金の現物相場は、イラン戦争の長期化見通しを受けて3月に昨年11月以来の安値 4103ドルを付け、テクニカル面で中長期の節目となる200日移動平均線を試した が、トランプ米大統領が早期撤退を示唆したことなどを受けて下げ一服となった。米大 統領はイランに停戦合意に応じなければ橋や発電所を攻撃すると警告したが、イランが 拒否したため、米大統領は攻撃期限を延長しながら脅しを繰り返した。一方、パキスタ ンの仲介で4月7日に2週間の停戦合意が成立し、11〜12日にかけて停戦協議が実 施されたが、バンス副大統領は核問題で合意できなかったとした。米大統領は協議決裂 に対して米軍のホルムズ海峡封鎖で対応し、協議再開に向けた動きが出た。協議再開期 待に加え、イランのアラグチ外相がレバノンでの停戦合意を受けてホルムズ海峡を開放 すると述べると、4882ドル台まで戻した。米大統領が協議再開を要求したのに対 し、イランは米国の過大な要求として拒否したが、パキスタンの仲介もあり、イランは 代表団をイスラマバードに送る可能性が伝えられた。しかし、イランのガリバフ国会議 長が、米大統領は降伏のテーブルに変えようとしているとの見方を示すと、停戦協議の 欠席が通知され、戻りを売られた。米大統領は停戦延長を発表したが、協議の行方は不 透明である。 イラン戦争について当初、イランの弾道ミサイル排除や海軍破壊、核兵器開発の放 棄、テロ組織への武器・資金の提供停止という4つの目標が示された。初日に最高指導 者ハメネイ師や軍幹部を排除し、イラン戦争は短期間で終結するとの見方も出た。しか し、イランはイラク戦争などを教訓として、幹部が排除されても対処できる組織を構築 しており、抵抗が続いた。新たな最高指導者にモジタバ師が選出され、イスラム共和国 の体制が継続された。またトランプ米大統領は制空権を確保したと主張したが、イラン が新防空システムを稼働すると、戦闘機が撃墜された。米国は3月下旬、戦闘終結に向 けた15項目の条件を提示したが、イランにとって厳しい条件であるため、拒否され、 10項目の対案が示された。すべての当事者の戦闘停止やホルムズ海峡開放、民生レベ ルのウラン濃縮、濃縮ウラン移動、制裁解除などが盛り込まれ、米大統領は重要な一歩 とした。ただ初回の停戦協議で核開発などで大きな隔たりがあることが明らかとなっ た。米国はイランの核濃縮作業を20年間停止することを要求したが、イランは3〜5 年に制限することを主張した。それにもかかわらず、米大統領は「イランが核開発の無 期限停止で合意した」と投稿しており、米国が妥協しないかぎり、停戦協議はまとまら ないとみられる。 【米FRBはインフレと景気後退懸念で難しい判断】 3月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.3%上昇し、前月の2.4%上昇か ら伸びが加速した。前月比では0.9%上昇と、前月の0.3%上昇から伸びが加速 し、2022年6月以来の大幅な伸びとなった。イラン戦争によるエネルギー価格上昇 や関税による物価押し上げが背景にある。ガソリンの小売価格が4ドル台で高止まりし ており、米大統領の支持率低下につながっていることは停戦合意を急ぐ要因になってい る。一方、3月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は17万8000人増加し た。医療従事者のストライキ終結などを受けて前月の落ち込みから回復したが、イラン 戦争の長期化で労働市場の下振れリスクが高まった。3月17〜18日の米連邦公開市 場委員会(FOMC)議事要旨でインフレ高止まりを受けて利下げが必要になるとの見 方も出たが、イラン戦争の長期化で景気後退も懸念され、当面は様子見を維持するとみ られている。 【イラン戦争の終結期待で金ETFに投資資金が戻る】 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、4月20 日に1060.62トン(3月末1046.13トン)となった。イラン戦争の終結期 待などを受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉 明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは4月14日時点 で16万2526枚(前週15万6305枚)となった。イラン戦争の終結期待を受け て相場は戻り歩調だが、TACO(トランプはいつも尻込みする)トレードが意識され るなか、逆張りの動きとなっている。 (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行) *22日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。
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