【米中悪化懸念の浮上で強まる逃避買い需要で押し上げられるNY金】 NY金12月限は今月7日に終値で4000ドル台を記録。その後、転売で値を落と す場面があったが、14日に4190.9ドル、翌15日に4210.6ドルに達し、 一代高値の更新が続いている。NY金価格を4200ドル台に押し上げたのは、米中関 係の悪化懸念が浮上したことが背景だ。 中国商務省は9日に中国産レアアースが使用された製品を輸出する外国企業の輸出ラ イセンスの取得の必要に加え、レアアースの採掘などの技術も同省の許可なしでの輸出 禁止を発表した。これに対し米トランプ大統領は10月末に韓国で開催される予定のア ジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせた中国の習近平国家主席との会合につい て、その必要はない、としたほか、今後の中国の動向次第では中国からの輸入品に対し 11月1日から100%の追加関税を課す、と自身のソーシャルメディア、トゥルー ス・ソーシャルに投稿している。 その後、トランプ大統領は中国習近平国家主席との会談が開催される可能性を示唆す るなど、若干、中国に対する姿勢を和らげているが、中国側は米国からの脅しがある状 況で交渉を行うことは無い、との姿勢を示し、両者の溝が10月下旬のAPECまでに 埋まり首脳会談の開催に至ることができるかどうかは見通しに不透明感が強い。 仮に中国と米国の間で歩み寄りが見られずトランプ大統領が表明した通りに11月1 日から中国からの輸入に対し100%の追加関税が課されるようであれば、米国でのイ ンフレ加速化懸念はさらに強まることになる。 今のところ、米政府機関の一部閉鎖が続いているため最新の米雇用情勢は把握が困難 な状態にあるが、雇用情勢軟化に対する懸念が払しょくされない状態でインフレ加速化 を促す輸入関税の賦課が実行に移されれば、インフレ加速化やこれが個人消費に与える 影響に対する警戒感が強まると予想される。 パウエル連邦準備理事会(FRB)議長は全米企業エコノミスト協会(NABE)の 年次総会に登壇した際に、量的引き締めのバランスシート圧縮を今後数カ月で停止する 可能性を示唆したうえ、米雇用情勢は軟化傾向が続く可能性についても言及している。 同時に、軟化傾向にある雇用と底堅さを見せる個人消費の矛盾にも触れている。 これまでのところ、個人消費は活発ながら、富裕層による消費が全体をけん引し、個 人消費が全体的に底堅いわけではない可能性もある。米トランプ政権が中国からの輸入 品に対して追加関税を賦課すれば、これまで堅調を保っていた個人消費にも影響がでる ことが警戒され、この警戒感が安全資産を求める動きを刺激する要因となる。 さらに、米中関係悪化とこれを受けた米経済不安の高まりは、米連邦準備理事会(F RB)による追加利下げの可能性を高めるなど、米金融政策という側面からも金価格を 押し上げ得る要因になってくる。 また、米政府機関の一部閉鎖もいつ解消されるか分からない状況にあり、財政面、金 融政策面、そして行政面などで米国に対する懸念が深まっていることも、安全資産を求 める動きを後押ししている。 NY金12月限は3721.3ドルで取引を開始した9月22日以降、一代の高値を 複数回にわたって更新し続け10月15日には4200ドル台に達する青天井となって いるが、NY金市場を取り囲む環境は安全資産に対する需要を意識させるものが目立つ 状況に変化はない。 既にこの1か月弱で480ドル程度の上げ幅を記録しながらも、今後の上値のメドが 付きにくい。今後もNY金市場は価格上昇に対する警戒感から転売に値を落とす場面が 見られたとしても下げ幅は限られ、12月限は4200ドルを維持する高値圏での高下 が続くと予想される。 MINKABU PRESS
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