きょうのNY為替市場は欧州通貨の買いが強まり、ドルは相対的に売りに押された。ドル円は前日からの買戻しの動きが続いていると思われるが、上値は重い。111.50水準を超えてくると次第に売り圧力が強まり、111.70付近で息切れする展開が何度か続いている。 トランプ大統領のロシア疑惑に対する市場のリスク回避的な雰囲気は落ち着いているものの、為替市場ではそれが欧州通貨買いにつながっている。短期筋の中にはドル円を売って欧州通貨に乗り換える動きが出ているのかもしれない。 NY時間の序盤には110円台を再びうかがう動きも見られていたが、米株も買い戻しが続き、原油相場も50ドル台を回復する中、下値では押し目買いも入るようだ。 きょうはブラード・セントルイス連銀総裁の発言が伝わっていた。総裁は「FOMCの想定金利軌道は積極的過ぎる可能性」とやや利上げに慎重ともとれる発言をしていた。一方、バランスシート縮小には積極的なようで、「始めるべきだ」と述べていた。 先日も同様の発言をしており、市場の驚きは小さかったようで、発言への反応は限定的となっている。CMEのFEDウォッチも6月利上げの確率は74%程度と前日の64%から上昇している。 終盤に一部報道で、「捜査当局がトランプ大統領の選挙キャンペーンとロシアとの間の疑惑の捜査で、大統領に近いホワイトハウスの高官を容疑者として監視体制に入った」と報じていた。ドル円も売りの反応を見せたが、米株に下押す動きが無かったことから111円台はサポートされている。 一方、トランプ騒動が落ち着く中、欧州通貨買いが活発化しており、ユーロは対ドルで上昇が続き、1.12ドル台に上昇している。仏大統領選でマクロン氏が勝利して以降、欧州の政治リスクへの不透明感が後退している。ドイツでも秋の総選挙に向けてメルケル首相が優勢となっているようだ。 そのような中、ECBの出口戦略への期待がユーロを押し上げているが、さすがにこのところの急ピッチな上昇による過熱感も出ており、過熱感を示すテクニカル指標であるRSIは買われ過ぎの70の水準を上回ってきている。ユーロドルは1.12台を回復したものの、更に上値を追う動きにまではなかった。 ECBの出口戦略への期待が高まる中、量的緩和の拡大ペース縮小により、市場が混乱する「テーパー・タントラム」の可能性を指摘する声も出ている。2013年にFRBが量的緩和の拡大ペース縮小を始めた際には米10年債利回りは一時3%まで急上昇していた。これと同様の現象が欧州債で発生した場合、利回り格差からユーロは買い圧力が強まる可能性があるという。 なお、ポンドドルも買いが優勢となり、1.30台に再び上昇し、ポンド円も145円台まで上昇した。ポンド円は21日線がサポートされた格好となっており、上向きの流れが続いている。 みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
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