コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【トランプ関税による景気不安に支えられるもNY金の目先の上げ幅は限定的か】
 NY金4月限は11日に2968.5ドルまで値を切り上げた後、14日は大きく値
を崩し、2889.9ドルと12日以来の水準まで下落した。その後、地合いを引き締
め24日に2974ドルに達して再び一代高値を更新したが、その後は頭重い足取りに
転じている。

 14日にかけての価格上昇時は12日に発表された1月の米消費者物価指数(CP
I)、生産者物価指数(PPI)が買い支援要因になったと見られる。1月の米CPI
の前年同月比は前月の+2.9%を上回る+3.0%を記録し、4カ月連続で伸びが加
速化していることが確認された。これに加え、1月の生産者物価指数の前年同月比も+
3.5%で前月の+3.3%を上回っており、インフレが継続して加速化していること
が示唆されている。
 このインフレ基調に追い打ちをかけると見られるのがトランプ政権による関税政策
だ。これまでのところ、トランプ政権下では中国からの輸入に対し10%の輸入関税が
引き上げられたうえ、鉄鋼・アルミについても輸入関税が引き上げられた。
 また、26日には発動時期に関する言及はなかったものの、欧州連合(EU)に対す
る25%の輸入関税引き上げ措置を発表したうえ、銅の輸入関税引き上げが警戒される
ほか、カナダ及びメキシコへの関税発動は4月2日との見方が広がっている。
 輸入関税の引き上げは、価格そのものの上昇を促しインフレ率が上昇傾向にある米国
内において更なる価格の上昇を促すことに繋がる。また、輸入関税の引き上げにより輸
入量が減少し、これが国内需給の引き締まりを促すことによってインフレ率の上昇を後
押しする可能性があるため、米国景気不安がより高まっている。
 1月の米小売売上高は前月比で−0.9%と1年ぶりの大幅減少を記録し、個人消費
に停滞の兆候が見られている。米国では国内総生産(GDP)の約7割が個人消費で占
められているため、小売売上高の縮小はGDPの成長率押し下げ要因となる。トランプ
関税によって米国内のモノの価格がさらに引き上げられるようであれば個人の消費意欲
がさらに減退し、その結果として米経済成長へ悪影響を与えることが警戒される。
 また、米国の関税引き上げは輸出国側にも影響を与えることが予想される。現時点で
は米国内の供給引き締まりそして価格の高騰が想定されるが、米国という大国への輸出
が絞られることは貿易収支の悪化が促される可能性があることを意味する。

 特に中国に関しては不動産市場の後退を受けて昨年から中国景気に対する弱気な見通
しが目立ちながらも、中国政府当局による景気刺激策が期待されたことで景気見通しを
持ち直す動きも見られた。しかしながら、トランプ政権による関税政策は中国経済へ大
きな打撃を与えることが予想され、これが中国の景気不安を高める結果、安全資産を求
める動きが刺激されている。
 その一方でインフレの加速化はインフレヘッジとしての金の役割を意識させる。トラ
ンプ関税を受けて米国内外の景気不安が高まるなか、金に対する安全資産を求める動き
は、ここ最近の一代の高値更新場面を生みだす主因となってきたうえ、今後もNY金価
格をサポートしていくと予想される。
 ただ、その一方で一代高値の更新が続いたことで買い過剰感に対する警戒感も強まっ
ている。全米商品先物取引委員会(CFTC)によると、NY金の取組は減少傾向にあ
る。今月18日時点ではファンド筋を含む大口投機家の買い越し数は前週より6000
枚程度、減少している。
 SPDRの金ETF残高は今月21日に23年8月10日以来となる900トン台に
達し、投資用としての金需要が膨らんでいることを示唆し、NY金の下値は堅いと見ら
れる。一方、これまでの価格の上昇が警戒され大口投機家が玉整理の動きを見せ始めて
いるだけに目先の上値は限られ、2900ドル台前半での高もみとなりそうだ。
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