プラチナの現物相場は中国の景気刺激策や金堅調を受けて2024年10月以来の高 値1009ドルを付けたのち、トランプ米大統領が自動車関税や相互関税を発表し、リ スク回避の動きとなったことを受けて急落した。レンジ下限となる900ドル前後を試 すと、2024年4月以来の安値893ドルを付けたが、売り過剰感から買い戻されて 下げ一服となった。中国の報復措置発表で米中の貿易戦争激化に対する懸念が強いが、 米国が相互関税の上乗せ部分を90日間停止すると発表したことが下支えになった。ま た米国は、中国などから輸入するスマートフォンやコンピューターを相互関税の適用か ら除外する措置も発表したが、米大統領は半導体を別の関税カテゴリにするとの見通し を明らかにした。さらに輸入する自動車・部品に対する関税軽減措置の可能性について 検討しており、関税政策の行方が当面の焦点である。各国との交渉で当初発表された関 税が引き下げられるかどうかを確認したい。 【金の史上最高値更新もプラチナは景気後退懸念が圧迫】 トランプ米大統領の就任演説で、電気自動車優遇措置を撤廃し、化石燃料の生産へと 米国の政策を方向転換する方針が示されたことを受け、プラチナの自動車触媒需要の回 復期待が出た。しかし、不法移民の取り締まりや米政府機関の閉鎖による職員の大量解 雇、相次ぐ関税の発表を受けてインフレと景気後退(リセッション)が同時進行するス タグフレーションに対する懸念が高まった。金が安全資産として買われ、史上最高値を 更新したが、プラチナはリスク回避の動きに上値を抑えられた。パウエル米連邦準備理 事会(FRB)議長は、米大統領の新たな関税措置は予想以上に大きいとしており、当 面のプラチナの上値を抑える要因になるとみられる。 3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、米経済は高インフレと成長鈍 化が同時に起こるリスクに直面しているとの見解で一致したことが示された。3月の米 消費者物価指数(CPI)は前年比2.4%上昇し、前月の2.8%上昇から伸びが鈍 化した。しかし、4月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値で1年先の期待インフレ 率は6.7%と、前月の5.0%から急上昇し、1981年以来の高水準となった。同 指数は50.8と前月確報値の57.0から低下し、2022年6月以来の低水準とな った。貿易摩擦激化に対する懸念を受けて事前予想の54.5を下回った。米ゴールド マン・サックスは、2025年の米国の自動車販売台数を1540万台と予想し、従来 の1625万台から引き下げた。関税により自動車購入コストが上昇すると見込んでい る。 【NY市場でファンド筋は2024年3月以来の売り越し】 プラチナETF(上場投信)残高は4月15日の米国で32.49トン(2月末 33.80トン)、14日の英国で19.36トン(同19.85トン)、南アで 10.74トン(同10.68トン)となった。合計で1.74トン減少し、景気の先 行き懸念から投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明 細報告によると、4月8日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の取組は794 枚売り越し(前週1万4975枚)に転じ、2024年3月以来の売り越しとなった。 3月18日の2万0507枚買い越しをピークとして手じまい売り、新規売りが出た。 ただ指定倉庫在庫が3日連続で減少し、実需筋の買い戻す動きが出ており、900ドル 前後で下値を支えられることになりそうだ。 (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行) *16日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。
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