コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【金は安全資産を求める動きから高止まりが続く】
 NY金期近8月限は6月9日に3313.1ドルまで値を落とした後、再浮上とな
り、3400ドルを突破。16日に5月7日以来の高水準となる3476.3ドルの高
値まで浮上した。翌17日は反落したが、18日は小高くなり、3408.1ドルで取
引を終え、3400ドル割れには抵抗を見せ、買い気の根強さを窺わせている。
 今月13日にイスラエルがイランの核施設に対して攻撃を行ったことを受け、イラン
も報復攻撃を実施。その後も攻撃の応酬が続く中で中東情勢不安が高まったことがで金
市場では安全資産を買う動きが膨らんだ。
 イランとイスラエルは18日になってもお互いに攻撃を繰り返すなか、米トランプ大
統領はイランに対して無条件降伏を求めているものの、イランは徹底抗戦の構えを見せ
ており、現時点ではイスラエルとイランの緊張状態が収束に向かう見通しは立っていな
い。米国が軍事作戦に参加する可能性も意識されているため、イスラエルによるイラン
先制攻撃によるインパクトを織り込んだことで上げ一巡感が強まる金市場では引き続き
安全資産を求める動きが見られる可能性が高い。
 また、金市場では依然として米景気見通しが金価格の動向に影響を与える要因として
意識されている。
 17日に発表された5月の米小売売上高の前月比は事前予想の−0.7%を下回る−
0.9%と今年1月以来、4カ月ぶりの大幅縮小となった。トランプ政権による輸入関
税の引き上げは4月以降に本格化したが、5月の小売売上高の減少は、関税引き上げ前
に膨らんだ駆け込み需要が一段落した可能性を窺わせている。
 5月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が前年同月比は+2.4%となり、4月
の+2.3%を上回ったもののその伸びは0.1%にとどまるなど、物価が抑制されて
いる様子が明らかとなったが、物価が抑制されながらも小売売上高が縮小しているの
は、消費者に買い控えの動きが広がっている可能性を示唆している。
 これまでのところ輸入価格の上昇はサービス価格を引き下げることで相殺されている
と見られ、米企業による価格転嫁の動きが限られるようであれば、企業の収支悪化が促
されることが予想される。また、価格が抑制されている状況にもかかわらず、買い控え
の動きが広がっており、今後も個人消費は冷え込んだ状態が続く可能性があることを窺
わせている。
 その一方で9日から10日にかけてロンドンで開催された米中通商協議はジュネーブ
合意の履行で合意に至ったものの、軍事用としてのレアアース問題が未解決となってい
るうえ、米中お互いの輸入関税は相互関税導入前よりも高い水準が維持されている。
 中東情勢や米景気、そして米中貿易摩擦に対する過度な警戒感は共に後退しているも
のの、中東情勢は今後米国が参入する可能性があるうえ、米景気は今後の物価の上昇に
伴い悪化に向かうリスクが見込まれている。また、米中貿易摩擦に関しても全面解決に
は至っていない。
 金を安全資産として買う動きが根強く続くと予想。NY金8月限は今月12日の安値
3358.5ドル、上昇基調にある中期線の25日移動平均線(3346ドル)が支持
線として意識され、下値堅く推移するとみる。
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