【NY金はFRBを巡る混乱と9月利下げ観測が下支え】 NY金は20日から地合いを引き締めた。地合いを引き締めた背景は米トランプ大統 領による米連邦準備理事会(FRB)のクック理事の辞任要求が一因となった。同理事 の辞任についてトランプ大統領は住宅ローン契約を巡る不正疑惑を挙げており、26日 に解任に至ったのに対し、クック理事側は提訴する方針を示している。 FRBとトランプ大統領は、これまでトランプ大統領がパウエルFRB議長に対し利 下げを求めたり、利下げの要求に応じないパウエル議長は退任すべきとの見解を示すな どの動きが見られてきた。 ここにきてクック理事の解任を試みたことがパウエル議長の解任に繋がるわけではな いものの、解任を巡る混乱やFRBの独立性が懸念される状況、米大統領とFRBの関 係性に対する不安感を強める要因となり、これがドルを売る動きや安全資産を求める動 きを刺激する要因になっている。 FRBは、9月16日から17日にかけて公開市場委員会(FOMC)を開催し、こ のFOMCでの利下げが予想されている。CMEのFedウォッチによると、9月のF OMCでの利下げを見込む比率は8月22日時点では75%台まで低下していたが、8 月27日時点では88.7%まで上昇しており、早期利下げ観測が再び強まっている様 子を示している。 FRBのパウエル議長は22日に行ったジャクソンホールでの講演において、政策金 利の引き下げ検討を慎重に進められる状況にある、と語ったことを受けて利下げを織り 込む形となっているが、同議長は同時に経済指標のデータを注視する姿勢も改めて示し ている。 米国では雇用情勢の軟化が懸念されるなか、8月消費者信頼感指数は前月から低下し ており将来的な家計に対し悲観的な見方が強まった可能性が示されている。ただ、その 一方では7月の米耐久財受注は、民間設備投資の先行指標とされるコア資本財(非国防 資本財から航空機を除く)の受注の前月比は予想を上回る1.1%増となっており、強 弱入り混じる内容の発表が見られている。 注目されるのは、米トランプ政権の関税引き上げによる米国の物価高傾向が顕著にな るかどどうか、そして米雇用情勢は軟化傾向を強めるかどうかという点だ。これまでの ところ、8月1日からの相互関税の上乗せ分の発動を受けてインフレ加速化が見込まれ るものの、7月までの段階では企業努力により物価の上昇は抑制されて いる状況にある。 7月までの場合、相互関税は基礎部分の10%のみの適用となるが、上乗せ分が発動 されることにより、実質関税は20%程度まで上昇することが予想される。利下げを実 施することは物価の高止まりを促す可能性があるが、雇用の軟化傾向が続いているよう であれば、利下げが米経済にネガティヴな影響を与える可能性も出てくる。 目先は9月1日の週に発表される雇用関連の統計が注目される要因となるが、雇用統 計が弱気であればFRBを巡る混乱に加え、米経済に対する不安感が高まると予想され る。雇用統計が強気な内容であれば9月利下げを意識させることが予想され、いずれの 結果だったとしてもNY金市場にとっては買いを支援する要因になってきそうだ。 MINKABU PRESS
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