とれんど捕物帳 インフレなき景気回復への期待でショートカバーが続く

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 さすがに114円台に入るとこれまでのシコリも多いのか上値は重くなったものの、ドル円は堅調な動きを維持している。一時1114.45付近まで上昇し、7月高値の114.50水準に接近した。「インフレなき景気回復への期待」とでも言ったところであろうか、ドルのショートカバーが続いている。ある意味、良い状態なのかもしれない。

 米下院が米上院で可決した予算決議案を可決したこともフォローとなったようで、採決こそ僅差ではあったものの今回の予算決議案は、減税のため財政赤字を今後10年間で最大1.5兆ドル拡大させることを許容するとも言われている。市場では税制改革が前進とのイメージに繋がったようだ。

 そして、今週は何と言ってもECB理事会であっただろう。来年以降の資産購入を現在の月600億ユーロから300億ユーロに減らし、期間は1月から9月までとした。決定自体は事前の予想が多かった内容でもありサプライズは小さい。ただ、ECBが慎重姿勢を強調しており、「必要なら購入額や期間を変更する用意がある」との文言を温存し、ドラギ総裁の会見でも「“少なくとも”9月までは続ける」と明言したことがユーロ売りを先導ようだ。これも予想範囲内だったのかもしれないが、ドルの地合いが強まっている局面でもあり、ユーロが売り易かったとも言えよう。

 そして、注目の次期FRB議長人事だが、今週も発表はなかった。候補はテイラー氏、パウエル氏、そしてイエレン議長の3名に絞られている。金曜日にはパウエル氏が有力との報道が再び流れ市場は、米国債利回り低下、ドル売りの反応を見せていた。トランプ政権としては低金利政策と、恐らくドル安を志向しているものと思われる。その意味ではパウエル氏は適当なのかもしれない。

 パウエル氏は現在、FRB理事だが、市場では同氏のスタンスはイエレン議長に近いと見られている。決してハト派ではないと思われるが、対抗馬とされるテイラー氏に比べればハト派に見られるようだ。テイラー氏は一定のルールに基いた金融政策を標榜している。同氏が提唱している成長率、インフレ率(場合によっては失業率を代用)から政策金利を計算するテイラー・ルールからすれば、政策金利は既に現在の水準を遥かに超えていなければならないとの計算もある。

 そのような状況からパウエル氏であれば、ドルと米国債利回りは下げの反応となるようだ。ただ、基本的にはFRB議長が変わったからといって、政策スタンスが一気に変わることはないということは留めておきたい。

 そのほか、イエレン議長は候補から外れたとの報道も流れていた。ホワイトハウスが様々リークして反応を見ているものと思われるが、トランプ大統領が来週、アジア歴訪前に発表する。トランプ大統領のアジア歴訪といえば、訪日して仲良しの安倍首相とまた、ゴルフをするようだ。ゴルフをしながら“金を穴に入れる方法”でも考えるのであろう。
 
 個人的な予想スタンスは「パウエル議長、外れたらトランプのせい!」とこれまでと変わらずとしたい。

 少しだけ米企業の決算にも振れておくが、今週は主要なIT・ハイテク企業の発表があり、そのなかでもアマゾンの決算は心強い内容であっただろう。赤字も気にせず投資に継ぐ投資で革新的なサービスを打ち出している。すっかりサクラダファミリア状態だが、株主もバリュエーションだ配当などと、ちまちましたことは言わずに見守っているようだ。

 ITバブルの頃はこのような企業が日本にもあったようにも記憶しているが、最近は投資業に夢中のようだ。米企業の決算は概ね良好で、株高を通じてドル円をサポートしているものと思われる。

 さて来週だが、FOMCや日銀会合、英中銀、そして、米雇用統計など重要イベントが盛りだくさんの週だ。FOMCも日銀も基本的な変化はないであろう。英中銀は利上げが濃厚だが、ポンドは下げの反応を示す可能性も警戒したい。米雇用統計は前回の反動で強い数字が見込まれている。平均時給を含めてよほどのサプライズでない限り、12月利上げの線に変化はないであろう。今週に引き続きユーロ安・ポンド安、ドル高を想定する。ただ、ドル円に関しては今週同様に底堅いものの上値は重い展開を想定する。

 ドル円の想定レンジだが、113.00~115.00を見込む。万一、テイラー氏であれば115円超えも。スタンスはやや強気とする。

()は前週 
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(→)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 ↑↑↑(↑)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 中立継続
短期 ↑↑(→)

◆豪ドル円(AUD/JPY) 
中期 中立から下へトレンド変化
短期 →(↑)

◆ユーロドル(EUR/USD) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↑↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 中立から下へトレンド変化
短期 →(→)

minkabu PRESS編集部 野沢卓美
 

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