為替相場まとめ11月28日から12月2日の週

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 28日からの週は、ドル売りが広がった。これまでも一連の米物価指標の伸び鈍化やセンチメント系指標の弱い結果などでドル売りに傾いていたが、今週はパウエルFRB議長講演で、次回12月FOMC会合での利上げ幅縮小見通しが示されたことがドル売りの決定打となった。米債利回りの低下とともにドルが下落、ドル指数は明確に200日移動平均線を下回った。週明けには、中国での感染拡大のなかで、厳しいコロナ規制に対する抗議デモが市場に不安感を与えた。株安やリスク警戒のドル買いにつながる場面がみられた。しかし、衛生当局がコロナ規制の行き過ぎを是正する姿勢を示し、感染による死者数が落ち着いたこともあってリスク警戒の動きは収束した。市場全般にドルが売られやすい状況となる面もあったようだ。週末には注目の米雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数(NFP)は26.3万人増と予想(20万人増)を上回ったほか、失業率も3.7%と前回と変わらずに歴史的な低水準が続いている。平均時給も前月比0.6%の上昇と予想(0.3%上昇)の2倍の上昇となった。インフレ抑制を目指すFRBにとって労働需要は依然としてタイトであることが示された。

(28日)
 東京市場は、円高の動き。中国での新型コロナ感染拡大、抗議活動の高まりなどを受けてリスク回避の圧力が広がった。香港株などが大幅安となっている。ドル円は朝方につけた139.50手前を高値に138.34近辺まで大幅下落。米債利回り低下も売りを誘った。ユーロドルは1.04台から1.0341近辺まで、ユーロ円は145円手前から143.25近辺まで大きく下げた。豪ドルは、10月の豪小売売上高が予想外にマイナス圏となり豪ドル売りが出たところに、最大の輸出先である中国の懸念が広がる形で下げが加速。豪ドル/ドルは0.67台半ば手前から0.6666前後まで、豪ドルは93.70台から92円台半ば割れまでの下げとなった。

 ロンドン市場では、ユーロ買い主導でドル安が継続。今週のユーロ圏消費者物価指数の発表を控えて、市場では12月ECB理事会での大幅利上げへの思惑が広がっているもよう。この日はクノット・オランダ中銀総裁やカジミール・スロバキア中銀総裁が高インフレ継続に対する警戒感を強めていた。ユーロドルは1.03台半ばから1.04台後半へ、ユーロ円は143円手前から144円台半ばへと上昇。対ポンドでのユーロ買いも広がっている。また、アジア・東京時間からのリスク回避の動きも継続。欧州株や米株先物が下げている。ドル円は東京市場からの売り圧力が継続し、一時137.50近辺まで安値を広げた。クロス円はユーロ円以外は上値を抑えらえられている。ポンド円は166円台、豪ドル円は92円台、NZドル円は86円付近と、東京市場からの安値圏を踏襲している。ただ、足元では下げ渋りの動きもみられており、中国政府によるゼロコロナ政策の緩和への期待も一部にはでてきているもよう。

 NY市場では、一転してドル買い戻しが加速。今週は重要イベント目白押しの週だが、それを巡ってタカ派的な観測も出ている模様。ドル円はロンドン時間に137円台半ばまで下落したが、NY時間に入ると一時139円台まで買い戻されている。一方、中国で実施されているゼロコロナ政策に対して北京や上海などの大都市で大規模な抗議活動が続いており、それを嫌気した円高の動きも出ており、ユーロ円やポンド円といったクロス円は下落している。ユーロドルは1.03台前半まで下落し、200日線を割り込んだ。ポンドドルはロンドン時間に1.21台まで上昇していたが、1.20台を割り込むと1.19台半ばまで下落した。200日線が控える1.2175付近が上値のポイント。

(29日)
 東京市場では、ドル売りが優勢。中国で29日の新型コロナの新規感染者数が6日ぶりに前日比減少に転じたことや、中国各地で行われていた大規模デモが収束したことが背景。さらに、中国衛生当局が午後4時に会見を行うとの報道が、ゼロコロナ政策緩和への期待感となりドル全面安につながったようだ。ドル円は139.30台まで買われたあと、138.40台まで下落。ただ、クロス円の下支えがあり、下押しは限定された。ユーロドルは1.0330台から1.0390台まで上昇。ユーロ円は143.30台から144円台乗せまで買われた。豪ドル/ドルは0.6640前後から0.67台乗せまで買われたあと、高止まりに。人民元が買われた。前日の下落を戻して、ドル/人民元は7.21付近から7.15台まで下落。

 ロンドン市場では、ドル売りが優勢。ドル円は137.87レベルまで本日の安値を広げた。東京市場で一時3.72%付近まで上昇した米10年債利回りは、ロンドン時間に入ると3.64%台まで低下した。中国衛生当局は高齢者向けワクチン接種の強化を示した。市場では経済再開のカギとなると評価している。また、一部地方当局にみられるような過剰かつ一律的なコロナ規制に苦言を呈したことも市場に好感されたようだ。豪ドルなどオセアニア通貨が買われており、ドル売り圧力に波及した面も。 ただ、ユーロドルは1.03台後半で売買が交錯しており、ドル安方向には傾斜せず。ポンドドルは1.19台後半から一時1.2064近辺まで買われたが、その後は再び1.20台割れとなる場面があるなど方向性は定まらず。スペイン消費者物価指数が4か月連続の伸び鈍化となったことや、ドイツの一部州の消費者物価指数の伸びが鈍化したことが上値を重くしたもよう。英国では住宅ローン承認件数が予想を下回っており、いずれも市場の大幅利上げ観測の矛先を鈍らせていたようだ。

 NY市場では、前日のドル買いの動きが一服した。明日のパウエルFRB議長の講演と金曜日の米雇用統計の結果を見極めたい雰囲気も出ており、前日の動きに調整が入っている。中国の一連の報道で前日のリスク回避のドル買いが一服した面も指摘される。ドル円は一時137円台まで下押しされた。ユーロドルは下げ一服も、上値は重い。買い戻しの雰囲気まではでていない。あすのユーロ圏消費者物価速報値が注目されている。12月ECB理事会での利上げ幅については50bpと75bpに分かれており、やや50bpが優勢。ポンドドルは一時1.20台を回復したが、その後は1.19台での推移となった。英インフレの高さと経済見通しの弱さを背景に、英国債利回りは逆イールドが続いており、ポンドの重石となっている。投資家は英中銀がインフレ抑制するために12月に0.50%ポイント、2月にさらに0.50%ポイントの利上げを行うと予想している。
 
(30日)
 東京市場は、小動き。月・火とドル相場が振幅したあと、今晩のパウエルFRB議長講演を控えて様子見ムードが広がった。12月の米FOMCを控えて、今週土曜日からブラックアウト期間に入る。その前のパウエル議長講演に市場の注目が集まっている状況。ドル円は139円手前から138円台半ば割れまで下落したあとは138円台後半での揉み合いに。ユーロドルは1.0319近辺まで下落したあと、1.0360付近まで反発。ユーロ円は143円台前半から半ばでの揉み合い。豪ドル/ドルは0.66台後半から0.67台乗せ水準までの推移。中国で連日の新型コロナの新規感染者数減少を記録も、北京・上海など主要都市圏では増えるなどまちまちの状況。

 ロンドン市場では、円安・ドル安の動き。ドル円は一時139円台に乗せた。ユーロ円は143円台前半から一時144円台乗せ、ポンド円は165円台半ばから167円手前まで買われた。クロス円の上昇にユーロドルは一時1.0381近辺、ポンドドルは1.2029近辺まで高値を伸ばした。中国の広州市の一部地区でロックダウン措置の解除が報じられており、経済再開への期待が高まっている。香港株が大幅高となった流れを受けて欧州株も堅調に推移、リスク選好ムードが広がっている。11月ユーロ圏消費者物価指数速報値は前年比+10.0%と前回の+10.6%から予想以上に伸びが鈍化した。インフレピークアウトの兆候として市場に好感された面も。ただ、ECBの利上げペース緩和観測にもつながることから、ユーロ相場は対ポンドや対スイスフランなどでは売りに押されている。取引中盤にかけては、パウエルFRB議長の講演待ちでやや円安・ドル安の動きに調整が入っている。

 NY市場では、取引後半のドル売りが強まった。午後にパウエルFRB議長の講演が伝わり、ドルは前半の上げを失う展開となった。 議長は「利上げペースを緩める時期が早ければ12月に来るかもしれない」と述べたほか、「金利のピークは9月の予測よりも幾らか高い可能性が高い」とも語った。全体的には前回のFOMC後の会見とトーンは同じであるものの、具体的に12月に言及してきたことで、市場は12月FOMCでの50bpの利上げ期待を高めている。CMEのFEDウォッチでは確率が75%まで一時上昇。前日は65%程度だった。ドル円は140円台をうかがう動きがみられていたが、パウエル議長講演を受けて一時137円台まで急速に下落した。ユーロドルは前半に1.03台割れとなる場面があったが、後半には1.04台を回復。ポンドドルは一時1.19ちょうど付近まで下落していたが、一気に1.20台後半まで上昇した。きょうは英中銀のチーフエコノミストのピル委員の講演が伝わっていたが、EU離脱も英国の高インフレの一因との見解を示していた。

(1日)
 東京市場は、ドル安の流れが継続。ドル円は前日に137円台まで下落したあと、138円台を回復して取引を開始。東京勢は再びドル売りを強め、NY安値を割り込むと午前中に136円台半ばまで下落。その後は137円付近が重くなり、午後には136.21近辺まで一段安となった。ユーロドルは1.04ちょうど付近で取引を開始。午前中に1.0440台、午後には1.0451近辺まで上昇。ドル主導の展開ながら、ドル円の下げが一番きつかったこともあり、クロス円は重い。ユーロ円はパウエル発言前の144円台後半から143円台半ば割れまで値を落として東京朝を迎えた。東京市場午前に142円台半ば割れ、午後に142.30前後まで値を落とした。

 ロンドン市場でも、ドル売りが継続。ロンドン序盤にはドル円は135.84近辺、ユーロドルは1.0464近辺までドル売りが進行。その後は米債利回りの低下に調整が入り、ドル円は136.66近辺、ユーロドルは1.0394近辺までのドル買戻しがみられた。しかし、米10年債利回りが再び低下、一時3.59%台に低下して2か月ぶり低水準となると再びドル相場の上値が抑えられている。この局面ではポンドドルの上昇が目立っており、1.2164近辺に高値を伸ばしている。200日線を上回る動きとなっており、今後上昇に弾みがつく可能性も指摘される。英中銀調査によると、英企業はインフレ率について、1年後に7.2%、3年後に3.9%と予測しており、根強いインフレ警戒感が示されていた。ユーロ圏や英国の11月製造業PMI確報値は引き続き50割れ水準低迷した。一方、10月ユーロ圏失業率は6.5%と過去最低水準に低下している。

 NY市場では、さらにドル売りが進行。11月のISM製造業景気指数が発表され、49.0と景気判断基準である50を割り込んだ。前日のパウエル議長の講演を追認する内容だが、米株式市場が下げ幅を拡大する反応を見せたことがむしろ、ドル円を圧迫していた面もありそうだ。ドル円は135円台前半まで下落。ユーロドルは1.05台を回復、200日線を上放れている。ポンドドルは一時1.23台まで上げ幅を拡大する場面がみられた。今日の上昇で200日線を上回っており、テクニカル的にも上昇シグナルが点灯しそうな状況に。もっとも、ポンドドルの場合は英固有の材料よりも、米国の材料に動きを依存させている。その意味でも明日の米雇用統計に対する市場全体の反応は注目される。この日は、FRBがインフレ指標として参照している10月のPCEデフレータも発表になっていたが、前月比の伸びが市場予想を下回っていた。ただ、個人消費支出は伸びが加速しており、FRBが利上げを継続する中でも、景気後退を引き起こすことなくインフレを抑制できるとの期待を生じさせる内容ではあった。

(2日)
 東京市場では、ドル安傾向が継続。ドル円は米債利回りの低下とともに、朝方に135.05近辺まで下落した。その後は仲値にかけて本邦輸入勢などからドル買いが入り、135.60付近まで反発。その後は再び売りが優勢となって、135.01近辺に安値を広げた。大台割れには至らずも、上値の重さが示された。ユーロドルは前日からの高値水準を維持。朝方に1.0539近辺に高値を伸ばし、その後は1.05台前半に高止まりしている。ユーロ円は142円台半ばが重く、一時142円台を割り込んだ。その後は142円台前半で落ち着いた。日経平均が下落しており、リスク回避の円買いの動きも散見された。

  ロンドン市場では、ドル円が大幅下落。東京市場では135円手前で揉み合っていたが、ロンドン朝方に135円台割れとなると動意付いた。テクニカルポイントとして注目される200日線が134.50付近に位置しており、この水準を下回ると下げが加速。一時133.63近辺まで安値を広げた。8月16日以来の安値水準となった。米雇用統計発表を前に、ポジション調整の動きが強まった格好だ。クロス円も総じて円高方向に振れた。ユーロ円は140円台後半、ポンド円は164円手前まで下落。米債利回りの上昇が一服し、ドル相場はややドル安の動きをみせたが、ユーロドルは1.05台半ば、ポンドドルは1.32手前までの小動き。10月ユーロ圏生産者物価指数は前月比-2.9%、前年比+30.8%と前回および市場予想を下回ったが、特段の反応はみられず円相場以外は様子見となっている。

 NY市場でドルは上に往って来いの展開となった。朝方はこの日発表になった米雇用統計が予想以上に強い内容となったことでドル買いが強まった。一時133円台まで売りが加速していたドル円も136円付近まで反転する展開。しかし、ドル買いが落ち着くと、ドルは急速に戻り売りが強まっている。ドル円も134円台前半まで伸び悩んだ。ドル売りの明確な材料は見当たらないが、米雇用統計を受けて短期金融市場では、ターミナルレート(最終到達点)の織り込みは前日の5.00%以下から5.00ー5.25%水準に上昇させている。しかし、12月FOMCでの0.50%ポイント利上げまでは見方を変えておらず、75%程度の確率を維持している状況。

このニュースの著者

MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。