プラチナは安値もみ合い、米国の関税引き上げの行方を確認

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
 プラチナの現物相場は昨年末にかけて、米連邦準備理事会(FRB)の利下げペース
鈍化見通しや米国債の利回り上昇を受けて売り優勢となり、昨年4月以来の安値897
ドル台を付けた。年明けは中国の景気刺激策に対する期待感を受けて買い戻し主導で上
昇したが、967ドル台で上値を抑えられると、トランプ次期米大統領の就任を控えて
手じまい売りが出て上げ一服となった。
 トランプ米大統領は就任式の演説で不法移民の取り締まりなどを優先課題に挙げ、
「米国の黄金時代が始まる」と表明した。また就任初日に通商に関する覚書に署名する
としたが、当日の新たな関税措置の導入は見送るとした。ただ米大統領はメキシコとカ
ナダからの輸入品に最大25%の関税を2月1日までに賦課することを計画していると
した。米ホワイトハウスは、気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」から離脱
すると発表した。エネルギーに関する国家非常事態を宣言する大統領令に署名した。さ
らに米実業家イーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)新設に向けた大統
領令に署名した。約100本の大統領令に署名したとされ、各市場の反応を確認した
い。就任当日の関税導入が見送られたことを受けてドル安に振れたが、各国との交渉の
行方を確認したい。貿易摩擦に対する懸念が高まると、プラチナの圧迫要因になるとみ
られる。一方、電気自動車(EV)普及に関するバイデン前政権の取り組みを覆し、E
V販売の義務化が撤廃される見通しであることはプラチナの下支え要因である。供給不
足見通しもプラチナの下支え要因だが、関税引き上げの行方を確認するまで安値圏での
もみ合いが続くとみられる。
【米FRBの利下げペース鈍化と中国の景気刺激策】
 昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利
の誘導目標を0.25%ポイント引き下げ、4.25〜4.50%とした。金利・経済
見通しでは2025年の利下げ回数が2回と想定され、昨年9月の前回見通しの4回か
ら半減した。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は記者会見で「インフレの進展
を見極めながら慎重に進む必要がある」と述べた。経済指標では労働市場の堅調が示さ
れたが、インフレの落ち着きが示され、利下げ期待が戻った。昨年12月の米雇用統計
によると、非農業部門雇用者数は25万6000人増加し、事前予想の16万人増を上
回った。失業率は4.1%と前月の4.2%から低下した。一方、昨年12月の米消費
者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇と前月の2.7%から伸びが加速し、昨年
7月以来の大幅な伸びを記録した。ただコアCPIは前年比3.2%上昇と前月の
3.3%上昇から伸びが鈍化した。トランプ米政権の政策でインフレ高止まりが見込ま
れているが、米大統領の経済チームはインフレ回避のため、関税を月ごとに徐々に引き
上げる案を検討している。
 中国の習近平国家主席は新年に向けたテレビ演説で、2025年の成長促進へ一段と
積極的に政策を実行する方針を明らかにした。昨年第4四半期の中国の国内総生産(G
DP)は前年同期比5.4%増加した。事前予想の5.0%増を大幅に上回り、
2023年第2四半期以来の高水準となった。昨年通年の成長率は5.0%となり、政
府目標を達成した。ただ第4四半期の好調は輸出の前倒しが背景にあるとみられてお
り、今年は米国との貿易戦争に対する懸念が出ている。トランプ米大統領が就任式前に
中国の習近平国家主席と電話会談を行ったことを明らかにし、貿易戦争に対する懸念が
後退する場面もみられたが、今後の交渉の行方を確認したい。米大統領が財務長官に指
名したスコット・ベッセント氏は、中国の貿易黒字を指摘し、「世界史上最も不均衡な
経済」と批判している。また米上院は20日の本会議で、対中強硬派として知られるマ
ルコ・ルビオ上院議員の国務長官指名を全会一致で承認した。
【NY先物市場で売り圧力も年明けは買い戻される】
 プラチナETF(上場投信)残高は1月17日の米国で33.68トン(昨年11月
末34.28トン)、英国で19.22トン(同18.44トン)、南アで10.77
トン(同11.17トン)となった。合計で0.22トン減少し、投資資金が流出し
た。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月14日時
点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万5560枚(前週1万
7847枚)に縮小した。昨年10月29日の3万5543枚をピークとして昨年12
月31日に昨年9月以来となる5656枚まで縮小したが、年明けは売られ過ぎ感から
新規買い、買い戻しが入って買い越しを拡大した。ただ戻り場面で利食い売りが出た。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
*22日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。


このニュースの著者

MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。