今週のドル円は反転の兆しも見られたが、週末の米雇用統計が予想を下回る内容だったことで一気に反転のモメンタムを失っている。ドル円は米雇用統計発表後に100ポイント超急落し200日線に顔合わせしている。前日のADP雇用統計が強い内容だったことから、きょうの米雇用統計に期待が高まっていた。その分、米雇用統計は失望感を強めたようだ。 ただ、非農業部門雇用者数(NFP)は13.8万人増と完全雇用の中ではしっかりとした増加を持続しているものと思われる。ちなみに、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁は良い数字と述べていた。また、労働参加率が下がったこともあるが、失業率も4.3%まで低下。気になる平均時給も前月比で0.2%上昇し、鈍いとはいえ賃金上昇は続いており、FRBが現状を正常化の過程と位置づけているならば、利上げを躊躇する状況ではない。実際、CMEのFEDウォッチでの6月利上げの確率は、雇用統計通過後も95%を超える水準のままだ。6月利上げは予想通り実施してくるものと思われる。 米株は最高値更新が続いているものの、相変わらず米国債利回りの下げ止まらないことがドル円の重しとなっているようだ。ちなみに米10年債利回りは200日線を下回ってきた。6月を含めて、年内あと2回の利上げシナリオに変化は無いものの、9月から12月に利上げ見通しの時期を後退させる向きもいるようだ。9月FOMCまではまだ時間があり、米雇用統計も3回分発表になるので、現時点での判断は時期尚早とは思われる。バランスシートの縮小もあるので、正常化の過程と位置づけるのであれば、利上げはやれるときにやってしまったほうが、後々の余力に繋がる。 インフレが思ったよりも伸びが緩いこともあるが、需要も旺盛なのであろう。米国債利回りはここまで来ると、もう少し下げそうな気配もある。ただ、米10年債で2%を割り込むようだと、トランプ大統領の経済政策を無視する水準に入ってくるので、そろそろという気がしなくもない。 ちなみに、せっかくなのでドル円の200日線の話をすると、トランプ相場の影響で昨年末あたりから明確に上昇トレンドを示現している。昨年は下降トレンドが明確に示現していたが、1年を待たずに終了した。ちなみに過去30年程度を検証すると、200日線が明確にトレンド転換した場合、複数年に渡って続く傾向にある。昨年が例外だったとも言えよう。昨年が短かったので、今回も短い可能性も無きにしも非ずだが。それでも、転換してから半年程度なのでまだ、トレンドは若い。中長期で考えている投資家であれば、200日線を下回って来たら、レバレッジを落として、ゆっくり買い下がるのも一考かもしれない。 さて来週だが、注目はECB理事会であろう。政策は据え置きが確実視されているが、注目はガイダンスを出口戦略に向けて変更してくる可能性が高いことだ。恐らく変更の可能性が濃厚だが、既にその辺は織り込み済みであり、どのように変更してくるかがポイントであろう。 必要であれば、利下げや追加緩和増額の可能性を指摘した従来の文言は削除されるとの見方や、景気の「下振れ」リスクを「均衡」に変更してくるといった見方などが出ているようだ。いずれにしろ、慎重であることは強調してくる可能性は高い。上記の通り既に織り込んでいることから、変更内容次第ではユーロは一旦ピークアウトする可能性は留意したい。 そのほか、8日の英総選挙も注意したい。最新の世論調査ではメイ首相率いる与党保守党の支持率が42%、野党労働党の支持率が39%と、ここにきてその差が急速に縮まっている。波乱はないとの見方が市場ではなお優勢ではあるが、英国の選挙なので、それなりに警戒はして置きたいところではある。 ドル円の予想レンジだが、109.50~112.00を想定。スタンスは中立。 ()は前週 ◆ドル円(USD/JPY) 中期 中立継続 短期 ↓↓(↓↓) ◆ユーロ円(EUR/JPY) 中期 上げトレンド継続 短期 ↑↑(↑↑) ◆ポンド円(GBP/JPY) 中期 中立継続 短期 ↓↓↓(↓↓) ◆豪ドル円(AUD/JPY) 中期 中立継続 短期 ↓↓↓(↓) ◆ユーロドル(EUR/USD) 中期 上げトレンド継続 短期 ↑↑↑(↑↑↑) ◆ポンドドル(GBP/USD) 中期 上から中立へトレンド変化 短期 →(→) (みんかぶ「Klug」 野沢卓美)
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