プラチナは底堅い、金堅調も米自動車関税の行方を確認

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
 プラチナの現物相場は昨年末に昨年4月以来の安値897ドル台を付けたのち、中国
の景気刺激策に対する期待感を受けて買い戻し主導で上昇した。その後はトランプ次期
米大統領の就任を控えて上げ一服となったが、米大統領の関税に対する懸念による金堅
調やドル安を受けて買い優勢となり、昨年10月以来の高値1008ドル台を付けた。
 トランプ米大統領はカナダとメキシコに25%、中国に10%の関税を課す大統領令
に署名した。ただメキシコやカナダとの交渉で麻薬の流入阻止に向け、国境警備を強化
することで合意したことから、関税発動は1カ月延期された。一方、中国に対する関税
は発動し、米中の貿易戦争に対する懸念が高まった。米大統領は10日、鉄鋼とアルミ
ニウムに対する関税を25%に引き上げる大統領令に署名した。カナダ、メキシコ、ブ
ラジルなどへの適用除外措置と無関税枠を撤回した。3月12日に発動する。また13
日には全ての国に「相互関税」を課すと発表した。米国製品に課している関税の調査開
始を指示した。米大統領は14日、自動車関税を4月2日に発動させる方針を示した。
付加価値税(VAT)を採用している国については、それを関税とみなすとした。欧州
連合(EU)のVATや日本の消費税が関税とみなされるとみられており、自動車関税
の行方を確認したい。
【トランプ米政権のエネルギー政策転換は支援要因】
 トランプ米大統領は就任演説で、「国家エネルギー非常事態宣言」を行う方針を示し
た。前政権の気候変動対策を覆し、米国内のエネルギー生産を促進する。電気自動車
(EV)義務化を撤廃し、自動車産業を救うとした。米政権の政策転換を受けてカリフ
ォルニア州が進めていたディーゼルトラックの規制が撤回された。同州は州独自の排ガ
ス規制「先進クリーンフリート規則(ACF規則)」の環境保護庁(EPA)への免除
申請を取り下げた。ACF規則は2036年までにディーゼルトラックの販売を禁止
し、電気・水素トラックへの切り替えを目指すものだった。また米政権は同州に与えた
ガソリン新車販売規則の免除承認を取り消す方針を示している。トランプ米政権が地球
温暖化対策から化石燃料生産へと政策転換したことはプラチナ系貴金属(PGM)の自
動車触媒需要の増加につながるとみられる。
 1月28〜29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(F
F)金利の誘導目標を4.25〜4.50%に据え置くことを決定した。パウエル米連
邦準備理事会(FRB)議長は会見で、トランプ米大統領の政策を判断するのは時期尚
早とした。1月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.0%上昇、前月比0.5%
上昇した。前月比で2023年8月以来の大幅な伸びを記録した。事前予想の前年比
2.9%上昇、前月比0.3%上昇を上回った。前月の前年比2.9%上昇から伸びが
加速しており、今後は米政権の関税引き上げの影響を確認したい。
【NY先物市場のファンド筋の買い越しは昨年11月以来の高水準】
 プラチナETF(上場投信)残高は2月14日の米国で33.38トン(昨年末
34.69トン)、英国で20.58トン(同18.46トン)、南アで10.65ト
ン(同10.89トン)となった。合計で0.57トン増加し、投資資金が流入した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、2月11日時点の
ニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万5730枚(前週1万8975
枚)に拡大し、昨年11月5日以来の高水準となった。昨年12月31日の5656枚
を当面の底として新規買い、買い戻しが入り、買い越しが拡大した。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
*19日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。


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