【来週の注目材料】CPI前年比+3.6%見込み、節目越えもさらに上昇~米消費者物価指数

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 12日に4月の米消費者物価指数(CPI)が発表されます。

3月の米CPIは前月比が+0.6%と2012年8月以来となる高い伸びを示しました。新型コロナワクチン接種の進展で、個人の消費活動が活発化。政府の財政支援策での需要拡大もあり、物価を押し上げられる格好となりました。
NY原油の上昇もあってガソリンの小売価格が上昇(EIA調査による全米全種平均価格は2月の1ガロン当たり2.501ドルから2.810ドルへ12.4%高、CPIでの計算ベースでも前月比9.1%の上昇)したことも、物価上昇に寄与した形です。
変動の激しい食品やエネルギーを除いたコア部分でも+0.3%としっかり伸びています。家賃や自動車保険料の上昇などが寄与。コロナ禍の落ち着きを受けてリクリエーション関連の需要が伸びて価格を押し上げたところも見られました。
前年比では2018年8月以来となる+2.6%とこちらも好結果に。パンデミックが始まったことで、比較対象先である2020年3月の物価が弱めに出ていたことも、前年比を押し上げています。
米国のインフレターゲットの対象はCPIではなく、PCEデフレータですが、変化傾向は似通るため、発表が早いCPIに注目が集まります。実際3月のPCEデフレータも前年比2.3%と、CPI同様に2018年8月以来の高水準となりました。

米FRBは一時的にインフレがターゲットである前年比2.0%を超える可能性に言及しており、その状況でも現行の緩和政策を維持する方針を示しているため、こうした物価の上昇の相場への影響は限定的なものにとどまっています。
ただ、隣国カナダが先月の中銀金融政策会合で量的緩和の縮小を発表。さらに今月6日の英中銀金融政策会合(MPC)で、英中銀が量的緩和における週ごとの債券購入額をそれまでの44億ポンドから34億ポンドに減額(英中銀は運用上の変更であり政策スタンスの変更ではないと主張)するなど、世界的に量的緩和策の見直しが広がる中で、米国も今後のテーパリングに向けた動きが市場の注目事項となっています。
物価の上昇はテーパリングに向けた動きに追い風となるため、当面は米物価動向への注目が高まりそうな状況となっています。

今回の予想は前月比+0.2%、前年比+3.6%。3月から4月にかけてはガソリン価格の上昇が緩やかになっていること(EIA調査で2.810ドルから2.858ドル)や、前回があまりにも高かったこともあり、前月比では落ち着いた水準ですが、プラス圏を維持。前年比は節目となる2.0%どころか3.0%も超えての大幅上昇が見込まれています。これはパンデミックを受けたロックダウンが全米各地で本格化したことにより、比較対象である2020年4月の物価がかなり弱くなっていたこと(前月比で-0.8%)が要因です。食品とエネルギーを除いたコアは前月比が3月分と同水準に+0.3%、前年比が+2.3%の予想になっています。コアでも前年比は2.0%を超えてきました。

比較対象元がかなり弱かったという特殊事情もあり、予想前後の数字となった場合の市場の反応は限定的にある可能性があります。ただ、インパクトとして前年比3.6%はかなりのものだけに、ドル買いが強まる可能性も。

なお、市場では参加メンバーによる経済見通し(SEP)が発表される回にあたる次回6月15日、16日のFOMCか、8月後半に開催予定のカンザスシティ連銀による経済シンポジウム(いわゆるジャクソンホール・シンポジウム。ジャクソンホールでの開催ではなく昨年同様にオンラインになる可能性はありますが)において、パウエル議長から今後のテーパリングに向けた動きが発表される可能性を意識しています。物価の力強い上昇はこうしたテーパリングに向けた市場の期待感を後押しする形で、ドル買いにつながる可能性があります。 
 
 翌13日の米生産者物価指数(PPI)、14日の米小売売上高、鉱工業生産(いずれも4月)なども合わせて要チェックです。PPIはCPI同様に前年比+5.8%、同コア前年比+3.7%とかなり高めの予想に。前回10か月ぶりの高水準となる前月比+9.8%となった小売売上高は、さすがに伸びが鈍るものの前月比+1.1%が見込まれています。

MINKABU PRESS 山岡和雅

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