S&P500 月例レポート ― 7月は最高値を7回更新、経済再開が焦点に (2) ―

配信元:株探
著者:Kabutan
●バイデン大統領と政府高官

 ○世界共通の最低法人税率を設定するという米国の提案は、国際課税ルールの見直しの一環として130ヵ国から支持を受けました。本来であれば、現在は詳細な制度設計と、署名に向けた準備が進められているところですが、実際には自らの利害を守りたいとの思惑から各国で反発が予想されます。

 ○上院予算委員会の民主党議員は、3.5兆ドル規模の人的インフラ計画で合意しました(バイデン大統領は4兆ドル、民主党の進歩派は6兆ドルを提案)。同計画は共和党の支持がなくとも可決する可能性があります。

 ○これとは別に、上院は1兆ドル規模のインフラ法案の審議入りをめぐり、賛成67、反対32で可決しました。これにより歳出は新たに5480億ドルが追加されることになります。今回の採決と政治基調から判断すると、法案は最終的に可決される見通しです。

●新型コロナウイルス関連

 ○変異ウイルスの感染拡大が続いています。大半はワクチン未接種者ですが、接種済みの人でも感染が確認されています。

 ○英国は、ワクチン接種済みの感染者数が1週間で85%増加したことを明らかにしました。

  ⇒英国は「フリーダム・デー」と称し、新型コロナウイルス関連の規制をほぼ全面的に解除しましたが、国内の感染者数は急増し(1日当たり5万人超)、ジョンソン首相は濃厚接触者に該当するとして自主隔離を行い、米国は英国への渡航警戒レベルを引き上げました。

 ○東京オリンピックが7月23日~8月8日に予定される中、東京都は4回目となる緊急事態宣言を発出しました。

  ⇒2020年から延期された東京オリンピックが、17日間の日程で開幕しました。開会式では、世界各国から集まった大勢の参加者や観客、要人といういつもの光景はありませんでした。オリンピックが終了する8月8日以降まで東京都には緊急事態宣言が発出され、感染者数が急増する中、日本人のうちワクチン接種が完了しているのは人口の27.2%(1回接種は38.3%)にとどまることから、試合は無観客で行われます(一部を除く)。

 ○フランスは、ワクチン未接種者が公共のイベントに参加することを制限し、イタリアも同様の措置を導入しました。

 ○米国では、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長が、ウイルス感染が「間違った方向」に進んでいると指摘しました。CDCはワクチン接種完了者もマスクを着用し、学校(幼稚園から高校まで)では全員がマスクを着用するよう推奨しました。

  ⇒ロサンゼルスは米国の主要都市で初めて、ワクチン接種の有無に関係なく屋内でのマスク着用を再び義務化し、フィラデルフィアとニューオリンズもこの動きに追随しました。9月に新学期が始まった後の児童のマスク着用をめぐっては、地域によって対応が分かれています。

  ⇒ロサンゼルスとニューヨーク市は域内で働く公務員に対し、ワクチンの接種または毎週のPCR検査を義務化しました。

  ⇒バイデン大統領は全ての連邦政府職員を対象に、ワクチン接種またはマスクの着用と定期的なPCR検査を義務化する意向を明らかにしました。ワクチン未接種者の移動制限の強化も発表されたほか、大統領は地方政府に対し、ワクチンを接種する人に100ドルを支給するよう要請しました。

 ○職場復帰のスケジュールは壁にぶつかっており、アップルは感染者数の増加を受け、オフィス再開を少なくとも1ヵ月延期して10月にすると発表しました。国内のアップルストアは営業しており、スタッフも出勤しています。アルファベットCも同様で、オフィス再開の予定を当初の9月1日から10月に延期し、ワクチン接種を出社の条件にすると発表しました。

 ○ファイザーは米食品医薬品局(FDA)に対し、新型コロナウイルスワクチンのブースター(追加免疫)接種の認可を1ヵ月以内に申請する意向を明らかにしました。

 ○新型コロナウイルスの治療薬と治療法、そして夢の万能薬

  ⇒現時点で、世界全体で37億4000万人が1回以上のワクチン接種を受けました(5月末時点では17億4000万人、4月末時点では11億人、3月末時点では5億7400万人、2月末時点では2億2500万人)。

   →米国では現時点で、3億4400万人が1回以上のワクチン接種を受けました(同2億8900万人、同2億3700万人、同1億4800万人、同6830万人)。

    ・人口の57.2%(5月末時点では49.4%、4月末時点では43.3%)が少なくとも1回は接種したことになり、人口の49.4%(同39.3%、同30.0%)が2回の接種を終えました。

  ⇒米国の1日当たり接種回数の7日平均は62万回に低下しました(5月末時点では170万回、4月末時点では263万回、3月末時点では277万回、2月末時点では131万回)。これはワクチン接種希望者の人数が減少しているためです(供給は十分にあります)。

●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

 ○6月15-16日開催のFOMCの議事録によれば、米連邦準備制度理事会(FRB)は予想を上回る物価上昇を受け、資産買い入れのペース(現在は月間1200億ドル)について、住宅関連の証券を中心に予定より前倒しで縮小することについて議論した模様です。

 ○パウエル議長は下院金融サービス委員会の公聴会で証言し、インフレの上昇は緩やかながら高い状態が続くとみられるが、資産買い入れの縮小は「まだ先の話」だと述べました。インフレに関しては、FRBは必要に応じて行動(利上げ)する意向だが、現時点においてインフレはなお一過性と思われるとの見方を強調しました。

 ○動画投稿アプリTikTok(ティックトック)を運営する中国のByteDance(バイトダンス)は、中国政府からデータセキュリティ上のリスクへの対応を求められたことを受け、IPOを延期しました。

 ○FOMCが開催され、金融政策に大きな変更はありませんでした。経済状況に進展があったとした上で、月額1200億ドルの資産買い入れの縮小について議論を開始することが示されました。FRBは、インフレが予想を上回るペースで上昇したことを認めましたが、依然として一過性であるとの見方を維持し、そうでないことが確認された場合には、この問題に対処するとの意向を示しました。

●IPOおよび「空箱」SPAC

 ○ドーナツチェーンを運営するクリスピー・クリームが再上場し、公開価格は17ドルで、21.69ドルまで上昇した後、15.96ドルで月末を迎え、時価総額は26億ドルとなりました。同社がニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した2001年5月17日(クリスピー・クリームは2000年にナスダックで株式を公開し、2016年に非公開化しました、筆者は1977年5月17日にS&Pに入社しました)、筆者が同社のドーナツを2ダース買ってオフィスに持参すると、あっという間になくなりました(最近はコロナ太りのため、ドーナツは食べないようにしています)。

 ○中国政府は、6月末に上場した配車アプリのディディ・グローバルADRに対する調査を開始し、同社のアプリを新たにダウンロードすることを禁止しました。

 ○動画投稿アプリTikTok(ティックトック)を運営する中国のByteDance(バイトダンス)は、中国政府からデータセキュリティ上のリスクへの対応を求められたことを受け、IPOを延期しました。

 ○投資アプリを手掛けるロビンフッド・マーケッツは、IPOにより株式を公開しました。株価は公開価格の38ドル(当初の目標価格は38~42ドル)から40.25ドルまで上昇した後、33.25ドルに下落し、35.15ドルで7月を終え、時価総額は290億ドルとなりました。

 ○今後も活発なIPOが見込まれます:

  ⇒地域SNSを運営するNextdoor(ネクストドア)はSPAC(特別買収目的会社)のコースラ・ベンチャーズ・アクイジションとの合併を通じて上場を計画しており、企業評価額を43億ドルと見込んでいます。

  ⇒デジタル貯蓄・投資アプリを運営するAcorn(エイコーンズ)はSPAC経由での上場を計画しており、企業評価額を22億ドルと見込んでいます。

  ⇒英国のオンライン中古車販売会社Cazoon Holdingは、SPAC経由で上場することを明らかにしました。上場時の企業評価額を80億ドルと見込んでいます。

  ⇒未公開のリチオムイオン電池メーカーEnovix(エノビックス)はSPAC経由での上場を準備しており、当初評価額11億ドルを見込んでいます。

  ⇒イスラエルのデジタル取引プラットフォームのeToro Group(イートロ・グループ)はSPAC(FinTech)経由で上場すると発表しました。時価総額100億ドルを見込んでいます。

  ⇒東南アジアでライドシェア、フードデリバリー、送金のアプリを運営しているGrab Holdings(グラブ・ホールディングス)はSPAC経由で上場することを発表し、企業評価額を400億ドルと予想しています。

  ⇒EVメーカーLucid Motors(ルシード・モータース)はChurchill Capital Corp IVとの合併を通じて上場を計画しています。

  ⇒シェアオフィス大手のWeWork(ウィワーク)が再び上場を計画しており、上場時の企業評価額として90億ドルを見込んでいます。これに対して、パンデミックにより労働環境が変化するよりもかなり前の2019年の評価額は470億ドルでした。

※「7月は最高値を7回更新、経済再開が焦点に (3)」へ続く

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