●ADP全米雇用統計 企業の雇用とレイオフ関連では、5月3日に発表された4月のADP全米雇用統計は17万7,000人増となり、予想の17万人増をわずかに上回りました。ADP全米雇用統計は過去2回の発表で予想を大幅に上回っています。4月の雇用統計における非農業部門雇用者数は18万5,000人増の予想を上回る21万1,000人増となり、3月の速報値の9万8,000人増は7万9,000人増に下方修正されました。失業率は4.6%に上昇すると見られていましたが、引き続き低下して4.4%となり、3月に記録した2007年5月以降の最低である4.5%と2月の4.7%を下回っています。 労働参加率は3月の63.0%から62.9%に低下しました。週平均労働時間は3月の34.3時間から34.4時間に増加して予想通りの結果になりました。時間当たり平均賃金も予想通りに0.3%上昇し、前年同月比では2.5%上昇(26.14ドルから26.19ドルに上昇)しました。3月の求人労働異動調査(JOLTS)では求人数が574万3,000人となり、572万5,000人の予想を小幅に上回りました。 ●1QGDP改定値は予想上振れ 米国経済関連では、4月の個人所得は前月比0.4%増、個人消費も同0.4%増と、いずれも予想通りの結果となりました。PCE価格指数は前月比0.2%上昇(予想通り)、前年同月比では1.7%上昇となり、コアPCEは前月比0.2%上昇(予想は0.1%上昇)、前年同月比では1.5%上昇となりました。4月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は予想通りの52.8となり、3月の53.3から低下しました。4月のサプライ管理協会(ISM)製造業景況指数は54.8と、予想の56.5を下回り、3月の57.2と比べても低下しました。4月のサービス業PMIは予想の52.3を上回る53.1となり(3月は52.8)、ISM非製造業景況指数も57.5と、予想の55.8を上回りました(同55.2)。 4月の生産者物価指数は前月比0.5%上昇し(予想は0.2%上昇)、前年同月比では2.5%上昇しました。コアPPIは前月比0.4%上昇(予想は0.2%上昇)、前年同月比では1.9%上昇でした。4月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.2%上昇(予想通り)、前年同月比では2.2%上昇しました。コアCPIは前月比0.1%上昇(予想は0.2%上昇)、前年同月比では1.9%上昇でした。 3月の建設支出は前月比0.5%増との予想に対し、同0.2%減となり、前年同月比では3.6%増となりました。 2017年第1四半期の労働生産性は前期比年率で横ばいが予想されていましたが、予想を大幅に下回る同0.6%低下となり、単位労働コストは同3.0%上昇しました。3月の製造業受注は前月比0.2%増となり、予想の0.4%増には届きませんでした。4月の鉱工業生産指数は前月比1.0%上昇と、予想の0.4%上昇を上回り、設備稼働率は76.7%と、3月の76.1%から上昇しました。4月の労働市場情勢指数(LMCI)はプラス3.5となり、前回発表値の3月のプラス0.4(当初発表値)から大幅に上昇しました。 5月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値は97.7となり、4月の97.0を上回りました。5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は事前予想の119.0を下回る117.9となり、4月の119.4から低下しました。 2017年第1四半期のGDP成長率(改定値)は速報値(4月28日)の0.7%から上方修正されて1.2%となり、事前予想の0.8%を上回りました。これは望ましい水準には依然として届いていませんが、予想を上回ったことは望ましい兆候です(確報値は6月29日に発表予定)。GDP価格指数は2.2%上昇となりました(予想は2.3%上昇)。地区連銀経済報告(ベージュブック)では、12地区のうち9地区で経済活動が緩やかに拡大したことが示唆され、ボストンとシカゴは低下、ニューヨークは横ばいでした。個人消費は一部の地区で低下したとみられます。労働市場で一部の熟練労働者の需要がひっ迫していることも報告されました。 住宅市場を見ると、5月のNAHB住宅市場指数は70となり、前月比横ばいの予想値である68を上回りました。4月の住宅着工件数は予想の年率換算125.6万戸を下回る117.2万戸となりました(ただし、戸建て住宅については前月比で0.4%増加しています)。建設許可件数も122.9万戸となり、予想の127.1万戸を下回りました。4月の中古住宅販売件数は前月比2.3%減少し、前年同月比では1.6%増となりました。4月の新築住宅販売件数は年率換算56.9万戸と、予想の60.2万戸を下回りました。4月の中古住宅販売仮契約指数は前月比0.5%上昇が予想されていましたが、1.3%の低下となりました。4月のFHFA住宅価格指数は前月比で0.6%上昇、前年同月比では6.2%上昇しました。S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は前月比1.0%上昇、前年同月比では5.9%の上昇となりました。 ●17年通年でも最高益更新へ 2017年第1四半期の決算発表は残りわずかとなりましたが、全体としては好調と言える結果となっています。営業利益は2016年第4四半期から3.8%増益、低調だった2016年第1四半期と比べると20.9%の増益となっています。本稿執筆時点で495銘柄(S&P500指数の時価総額の97%に相当)が決算発表を終え、そのうち営業利益見通しを上回ったのは367銘柄(全体の74.1%。過去平均は67%)、下回ったのは93銘柄、予想通りとなったのは35銘柄でした。情報技術セクターでは88%の企業が予想を上回り、電気通信サービスセクターでは予想を上回った企業と下回った企業で半々となっています。 売上高で見ると、年末商戦のあった2016年第4四半期と比べて2.7%の減収でしたが、売上高の判断指標として一般的に用いられる前年同期比では6.9%の増収でした。金融セクターは、2016年第1四半期が低調で前年実績を上回ることが容易(かつ必須)であったことから28.7%の増収となりました。過剰な自社株買いによる株数減少のペースは第1四半期に大幅に鈍化しており、前年同期比で発行済株数が4%以上減少し、結果的にEPSも4%以上上昇した企業の割合は、2016年第4四半期が19.4%、過去2年間の平均が23.6%だったのに対し、2017年第1四半期は14.1%でした。 ガイダンスは依然としてまちまちですが、悲観的な警告は引き続き限定的で、全体としては概ね良好な内容となっています。2017年第2四半期のS&P500指数全体の1株当たり営業利益は31.10ドルと予想され、これまでの過去最高益である2014年第3四半期の29.60ドルを上回って過去最高を更新する見通しです。前回のボトムは、エネルギーセクターが足かせとなった2015年第4四半期の23.06ドルでした。現時点において、2017年第3および第4四半期も過去最高益の更新が見込まれているため、2017年通年でも過去最高益が予想されます。 こうした予想は、緩やかな景気回復の持続に加え、FOMCによる2回の利上げ(それぞれ0.25%)を織り込んでいるとみられます。注目すべき点は、好材料となり得る法人税改革(あるいはM&A、自社株買い、配当の順で活発化につながるとみられる海外利益の還流)の見通しが不透明なことや、大きな不確定要素である消費者行動や政府の動きから景気後退の兆候が見られないことです。現段階での結論としては、企業利益は好調で、万が一、実際の業績が現時点での成長見通しを下回ったとしても引き続き増益が見込まれるということです。 ●金利、為替、金 金利は、6月のFOMC(13-14日)で利上げが予想される中、5月にやや低下しました。米国10年国債の5月末の利回りは2.25%で、前月末の2.28%から低下し、2016年末の2.45%を下回りました。米国30年国債の5月末の利回りは2.92%で、前月末の2.95%から低下しました(2016年末は3.07%)。 外国為替市場をみると、ユーロは4月末の1ユーロ=1.0868ドルから1.1165ドルに上昇し(同1.0520ドル)、英ポンドは1ポンド=1.2793ドルから1.2786ドルに下落しました(同1.2345ドル)。円は4月末の1ドル=109.73円から111.41円に下落し(同117.00円)、人民元は4月末の1ドル=6.8836元から6.8556元に上昇しました(同6.9448元)。 金は1トロイオンス1,268.30ドルで取引を終え、4月末の1,277.90ドルを下回りました(同1,152.00ドル)。原油価格は月間の大半で上昇基調にありましたが、OPECの減産延長の合意後に値を下げ、4月末の49.21ドルからわずかに上昇して49.49ドルで5月の取引を終えました(同53.89ドル)。原油価格は値下がりしたものの、米国のガソリン価格は概ね横ばいで、4月末の1ガロン2.436ドルに対し、5月末は2.399ドルとなりました(同2.309ドル)。VIX恐怖指数は引き続き低下し、4月末の10.94から一時は2006年12月(9.39)以来の低水準となる9.56まで低下した後、5月末は9.90で月を終えました(同14.04、2016年11月8日の大統領選直前は23)。 ※「“対立”に屈せず、未踏の領域に力強くまい進 (4)」に続く。 株探ニュース
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