統計週報(石油連盟)
   【工業】石油製品給油所小売価格調査(資源エネルギー庁)
   【経済】ユーロ圏国際収支 2025年4月(ECB)
   【経済】ユーロ圏消費者物価指数 2025年5月確報(EUROSTAT)
   【経済】英消費者物価指数 2025年5月(国立統計局)
   【経済】英小売物価指数 2025年5月(国立統計局)
   【経済】英生産者物価指数 2025年5月(国立統計局)
   【経済】米住宅ローン申請指数(MBA)
   【経済】米住宅着工・許可件数 2025年5月(商務省)
   【経済】米新規失業保険申請件数(労働省)
   【経済】米FOMC声明文公表(FRB)
   【経済】米対米証券投資 2025年4月(財務省)
   【経済】米連邦公開市場委員会(FRB)
   【工業】米週間石油統計(EIA)

19日【経済】対外及び対内証券売買契約等の状況 6月8日-6月15日(財務省)
   【経済】英政策金利公表(BOE)
   【経済】英金融政策委員会議事録 6月18日分(BOE)
   【休日】米奴隷解放記念日

20日【経済】消費者物価指数 2025年5月(総務省)
   【経済】金融政策決定会合議事要旨公表 4月30-5月1日分(日本銀行)
   【経済】独生産者物価指数 2025年5月(連邦統計庁)
   【経済】英小売売上高 2025年5月(国立統計局)
   【経済】米製造業景況指数 2025年6月(フィラデルフィア連銀)
   【経済】米景気先行指数 2025年5月(カンファレンスボード)
   【農産】米週間穀物輸出成約高(USDA)
   【商品】米建玉明細報告(CFTC)
   【納会】米WTI原油 2025年7月限(NYMEX)
     【工業】全米石油堀削稼動数(米ベーカーフューズ)

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