S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。 ●THE S&P 500 MARKET:2025年7月 個人的見解:米国株式市場は大胆に未踏の領域に突き進む(力強い経済ファンダメンタルズを根拠とした楽観論とモメンタムに支えられて) 相互関税導入の発表を受けて4月8日に4982.77(年初来で15.28%下落)まで下落したS&P500指数 は、その翌日からは挑むように上昇基調を辿り、4月8日以降に過去最高値を12回更新しました(7月中に10回更新、この中には5営業日連続で最高値を更新した完璧な1週間も含まれます。また、2024年11月5日の大統領選挙以降では25回最高値を更新しました)。この結果、投資家のポートフォリオは11兆5140億ドル増加しました(7月は1兆2370億ドルの増加、年初来では3兆9320億ドルの増加)。 非常に多くの市場関係者がリセッションという終末シナリオ(当時のリセッション入り確率は70%)や、業績の低下と雇用悪化を口にしていた(こうしたシナリオをかつて予想していたと認める者は、今ではほとんどいません)ことを考えると、これは驚異的な相場の転換と言えます。先行きに否定的な見方をする者が全くいないとは言いませんが(そして私がその一人ではないとも言ってはいません)、企業側が関税コストの大部分を吸収してきたとみられる中でも、第2四半期の営業利益は事前予想を上回る内容となっています(67%の企業が決算発表を終えており、利益は前年同期比8.6%増で過去最高となる見通し)。すでに株を保有している人や、これから購入しようとしている人にとって、さらに大きな安心材料といえるのが、下半期の企業業績も底堅さを維持しており(とはいえ、2024年末時点での予想は下回る)、過去最高益となる可能性があることです。2026年の営業利益を前年同期比16.6%増と見込んでいる市場予想は、4月8日から7月末までに株価が27.23%上昇するだろうと主張するのと同じくらい正気の沙汰とは思えないように思われます。 しかし、(景気刺激策ともいえる)1つの大きくて美しい法案(OBBB法案)が、2026年中に事業や個人にもたらすインセンティブの影響を考慮すると、高くて非現実的に見える2026年の増益予想の数値は常軌を逸した見通しであるとは言えないでしょう。このような楽観的な予測の例は過去にも確認されます。関税は米国の歳入(とキャッシュフロー)にとって今や極めて重要となっています。OBBBによる歳入減を考慮すると、関税収入が得られなければ(連邦裁判所の判断次第で可能性はある)、減税による歳入不足を補うための財源確保が今後問題となる中で、予測が4月8日時点のものに逆戻りする可能性もあります(連邦債務の利払いは、すでに歳入の18%という極端な水準にまで膨れ上がっている)。 8月の株式市場に目を向けると、関税が引き続き注目材料です。8月1日の相互関税の適用停止期限は延長され、米国企業がどこまで関税コストを吸収できるかが試されています(値上げ計画の発表に関する報道が増えています)。また、連邦巡回控訴裁判所が7月31日に予定しているトランプ関税の根拠の有効性に関する審理も注視する必要があります。敗者は最高裁判所に上告するとみられます(トランプ政権には国家安全保障や通商の観点から関税措置を実施する複数の代替案があるようですが、その多くには制限があります)。8月に公表される経済指標も重要性を増しています。定量化された関税の影響が指標に反映される流れが続くとともに、米連邦公開市場委員会(FOMC)が0.25%の利下げを決断すると予想されています(パウエル氏はFOMCの議長職に留まるとみられています)。 7月にS&P500指数は2.17%上昇し(6月は4.96%上昇、5月は6.15%上昇)、11セクターのうち6セクターが上昇しました(6月は9セクターが上昇)。279銘柄が値上がりし、222銘柄が値下がりしました(6月は340銘柄が値上がり、163銘柄が値下がり)。7月もパフォーマンスが最高となったのは情報技術で(3ヵ月連続でパフォーマンストップ)、5.16%上昇しました。6月は9.73%、5月は10.79%上昇し(累計27.85%上昇)、年初来では13.26%上昇となりました。 パフォーマンスが最低だったのはヘルスケアで3.44%下落し、年初来でも5.38%下落しました。年初来で見ると、S&P500指数は7.78%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス8.59%)、11セクターのうち9セクターが上昇となり、293銘柄が値上がりし、210銘柄が値下がりしました。セクター別では年初来パフォーマンスが最高となったのは資本財サービスで15.26%上昇した一方、ヘルスケアが5.38%下落して最低となっています。長期間にわたり投資を続けていけば、豊かになります。投資と共にあらんことを。 ●インデックスの動き ○7月の株式市場の重要ポイントは、S&P500指数が22営業日のうち10営業日で終値最高値を更新したことです。この10営業日には、(月曜日から金曜日まで)連日最高値更新が続いたパーフェクトな1週間も含まれています。同指数は年初来で15回、また2024年11月5日の大統領選挙以降では25回、最高値を更新しました。前回5営業日連続で最高値を更新したのは2024年7月でした(1928年以降では58回、私がS&P社に勤務して以降では31回、同指数は5日連続での最高値更新を記録しています)。 ○7月は企業業績と関税が金融関係の重要なニュースであり、また市場にとっての最大の関心事でした。企業利益は予想を上回って発表されており、第2四半期は過去最高になると予想されています。2025年下半期の業績予想も底堅く、過去最高を更新すると見込まれています。関税の企業利益への影響は限定的と見られ、企業は関税コストの大部分を吸収してきました(全コストを顧客に対して転嫁する代わりに)が、将来的には値上げを予定していると発表しています。関税交渉も急ピッチで進みました。主要国・地域では欧州連合(EU、15%)、日本(15%)、ベトナム(20%)、そして英国(10%)との間で合意に達したことが発表されました。一方で、中国、インド、韓国との交渉は継続しています。 ⇒7月にS&P500指数は2.17%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス2.24%)。6月は4.96%上昇(同プラス5.09%)、5月は6.15%上昇(同プラス6.29%)、4月は0.76%下落(同マイナス0.68%)、3月は全面安となり5.75%下落(同マイナス5.63%)、2月は1.42%下落(同マイナス1.30%)、1月は2.70%上昇(同プラス2.78%)でした。 ⇒過去3ヵ月では13.83%上昇(同プラス14.21%)となりました。 ⇒年初来では7.78%上昇(同プラス8.59%)となりました。 ⇒2025年7月末までの1年間では14.80%上昇(同プラス16.33%)となりました。 →2024年通年では23.31%上昇(同プラス25.02%)、2023年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。 ⇒7月は値上がり銘柄数が減少しましたが、引き続き値下がり銘柄数を上回っており、279銘柄が値上がりし、222銘柄が値下がりしました(6月は340銘柄が値上がり、163銘柄が値下がり、5月は347銘柄が値上がり、155銘柄が値下がり、4月は168銘柄が値上がり、335銘柄が値下がり、2024年は332銘柄が値上がり、169銘柄が値下がりしました)。 ⇒7月は22営業日のうち12営業日で上昇しました(6月は20営業日のうち13営業日で上昇)。6月は3営業日で1%以上変動(2営業日が上昇、1営業日が下落)しましたが、7月は1%以上変動した日はありませんでした。年初来では39営業日で1%以上変動(18営業日が上昇、21営業日が下落)しています。2024年は50営業日で1%以上変動しました(31営業日が上昇、19営業日が下落)。 ⇒7月は11セクターのうち、6セクターが上昇しました(6月は11セクターのうち、9セクターが上昇)。 ○S&P500指数の時価総額は1兆2370億ドル増加して(6月は2兆3350億ドル増加)、53兆7370億ドルとなり、年初来では3兆9320億ドルの増加となりました。2024年通年で時価総額は9兆7660億ドルの増加、2023年は7兆9060億ドルの増加となり、2022年は8兆2240億ドル減少しました。 ○ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は、7月に0.08%上昇して(配当込みのトータルリターンはプラス0.16%)4万4130.98ドルで月を終えました。6月は4.32%上昇して(同プラス4.77%)4万4094.77ドル、5月は3.94%上昇して(同プラス4.16%)4万2270.07ドルで月を終えました。過去3ヵ月では8.51%上昇(同プラス8.99%)、年初来では3.73%上昇(同プラス4.72%)、過去1年間では8.05%上昇しました(同プラス9.95%)。2024年通年では12.88%上昇(同プラス14.99%)、2023年は13.70%上昇(同プラス16.18%)、2022年は8.78%下落(同マイナス6.86%)でした。 ○7月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、0.63%と6月の0.83%から低下しました(5月は1.09%、4月は3.21%、3月は1.71%、2月は1.09%、1月は0.91%)。年初来では1.45%でした。2024年通年は0.91%、2023年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.41%)。 ○7月の出来高は、6月に前月比6%増加した後に、同3%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では41%増加となりました。2025年7月までの12ヵ月間では前年比19%増加しました。2024年通年では前年比2%減少しています。2023年は同1%減で、2022年は同6%増でした。 ○7月は22営業日中1%以上変動した日はありませんでした。6月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数が144営業日中39日(上昇が18日、下落が21日)、2%以上変動した日数は12日(上昇が6日、下落が6日)ありました。2024年通年では、1%以上変動した日数は50日(上昇が31日、下落が19日)で、2%以上変動した日数は7日(上昇が3日、下落が4日)でした。 ⇒7月は22営業日中2日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日はありませんでした。対して6月は20営業日5日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では1%以上の変動が79日、2%以上の変動が22日、3%以上の変動が7日でした。2024年通年では1%以上の変動が83日、2%以上の変動が11日でした。2023年は1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日でした。 過去の実績を見ると、7月は60.8%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.87%、下落した月の平均下落率は3.24%、全体の平均騰落率は1.69%の上昇となっています(過去のデータでは年間で最も好成績の月)。2025年7月のS&P500指数は2.17%の上昇でした。 8月は58.8%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.86%、下落した月の平均下落率は3.90%、全体の平均騰落率は0.66%の上昇となっています。 今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2025年は9月16日-17日、10月28日-29日、12月9日-10日、2026年は1月27日-28日、3月17日-18日、4月28日-29日、6月16日-17日、7月28日-29日、9月15日-16日、10月27日-28日、12月8日-9日となっています。 ※「7月は10営業日で最高値更新、“完璧な1週間”も (2)」へ続く 株探ニュース
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