【米雇用情勢軟化や高まる米財政不安や米利下げ観測が金を下支え】 NY金12月限は9月に入って上値を探る動きを維持し、3日に終値で3600ドル 台を記録した後も騰勢を維持。9日に3715.2ドルと一代の高値を更新した。10 日は若干値を落としたものの3680.4ドルで終え、高値圏を維持している。8月2 9日の終値が3516.1ドルだったため、9月に入ってから終値で160ドル超の上 げ幅を記録した。NY金の上伸は米財政に対する不安感や、9月16〜17日に開催の 米公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測の強まりが背景。 米雇用統計の軟化を受けて米経済の先行きに対する不安感が強まっている。米国では これまで旺盛な消費活動を示す経済指標の発表が見られていたが、9月を迎え発表され た雇用統計は、7月の米雇用動態調査(JOLTS)での求人件数の減少、米労働省労 働統計局(BLS)の年次雇用者数の下方修正と弱気な発表が続いている。 BLS発表の年次雇用者数の引き下げは、米トランプ政権による関税引き上げ措置発 動以前より米雇用情勢は軟化していた可能性を示したが、輸入関税引き上げにより物価 高が見込まれていることで企業の採用活動がより消極性が増しているとの懸念を強める 結果となった。 米国では8月1日より相互関税の上乗せ分が発動されているが、この発動によって輸 入物価は基礎部分のみが適用されていた今年4月〜7月よりも上昇していることが見込 まれる。7月までの時点では輸入関税の引き上げが米国の物価に大きな影響を与えてい る様子は見受けられなかったものの、8月以降は相互関税の上乗せ分が発動されたこと により物価高が促されている可能性が高い。 これまでは企業努力が輸入物価の上昇分を吸収してきたが、相互関税の上乗せ分が発 動されたことで企業による吸収にも限界が生じる可能性が見込まれるが、このような中 で米雇用情勢がこれまで想定されていたよりも軟化していた可能性が示されたことは、 米経済の先行きに対する不安感を強める要因となる。 一方、米関税政策に対して違法判決が出ていることも米財政不安を高める要因になっ ている。米トランプ政権は貿易赤字の縮小を目的として相互関税を設定すると同時に、 大規模な減税政策により縮小した米政府の歳入の補てんも関税に頼る構図になると同時 に米国の高関税政策が定着する可能性を高めるものとなっていた。 ただ、トランプ関税に対する違法判決がくだされたことにより、この大型限定により 減少した歳入を増加した関税収入によって補うという構図が崩れる可能性も出てきてい る。トランプ関税に関しては最高裁による判断を待つところだが、米最高裁が違法と判 断した場合、米政権は減税を穴埋めする歳入の拠り所を失うこととなり、米財政に対す る懸念が更に高まる可能性がある。 米関税政策が維持されるようであれば、米国内の物価上昇が見込まれるが、雇用情勢 の軟化傾向が強まっているだけに物価高が米経済に与える影響が警戒される一方、米関 税政策に違法判決がくだされ、米関税が引き下げられる可能性が高まれば米政府の歳入 縮小とこれに伴う米財政悪化に対する警戒感が強まることになる。 11日に8月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、8月1日の相互関税上乗せ 分発動による米物価への影響が明らかとなる。米CPIの上昇が確認されるならば米雇 用情勢が軟化するなかでの米利下げによる物価高が米経済に与える影響が警戒される一 方、CPIが伸び悩むようであれば米利下げ観測がさらに高まると見られる。 米雇用情勢がこれまで想定されていた以上の軟化を見せていることが米経済不安を高 めるなか、関税政策の行方に対する警戒感が強まると同時に、米財政不安も深まってい ることで安全資産を求める動きは根強く、NY金は再び3700ドル台を記録する可能 性があるなかでの高もみを継続すると見られる。 MINKABU PRESS
みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。