今週のドル円は最後の最後で北朝鮮にやられてしまったという印象だ。金曜日に発表になった米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)こそ予想外の減少となったものの、先週も述べた通り、ハリケーンの特殊事情があったことから、市場は最初から材料とはしなかったようだ。レジャー・ホスピタリティが11.1万人雇用を減らしていた点から考えても、ハリケーンの影響が大きかったのではと思われる。 むしろ、労働参加率の上昇にもかかわらず失業率は4.2%まで低下し、更には平均時給が前回の上方修正分もあわせて、予想を大きく上回る伸びとなったことから、全体的にはポジティブな数字だったように思われる。労働市場の改善がようやく、賃金上昇に結びつき始めている兆候もうかがわせる。 市場は利上げ期待を更に高め、CMEがFF金利から算出しているFEDウォッチでも、12月利上げの確率を90%超まで上昇させている。 これらを受けてドル円も113円台を再び回復した。しかし、ドル円の上値追いはそう簡単ではないようだ。ロシアの下院議員のコメントが伝わり、北朝鮮が週末にミサイル発射実験を行うのではとの警戒感が突如強まり、ドル円は失速している。 ただ、米雇用統計が強い内容でドル円が上昇すれば、利益確定売りを出したい向きが元々多かったのかもしれない。金曜日に米先物取引委員会(CFTC)が発表していたIMM投機筋の建玉のデータを見ると、円の売り越しがかなり積み上がっていたことがわかる。東京勢にとっては3連休前でもあり、ちょうど良いポジション調整の機会だったのかもしれない。 なお、北朝鮮に関しては常にそこのあるリスクでどうしようもない。 さて来週だが、重要イベントが目白押しだが、注目したいイベントとしてはまず、FOMC議事録と米消費者物価(CPI)を挙げたい。FOMC議事録に関しては、FOMCメンバーの金利見通しであるドット・プロットがやけに強気な印象だったことが印象的だった。これで大きく流れが変わったといっても過言ではないであろう。その辺の詳細に関してはチェックして置く必要があろう。 そして、またしてもCPIだが、コア指数が前年比で1.7%といのうが4ヵ月連続で続いている。鈍化傾向も一服といった感じが出ているが、現時点の予想では1.8%が見込まれている。 今週も米地区連銀総裁のコメントが多数伝わっていたが、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁のコメントが印象的だった。「他の指標が力強さを示していれば、年内あと1回の利上げに一段のインフレ率の上昇を確認する必要はない」と述べていた。 以前はハト派の急先鋒だった同総裁だが、「最近は一体どうしのだろう!」と思わされることが多い。元々、サンフランシスコ連銀総裁はイエレン議長が就いていた職責で、その当時、ウィリアムズ総裁は副総裁であった。イエレン議長の影響が大きいのか、雇用さえしっかりしていれば、あとは何とかなるといった感じなのかもしれない。 話は元に戻すが、ウィリアムズ総裁のようなFOMCメンバーもいる中で、1.8%はぜひ見たい数字ではある。年内利上げにかなりの追い風になるであろう。もちろんドル円にも。 そして、もうひとつ、衆議院選の公示が連休明け10日に予定されている。すっかり小池劇場の様相で、メディアは小池知事の一挙手一投足に集中している。そのせいか、安倍自民党が霞んでいるようにも見える。 かつての小泉劇場は、刺客を放つなど選挙中も関心を集め続け、そのまま票も集めてしまった経緯がある。当時、刺客の1人だった小池知事が同じシナリオを描いているとするならば、稀代の策士と言えそうだが、小池劇場もかつての小泉劇場のように悪役スターが欲しいところではある。安倍首相からすれば、この状況を打開するためには、正恩に一発撃ってもらって、悪役になってもらうのが一番なのかもしれない。それはそれで市場としては困るのだが。 冗談はさておき、各党の公約を見ると、消費税が最大の違いのように見える。自民党以外は増税凍結が多く、これは安倍自民党にとっては足かせになることも考えられよう。本意がどうあれ、現時点で安倍首相が増税凍結を打ち出すのは立場上無理だ。暗にその辺を有権者が理解してくれるかどうかが鍵になる可能性もあるのかもしれない。 政権交代まではさすがに無いにしても、予想以上に与党が議席を減らすようであれば、いまのメイ英首相のように、政権の足腰が弱る可能性がある。その場合、アベノミクス後退→円高→株安のシナリオも想定され警戒される。過去の選挙もそうだったが、消費税は鬼門だ。 さて、ドル円の想定レンジだが、あえて北朝鮮リスクが無いと仮定すれば、まだ底堅い動きは続くと期待したい。レンジとしては、200日線を下値サポートとし、7月につけた年初来高値114.50水準を上値メドとして、112.00~114.50としたい。スタンスは引続きやや強気。 ()は前週 ◆ドル円(USD/JPY) 中期 上げトレンド継続 短期 ↑(↑↑↑) ◆ユーロ円(EUR/JPY) 中期 上げトレンド継続 短期 ↓(↑↑) ◆ポンド円(GBP/JPY) 中期 上げトレンド継続 短期 ↓(↑↑↑) ◆豪ドル円(AUD/JPY) 中期 上げトレンド継続 短期 ↓↓(↑) ◆ユーロドル(EUR/USD) 中期 中立から下へトレンド変化 短期 ↓↓↓(↓↓↓) ◆ポンドドル(GBP/USD) 中期 上げトレンド継続 短期 ↓↓↓(↑) minkabu PRESS編集部 野沢卓美
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