【相互関税合意による影響は一時的で依然として金の底意は強い】 NY金8月限は22日にかけて続伸し6月16日に付けた3476.3ドルの高値に 近づく動きを見せたが、23日は反落となり、3400ドル台を割り込んでいる。 米国は米関税政策の見通し不透明感や不確実性を受けて長期的な計画を立てるのが困 難となり、設備投資への意欲も停滞している様子が窺われる内容の発表が続いている。 また、15日に発表された6月消費者物価指数(CPI)の前年同月比は、前月に記 録した伸び率+2.4%を上回る+2.7%だったことを受けて、米関税政策が物価に 与えている影響に対する懸念に加え、インフレ加速化観測が強まっていたことも、金に 対する逃避買い需要が高まる要因となっていた。 さらに大型減税を盛り込んだ一つの大きい法案(OBBBA)が成立、正式に施行さ れるなか、ぜ財政悪化に対する警戒感が膨らみ、米国離れ・米ドル離れの動きが広がっ たこともNY金市場にとっての買い支援要因となっていた。 23日、急反落となったのは、日本への関税率は7月9日に発表した25%から引き 下げた15%で合意した、と伝えられたことが背景となった。特に交渉が続けられてい る欧州連合(EU)との間では、日本に対して課された15%が意識される展開になる との見方が強い。 米政府によるEUへの当初の関税率は30%だったため実際に関税が引き下げられる ようであれば、米国と他諸国・域との間での貿易摩擦に対する懸念が和らぐと予想され るが、急反落となった23日の取引では早くも対EU相互関税上乗せ分の引き下げ観測 が織り込まれたと見られる。 ただ、NY金の下落も短期に終わる可能性がある。相互関税上乗せ分の一時停止期限 となる7月9日を前に通達された相互関税率よりも、8月1日からの発動時の実際の相 互関税率が交渉によって引き下げられたとしても、上乗せ分が交渉によって決定されて 賦課されることによりこれまでに賦課されている相互関税の基礎比率10%からは関税 が上昇するからだ。 関税が引き上げられることにより輸入物価が上昇することが見込まれるが、今後はこ れが次第に生活に密着した品物の価格を引き上げ、結果的に物価に影響すると予想され る。 日本と米国の関税交渉が前回通達時よりも引き下げられた比率での合意に至ったこと や、EUも米国との間で同率程度で関税交渉は合意に至る可能性が指摘されている。こ れらの関税交渉の合意は、当初の比率よりも関税率が引き下げられたことで、日本・E U双方の経済に与える影響も限られると見られるうえ、見通しに不透明感が強かった米 トランプ政権の関税政策に対する懸念は後退した。 ただ8月1日からの米国の輸入関税はこれまでよりも上昇し、米国内の物価高につな がる恐れがある。また、物価高傾向が強まれば米国離れの動きが再び強まることが、金 の安全資産としての買いを刺激すると予想。5月21日以降、2か月に渡って3300 ドルが支持線になっているが、引き続き、3300ドルを支持線に下値堅い動きが続く とみる。 MINKABU PRESS
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