コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【NY金急伸も騰勢は短命の可能性に注意】
 NY金の騰勢が続いている。NY金12月限は10月6日に1823.5ドルまで値
を沈めていたが、その後は上値を探る足取りを演じ、18日に9月1日以来の水準とな
る1975.8ドルまで浮上した。この間、152.3ドルの上げ幅を記録した。急激
なNY金の上昇に円安傾向が加わっていることでJPX東京金は急伸となり、19日に
先限は9430円まで値を伸ばし、上場来高値を更新した。
 NY,そして東京と金が急激な上昇を見せているのはパレスチナ情勢不安とその影響
による中東情勢の緊張高まりに対する警戒感が背景となっている。10月7日にパレス
チナのイスラム組織であるハマスがイスラエルに大規模な攻撃を実施したことがきっか
けとなってパレスチナ情勢不安が台頭したが、その後もイスラエル軍による報復などで
情勢が激化。さらにはガザの病院が爆撃されたことで民間への攻撃に対する非難がアラ
ブ諸国間で高まったことを受け、緊張が中東諸国全域にまで広がるとの恐れが強まって
いる。
 この緊張の高まりによって有事の際の安全資産とされる金へ意識が高まったことが前
述の急伸の背景となった。特に今回の上げ幅が急となっているのは、米国での高金利環
境の長期化観測と米長期債利回りが上昇を受けて金価格が低迷するなかで、イスラエル
とハマスの軍事衝突が前触れに乏しく不意打ちとも見られる衝突が発生したことがサプ
ライズになったことに一因がある。
 ハマスとイスラエルの対立が深まる中、バイデン大統領がイスラエルを訪問する一方
で、ハマスの軍事部門最高司令官の死亡が確認されるなど、状況は流動的で今後、早い
段階での終結に向かうことができるのか見通しには不透明感が強い。この不透明感も金
市場における買い支援要因になっているが、ロシアによるウクライナへの軍事攻撃発生
後の金市場の騰勢も約2か月程度の期間にとどまるなど、地政学不安を背景にした金価
格の上昇は短期に限られる傾向がある点には注意が必要だろう。
 18日のNY金12月限の日中取引の終値は1968.3ドルでこの日の高値197
5.8ドルからは大きく値を落としている。これで目先の買いが一巡した可能性が
高く、急伸後の反動を迎える可能性が高まっている。特にSPDRの金ETF残高はN
Y金が急騰するなかで縮小傾向を強め、18日時点では848.24トンと19年8月
20日以来の水準まで落ち込んでいることは、価格急騰場面が人気を高めるのではなく
利益を確定の場として消化された動きを示唆しており、金への投資意欲が高まっている
可能性が高まったわけではない点に注意が必要だろう。
 米国では9月消費者物価指数(CPI)の総合の前年同月比は8月と同率の+3.
7%で事前予想の+3.6%を上回ったうえ、変動が激しいエネルギーと食料を除いた
コアCPIの前年同月比も8月の+4.3%から低下しながらも+4.1%と下げ渋っ
ている。
 さらに9月米小売売上高は予想を大幅に上回っており、高金利環境、インフレ高継続
のなかでも意欲的な消費活動が示されていることで、米国の高金利環境が長期化する可
能性がさらに高まっている。また、中東情勢不安はNY原油高を引き起こし、これが物
価上昇を招く可能性も出てきている。
 米国の9月雇用統計における非農業部門雇用者数の増加幅も事前予想を大幅に上回る
など、米雇用情勢は依然として強気を維持しているが、この強気な雇用情勢が個人消費
を支える根拠となっている。
 米国の経済指標は引き続き高金利政策を支持するものだけにNY金は地政学不安を織
り込んだ後はその反動安となる可能性もある。中東情勢の緊迫化が警戒されるところだ
が、地政学不安は材料視されてもその消化のペースは比較的速いこと、そして米経済は
依然として高金利政策を支持する状況にある点に留意しておきたい。
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