コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【NY金は価格上昇時の玉整理一巡感が強まり、高値圏を維持】
 NY金4月限は2月24日に2974ドルに達し再び一代の高値を更新した後に急落
となり、28日に2844.1ドルと2月4日以来の安値水準まで下落した。3月に入
り急反発となり、2900ドル台に値を戻しており、安全資産としての需要の根強さを
窺わせている。

 米トランプ政権は3月4日よりメキシコ・カナダからの輸入に対する関税を引き上げ
たうえ、中国からの輸入に対しても10%の追加関税を発動した。
 これに対し中国も米国産農産物に対し10〜15%の輸入関税を発動する報復措置を
取っている。また、米政権は欧州連合(EU)に対する25%の輸入関税引き上げも検
討しており、米国と他国との貿易戦争の激化に対する警戒感が高まっている。
 2月の米消費者信頼感指数が大幅に低下したことが明らかとなったうえ、1月の米新
築住宅販売件数も落ち込み、1月の米個人消費支出(PCE)デフレーターの前年比
も前月を下回るなど、弱気な経済指標の発表が続いている。
 個人消費は、PCEデフレーターに見るように、インフレ基調が続き、物価高を受け
て買い疲れの可能性が示される内容の発表が見受けられている。なお、現時点で発表さ
れている経済指標は1月の状態を示しているものが多く、トランプ関税による影響が含
まれている可能性は低い。
 また、米経済の成長の度合いを測る国内総生産(GCP)のうち70%程度が個人消
費で占められているだけに、関税引き上げの動きが活発化した前月末以降の米経済の動
向が警戒され、この警戒感が安全資産を求める動きとしてNY金を下支えしそうだ。

 一代高値更新が続く一方でファンド筋を含む大口投機家の買い越し数が縮小傾向に転
じた。その後、急落に転じたことは、ファンド筋を含む大口投機家の買い越し数の玉整
理が進んだ結果と見られる。3月3日以降の反発は、玉整理が一巡した可能性も示して
いる。
 3月4日に発動された対カナダ・メキシコの輸入関税に関してトランプ政権は軽減措
置の可能性も示唆している。これは、交渉次第では関税の賦課が回避や軽減されること
を改めて意識させるもので、交渉次第では米国のインフレ加速化も制限される可能性が
あることを示す一方で、交渉が暗礁に乗り上げた場合のインフレ加速化の懸念も残すも
のとなる。
 インフレ加速化の抑制は追加利下げ期待を高める要因になる一方、インフレ加速化は
米景気不安、そして米国と対相手国との貿易戦争懸念を強めるものとなり、いずれにし
ても金市場においては強気材料視される要素がある。
 価格上昇後の玉整理も一巡の様相を強めているうえ、金市場を巡る環境は依然、強気
が意識されやすいと見られるだけに、NY金4月限は2900ドルを下値支持線にして
の高値圏での高下を継続すると予想される。
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