為替相場まとめ11月14日から11月18日の週

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 14日からの週は、ドル相場の方向性が定まらない展開だった。一連の米インフレ指標の鈍化を受けたドル売りの流れは停滞している。市場では次回12月FOMCでの50bp利上げを織り込んでおり、4回連続した75bpの大幅利上げペースは終了する見込み。一方で、ブラード総裁に代表されるタカ派メンバーが米利上げのターミナルレート観測を引き上げていることがドル買い圧力となっていた。これに加えて、ポーランドにミサイルが着弾したことがリスク警戒のドル買いを誘う場面もあった。各主要通貨に対してドル相場は先週までのドル安の水準を維持しているが、一段の流れは限定的。ドル円は137円台から140円台での振幅。ユーロドルは1.03台での取引に終始。ポンドドルは一時節目の1.20台をつけたが、1.17台から1.19台での取引へと収斂した。英秋季財政報告が注目されたが、増税と緊縮財政という事前の見方を踏まえた内容だった。英予算責任局が来年の成長見通しをマイナスへと引き下げたがポンド売り反応は一時的にとどまった。


(14日)
 東京市場は、先週末のドル売りに調整が入る展開。ドル円は138円台後半で取引を開始。買い戻しの動きに早朝には139円台乗せから139.90近辺まで一気に上昇。仲値前後で売買が交錯したあと、138.80近辺まで下落。午後には再び139.60付近に上昇と激しく振幅した。ユーロドルも1.03台で振幅したあと、午後には1.03台割れへと軟化。総じてドル買いに。一方、人民元は堅調。中国のゼロコロナ政策緩和への期待が背景。ドル/人民元は7.03付近から一時7.03台前半で下落。午後にはドル買いもあって7.06台までの戻りだった。ドル主導の展開でクロス円は方向性に欠けた。ユーロ円は143円台半ばから144円台半ばで上に往って来いだった。

 ロンドン市場では、円売りが優勢。先週末のドル安や円高の動きに対して、週明けは調整が入っている。ドル円はロンドン朝方には139.50付近で値動きが落ち着いていたが、対欧州通貨や豪ドルなどでのドル売り先行とともに、クロス円に買いが入った。ドル円は140円台乗せから140.74近辺へと高値を伸ばしている。欧州株が堅調に取引されるなかで、ポンド円は163円台後半から165円台半ばまで、ユーロ円は143円台後半から144円台後半へと上昇。一方、先週の急速なドル安のあとで、ドル相場には買戻しの動きも散見されている。ユーロドルは1.03台半ばまで買われたあと1.03台割れへと反落、ポンドドルも1.18台前半に上昇後は、1.17台半ばへと押し戻されている。ドル円、クロス円が一貫して買われるなかで、ユーロドルやポンドドルは上に往って来いと方向性に欠けた。米中首脳会談が対面で実施され、双方とも協力的な姿勢を示した。パネッタECB理事は、引き締めは中期的な根拠に基づいて行うべきと、引き締め過ぎに警戒感を示していた。

 NY市場では、再びドルが買われた。ドル円は一時140円台まで買い戻される場面があった。ただ、終盤にかけては139円台へと上昇一服。ユーロドルは1.02台に軟化する場面があったが、その後は1.03台に戻した。ポンドドルは一時1.17台前半に下落した後、終盤には1.18付近まで買い戻された。先週の米消費者物価指数後のドル売りに、週明けは調整圧力がみられた。ウォーラーFRB理事が金利をさらに上げる必要があると警告したこともドルの買戻しにつながったようだ。この発言は少なくとも今後1週間はドル売りのペースを緩めることに貢献するとの声も出ている。市場からは、単月の数字でトレンドが決まるわけではなく、市場の楽観的な見方は時期尚早との声も聞かれた。利上げのスピードは緩めるが、最終的な金利水準には変更はないといった状況。
 
(15日)
 東京市場は、ドルがじり高となった。ドル円は前日NY終盤に139円台後半へと軟化していたが、早朝にかけては下げ渋っていた。午前中に140円台半ばまで上昇したあと揉み合いを経て、午後には140.60台まで買われている。ただ、前日海外市場での高値には届かず140円台前半に落ち着いた。ユーロドルは1.03台前半と前日NY終盤に下げた水準での揉み合い。レンジは23ポイントと値動きは限定的だった。ユーロ円はドル円とともに買われて145円台を回復した。豪ドルなどその他通貨も落ち着いた動き。中国小売売上高は弱い結果も、香港株などは堅調に推移しており、リスク動向は落ち着いている。

 ロンドン市場では、ドル売りが優勢。米生産者物価指数の発表を控えて、米10年債利回りが一時3.80%台まで低下したことに反応。市場では、先週の米消費者物価指数の伸び鈍化が強烈なドル売り反応を巻き起こしたことが想起されている面もあるようだ。このところのドル売りの流れを受けてユーロドルは1.04台前半、ポンドドルは1.18台後半へ一段と買われている。ドル円は東京市場で140円台後半まで買われたが、ロンドン朝方には一転して下落、安値を139.05近辺まで広げている。米株先物が時間外取引で反発、欧州株もやや買いが優勢。この日発表された11月ドイツZEW景況感指数は予想以上に改善した。ただ、引き続きマイナス圏は脱却できず。ZEWによると、今回の改善は早期のインフレ鈍化期待が影響しているという。G20では習主席と西側諸国首脳との会談が相次いでいる。政治的な対立を封印し、経済優先ムードが醸し出されているようだ。

 NY市場では、ドル相場が下に往って来いとなった。序盤はリスク選好の雰囲気が広がり、米株高、米国債利回り低下の中、ドルは戻り売りが再び強まった。この日発表の10月の米生産者物価指数(PPI)が予想を下回ったことで、ドル売りの動きが加速し、ドル円は137円台に一時急落。ただ、急ピッチな下落に過熱感も出ており、その後は139円に急速に戻した。ロシアのロケット弾がNATO加盟国のポーランドに着弾し、2人が死亡したと伝わった。ポーランドのモラウィエツキ首相は、臨時の国家安全保障会議を招集。このニュースをきっかけに一気に市場はリスク選好の雰囲気を後退させたことも、ドル買い戻しを誘った。ユーロドルは1.0480近辺まで上昇したあと、1.02台まで一時下落。ポンドドルも序盤に1.20台を付ける場面があったが、短期的な過熱感もあって1.18台へと急速に伸び悩んだ。
 
(16日)
 東京市場では、ドル買いが優勢。ドル円は朝方に138.70台まで下落したが、その後は反発。140円台前半まで買われた。ポーランドにミサイル着弾との報道にG7緊急会合が実施されるなど緊迫した状況が円買いを誘ったが、ミサイルはウクライナの防空システムによるものとの可能性が報じられると市場に警戒感が緩和された。ユーロ円は朝方に143.60付近まで下落したあと、145.20台まで大きく買われた。その後は144円台後半に落ち着いた。前日NY市場での下落を取り戻している。ユーロドルは1.03台で売買が交錯も、前日NY市場でのレンジ内にとどまっており、方向性に欠けた。

 ロンドン市場では、ドル売りが優勢。前日NY市場でのリスク警戒のドル買いが巻き戻される形になっている。ドル円は東京午後まで140円台に乗せる動きがみられたが、その後は売りに転じてロンドン時間には139.10台まで反落した。ユーロドルは地理的に近いこともあって堅調な動き。1.03台半ばから1.0438近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルは1.18台で方向性なく上下動していたが、ロンドン序盤には1.1942近辺まで買われた。ただ、前日に1.20の節目水準に乗せたあとは上値が重い印象。この日発表された10月の英消費者物価指数は前年比+11.1%と41年ぶりの高い伸びとなった。また、スナク英首相は、インフレに断固とした行動取る必要とした。ただ、いずれにもポンド買いの反応は乏しかった。デギンドスECB副総裁は、インフレを目標に収束させるため、金融政策の正常化を続けると述べた。ジョージ・カンザスシティー連銀総裁は、来年の利上げペースを鈍化させること理にかなう、としながらも、真の問題は利上げ終了が早すぎることであろう、やるべきことはまだ多くあると述べた。インフレ指標の伸び鈍化傾向も、市場が楽観的になる過ぎることを戒める面があったようだ。

 NY市場は、方向性に欠けた。10月米小売売上高は前月比1.3%増と予想を上回った。強めの結果となったことで、先週の米物価統計を受けたドル売りの一服感につながったようだ。FRBのスタンスを複雑にする内容との指摘がでていた。ただ、一部からは小売の好調は消費者が早めのホリデー・ショッピングを行った影響との指摘もあった。この場合、11月と12月の支出を奪うとみられている。ユーロドルはロンドン時間に1.04台まで上昇したが、NY時間にかけては1.03台へと値を落とした。ECB理事からは12月理事会では75bpではなく、50bpの利上げを支持しているとの見方が報じられた。ポンドドルは戻り売りが優勢となり、1.18台へと反落した。この日発表された英消費者物価指数は41年ぶりの高水準だったが、英中銀の利上げ期待が高まった様子はみられず。短期金融市場では12月利上げ幅観測は50bpと75bpの中間で推移している。 市場からは、高インフレの半面、弱い経済成長という要素を考慮すると、ポンドは引き続きアンダーパフォームが予想されるとの指摘も。

(17日)
 東京市場で、主要通貨はレンジ取引が続いた。ドル買い・円買いが先行。中国で1日当たりの新規感染者数が2万人を超え、ゼロコロナ政策の緩和期待が後退したことが背景。ユーロドルは1.04手前から1.0360前後を付け、ドル円も昼過ぎにかけて139.80付近まで上昇した。ドル/人民元は中国市場オープンからさらに上昇。7.14台までドル高・元安が進んだことがドル高につながった面も。午前9時半に発表された豪雇用統計はかなり強い内容も、豪ドル買いは進まず。この背景にも中国懸念があるとみられる。豪ドル/ドルは0.6750手前が重くなり、その後0.67割れに。午後にはロンドン勢の本格参加を前に一転してドル売りが広がった。ドル円は昨日の140円台での重さが意識されており、売りが出やすい展開となった。ユーロドルも1.0380台まで買い戻しが入った。

 ロンドン市場では、ドル相場が神経質に振幅。米債利回りの上下動に反応しながら、序盤はドル売り、その後ドル買いへと転じている。この日はハント英財務相が英秋季財政報告(財政計画)を発表。所得税増税、エネルギー会社の過剰な利益に対する大幅課税などが盛り込まれた。ほぼ想定された内容となっている。英OBR(予算責任局)のGDP予測が来年にマイナス1.4%と従来のプラス1.8%から引き下げられたことにポンドは売りの初動反応を示したが、すぐに一服した。ポンドドルは序盤に1.19付近から1.1950台まで上昇。その後は売りに転じると1.18台半ばへ下落。英財政報告で一時1.1802近辺まで一段安も、その後は下げ渋っている。ユーロドルは序盤に1.04台乗せへと買われたあと、売りに押されて1.03台前半へと反落。ドル円は139円台半ばから一時138円台後半まで下落も、その後は140円台をつけるなど反発した。米10年債利回りは3.67%台から3.74%台で上下動しており、上昇の動きが優勢だった。欧州株や米株先物は総じて軟調に推移している。ユーロ圏消費者物価指数・確報値は前年比+10.6%と速報から0.1%ポイント下方修正されたが、過去最高水準であることに変わりなかった。

 NY市場では、ドル買いが優勢。FOMC内でもタカ派の急先鋒として知られるブラード・セントルイス連銀総裁が「政策金利はまだ十分に制限的と見なされるゾーンにはない」と述べたうえで、ターミナルレート(最終着地点)の5-7%のレンジにも言及したことが、米国債利回り上昇と伴にドルの買い戻しを誘った。5.00-5.25%は最低水準だとも述べていた。ドル円は140円台を回復すると、一時140.80付近まで買われた。ユーロドルは1.0300付近まで下落。今日の下げで200日線で上値を阻まれた格好となった。ポンドドルも戻り売りが強まり、一時1.17台に下落。きょうはハント英財務相が秋季財政報告を議会に提出した。インフレ抑制に向けて、ここ10年で最大規模の増税案と歳出削減を打ち出している。大方、事前に伝わっていた内容と同じだったものの、ポンドは軟調な反応が見られた。対ドルのみならず、対ユーロでも下落。市場では英インフレが高く、今後も英中銀は利上げを継続することが予想されるものの、同時にリセッション(景気後退)への警戒感も強まっていることから、英インフレ指標の強さの割には、英中銀はこれまでのような積極利上げはできないと見ているようだ。

(18日)
 東京市場は、円買いの動きが優勢。ドル円は朝方に140円台半ばまで買われたが、その後は売りに転じている。北朝鮮のミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落ちた可能性との報道を受けてリスク警戒の円買いが広がり、昼過ぎに139.65レベルを付けた。その後はロンドン勢の本格参加を前に一時140円台を回復。ユーロ円は145円台半ば超えまで買われたあとは、145円台割れまで下落。ポンド円は166.80付近を高値に166.30付近へと軟化した。ユーロドルは1.03台後半で方向感なく推移した。
 
 ロンドン市場では、売買が交錯し方向性が見出しにくい展開。今週の一連のイベントを通過して、きょうはそれほど注目に値するような経済指標の発表予定はない。前日のNY市場ではタカ派として知られるブラード・セントルイス中銀総裁がターミナルレートを5-7%と示唆したことがドル買いを誘った。一方、きょうは比較的ハト派とみられるコリンズ・ボストン連銀総裁のイベントあいさつを控えており、前日のドル買いに調整の動きが入る面もあるようだ。米10年債利回りは3.74%から3.82%で振幅しており、明確な方向性を示していない。欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移。ドル円は139円台後半に下押しされたあとは140円台前半まで反発も、再び139円台後半と上に往って来い。ユーロドルは前日終値1.0362レベルを軸として1.0350割れ水準から1.04台手前までの上下動が続いている。ポンドドルはやや底堅い動きで1.18台後半でサポートされると一時1.1950付近まで上昇。その後も1.19台で取引されている。ユーロ円は145円台前半、ポンド円は166円半ばから167円台乗せで上に往って来い。

 NY市場は方向感のない展開が見られ、ドル円も140円付近での上下動に終始した。終盤にはやや買いが優勢となったものの、全体的には様子見気分が強い。FOMC内でもタカ派の急先鋒として知られるブラード・セントルイス連銀総裁の発言で、市場はFRBの早期政策転換への期待を後退させ、ドルは戻り売りを一服させている。一方、米インフレにピークの兆候も見られる中で、従来のドル買い戻しを強める気配までは見られていない。そのような中で、次のきっかけ待ちの雰囲気も広がっているようだ。

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