【米CPI鈍化も楽観視できない米利下げ着手】 NY金8月限は6月12日に反発に転じて28.2ドルの上げ幅を記録し2354. 8ドルと2350ドル台を回復した。6日に2400ドルに接近する上昇となったが、 7日に2304.2ドルと4月2日以来の安値までに軟化した。その後は売り警戒感か ら買い戻される動きが見られながらも米公開市場委員会(FOMC)待ちのなかで米国 の利下げ着手期待が後退したこともあり、2340ドルに近づくと上値が重くなった。 価格の低迷は、6月に入って発表された米経済指標に弱気な内容が目立ったことで利 下げ着手期待が高まりながらも、FOMC前の最注目要因となっていた米雇用統計では 非部門雇用者数の増加幅が事前予想を大幅に上回っていたうえ、平均時給の前月比は事 前予想の+0.3%を上回る+0.4%、前年同月比では前月の+3.9%を上回る+ 4.1%を記録するなど、賃金上昇率が加速化してたことが背景となっていた。 物価が上昇しても同時に賃金が上昇していれば物価高も吸収されることになるため、 インフレ率の上昇を促す要因になり兼ねない。その賃金の上昇率が5月時点で前年同月 比で4%台を記録していることは、同程度の物価の上昇があっても物価高が原因となっ て個人消費意欲が後退する可能性は低いと見られるからだ。 ただ、12日に発表された5月消費者物価指数(CPI)の前年同月比は総合で事前 予想の+3.4%を下回る+3.3%となった。また、食料とエネルギーを除いたコア CPIも前月の+3.6%、事前予想の+3.5%を下回る+3.4%にとどまった。 これを受けてインフレは緩やかな鈍化傾向にある、そして米連邦準備理事会(FRB) は9月に利下げに着手するのではないか、との見方が強まったことが金市場における強 気材料となった。 今回のCPIが米利下げ着手に対する見方を完全に楽観視させる内容ではないことに は引き続き注意が必要となっている。家賃を含めたシェルター部門は、契約の更新など の影響から市場の変化が反映されるまでに時間を要するという性質もあって依然として 5.4%と高水準を維持している。 また、シェルター以外の運輸サービス、医療ケアサービスなど賃金がその構成の大半 を占めるサービス部門においてもそれぞれの前年同月比は+10.5%、+3.1%と 高い水準を維持。 先に強気な雇用統計が発表されたことを考慮すると、今回は総合CPI、コアCPI 共に前月からは若干の低下が見られたとはいえ、米国の底堅い雇用情勢およびこれを受 けた賃金の上昇を受けてコアCPIの下げ渋りが続く可能性が高いと予想される。 特に、米連邦準備理事会(FRB)が+2.0%のインフレ率を目標としながらも、 賃金上昇率そのものがこの目標を大きく上回る水準であることは、FRBが目標とする インフレ率の達成には依然として時間がかかることを予想させる。 今回のFOMCでは24年末時点のコア個人消費支出(PCE)価格指数の見通しも 前回の+2.6%から+2.8%に引き上げられており、FRBがインフレは軟化傾向 にありながらもその見通しを前回からは鈍化させたうえ、年内の利下げ回数の見通しも これまでの3回から1回に引き下げられている。 NY金市場はCPIの鈍化に鋭い反応を見せているものの、FRBとしては米景気の 軟着陸を目指す中で利下げ着手には慎重な姿勢を取らざるを得ない状況が示されている と見られることに注意したい。 MINKABU PRESS
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