プラチナ週間展望=下げ一服、米国債の利回り低下も中東情勢に対する懸念

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
             [10月16日からの1週間の展望]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   週間高低(カッコ内は日)   2024 年  8 月限  10 月 10 日〜 10 月 13 日
        始 値   高 値    安 値    帳入値   前週末比
  金           8,704     9,030 (13)    8,694 (10)      9,028        +318
  銀           103.1     107.7 (12)    103.1 (10)      106.5        +4.9
 プラチナ       4,081     4,268 (12)    4,071 (10)      4,174         +94
 パラジウム     5,600     5,600 (13)    5,600 (13)      5,600         0
======================================
  NY貴金属(カッコ内は限月)      | 東京外為・株式/NY原油
        13  日終値  前週末比  |        終 値      前週末比
  金       (12)1,941.5      +96.3   | ドル・円    149.70      0.81 円安
  銀       (12)2,289.5     +117.2   | 日経平均  32,315.99     +1321.32
 プラチナ   ( 1)  884.2       +2.7   | NY原油 (11)  87.69        +4.90
 パラジウム (12)1,145.20     -17.90  |* ドル・円は15時15分現在、原油は 13日
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【前週のレビュー】
 プラチナは米国債の利回り上昇や金・原油の急落が圧迫、とした。
 プラチナは米国債の利回り上昇が一服したことを受けて下げ一服となったが、中東情
勢の緊迫化に上値を抑えられた。現物相場は2日以来の高値897.42ドルを付けた
が、予想以上の米消費者物価指数(CPI)を受けて戻りが一服した。プラチナ先限は
3日以来の高値4262円を付けた。一方、パラジウムの現物相場は2018年9月以
来の安値1115.00ドルを付けた。
 9月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は33万6000人増となり、前月
分は18万7000人増から22万7000人増に上方修正された。事前予想の17万
人増も上回った。失業率は3.8%、事前予想は3.7%。労働市場の堅調が示され、
米10年債利回りは2007年以来の高水準となる4.89%まで上昇した。ただ過熱
感から利回り上昇は一服した。米連邦準備理事会(FRB)のジェファーソン副議長
が、インフレ率は依然として高過ぎるが、米国債の利回り上昇が景気を一段と抑制する
可能性があると述べるなどし、利上げ停止の見方が出た。9月の米生産者物価指数(P
PI)は前年比2.2%上昇し、前月の2.0%から伸びが加速した。事前予想の
1.6%上昇も上回った。米消費者物価指数(CPI)は同3.7%上昇と事前予想の
3.6%上昇を上回った。ただコア指数は同4.1%上昇と前月の4.3%から伸びが
鈍化した。一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によると、参加者の大半が
経済の先行きは依然として非常に不透明と判断していたことが分かった。金融市場の状
況や潜在的な原油価格ショック、労働組合のストライキの影響など、先行きをめぐる不
確実性の高まりが背景にある。米10年債利回りは米金融当局者の利上げ停止発言を受
けて4.53%まで低下したのち、予想以上の米CPIを受けて再び上昇した。CME
のフェドウォッチで、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率は
31.1%(前週29.8%)となっている。
 イスラム組織ハマスは7日、イスラエルを奇襲攻撃した。攻撃の背景にはイスラエル
とサウジアラビアの関係正常化の動きなどがあるとみられている。イスラエルは約30
万人の予備役を招集し、パレスチナ自治区ガザへの地上攻撃の準備を進めている。イス
ラエルのネタニヤフ首相は「戦争対応内閣」を組閣し、ガラント国防相は「われわれは
彼らを地球上から抹殺する」と述べた。一方、米独英仏伊の首脳はハマスのイスラエル
攻撃を非難する共同声明を発表し、イスラエルへの支持を表明した。米国は地域の抑止
力強化のため、空母「ジェラルド・R・フォード」を中心とした打撃群を地中海東部に
派遣した。バイデン米大統領は演説し、ハマスのイスラエル攻撃を「全くの邪悪な行
為」と非難した。イランは今回の攻撃への関与を否定したが、イエメンの親イラン武装
組織フーシ派とイラクの民兵組織の幹部は米国が介入した場合には米国も標的にすると
表明しており、イスラエルが地上攻撃を開始すればアラブ諸国がハマス支援に動く可能
性がある。イランがホルムズ海峡を閉鎖し、世界経済の混乱につながるシナリオも警戒
されている。
【ロンドンのプラチナETF残高が減少】
 プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、11日のロンドンで12.88トン
(前週末13.02トン)に減少、13日のニューヨークで30.64トン(同
30.64トン)、12日の南アで11.99トン(同11.99トン)と変わらずと
なった。またパラジウムETFの現物保有高はロンドンで3.27トン(同3.27ト
ン)と変わらず、ニューヨークで5.72トン(同5.58トン)に増加、南アで
0.27トン(同0.27トン)と変わらずとなった。ロンドンのプラチナETF残高
が減少した。中東情勢の緊迫化を受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委
員会(CFTC)の建玉明細報告によると、10月3日時点のニューヨーク・プラチナ
の大口投機家の買い越しは2616枚(前週7326枚)、パラジウムの売り越しは
9718枚(同1万0302枚)に縮小した。
【中国の景気刺激策は下支え要因】
 中国は2023年の財政赤字拡大を容認することを検討しており、経済成長率の目標
を達成するため、景気刺激策の準備を政府が進めている。水利事業などインフラ整備に
向け少なくとも国債1兆元を追加発行する可能性について話し合っている。中国の不動
産開発大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)はオフショアの支払い義務について、期
限内または猶予期間内に全てを履行できない可能性があるとしており、不動産業界に対
する懸念が強い。実際に大型の刺激策が打ち出されれば、政府がスタンスを変えたこと
を意味する。国慶節明けの上海プラチナは出来高が1476枚まで増加し、実需筋の安
値拾いの買い意欲が強い。
当面の予定(イベント・経済統計)
16日 ユーロ圏貿易収支 2023年8月(EUROSTAT)
    米製造業景況指数 2023年10月(ニューヨーク連銀)
17日 英雇用統計 2023年9月(国立統計局)
    独景況感指数 2023年10月(ZEW)
    米小売売上高 2023年9月(商務省)
    米鉱工業生産・設備稼働率 2023年9月(FRB)
    米企業在庫 2023年8月(商務省)
    対米証券投資 2023年8月(財務省)
18日 中国国内総生産 2023年7-9月期(国家統計局)
    中国小売売上高 2023年9月(国家統計局)
    中国鉱工業生産 2023年9月(国家統計局)
    英消費者物価指数 2023年9月(国立統計局)
    ユーロ圏消費者物価指数 2023年9月確報(EUROSTAT)
    米住宅着工・許可件数 2023年9月(商務省)
    米地区連銀経済報告・ベージュブック(FRB)
19日 貿易収支 2023年9月速報(財務省)
    中国住宅価格指数 2023年9月(国家統計局)
    ユーロ圏国際収支 2023年8月(ECB)
    米製造業景況指数 2023年10月(フィラデルフィア連銀)
    米新規失業保険申請件数(労働省)
    米中古住宅販売統計 2023年9月(全米不動産協会)
20日 消費者物価指数 2023年9月(総務省)
    英小売売上高 2023年9月(国立統計局)
    独生産者物価指数 2023年9月(連邦統計庁)
    建玉明細報告(CFTC)
MINKABU PRESS 東海林勇行
※投資や売買については御自身の判断でお願いします。

このニュースの著者

MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。