コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【NY金は関税政策による景気見通しの不透明感に支えられ堅調】
 NY金期近6月限は5月1日にかけて軟化し、一時3209.4ドルまで値を落とし
た。その後は地合いを引き締めて6日に3400ドル台を回復。7日は反落したが、
3350ドル割れはなく、下値の堅さを示している。
 NY金が堅調に推移の背景は、米国の関税政策と米国を始めとする世界的な景気見通
し不透明感だ。今年第1半期の米国の国内総生産(GDP)は、輸入が輸出を上回った
ことなどからマイナス成長に落ち込んだ。
 米トランプ政権による自動車部品を対象とする25%の追加関税は今月3日に発動さ
れた。この関税引き上げ政策は米国に対し自動車部品を輸出している国にも影響を与え
ると同時に、輸入している部品を使用している米国産の自動車価格も上昇を余儀なくさ
れる。
 既に米自動車大手のフォード・モーターは5月2日生産分からメキシコで生産する3
車種の値上げを決定しているが、今後はトランプ政権による関税引き上げの影響から自
動車価格の値上げが続くと予想される。
 また、関税引き上げを控えた4月の米中古車平均価格も関税発動前の駆け込み需要を
受けて1年半ぶりの高水準まで上昇しており、米トランプ政権による関税政策が米国内
の物価上昇を促し始めている。
 今月2日発表の4月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が事前予想を上回り、雇用の
堅調さを示す内容となったが、トランプ関税による物価の上昇が浸透し始めるなか、今
後は雇用の悪化が予想されている。
 既に関税引き上げの影響で機械の輸入が滞り設備投資が停滞するなか、米管理協協会
(ISM)発表の4月製造業指数は5か月ぶりの低水準となり、製造業の縮小が示唆さ
れているが、製造業の縮小が続くならば雇用面にも影響が出てくる可能性がある。
 また、今回の雇用統計は平均時給の伸び率は予想をやや下回ったことも注目される。
雇用自体は堅調でも賃金の上昇率が鈍化が続くようであれば、関税引き上げによっても
たらされる物価の上昇に消費が追い付かなくなる可能性が高まることになる。相互関税
や自動車の輸入関税などの措置は4月に入ってから発表されており、発動による影響は
これから現れてくると見られるため、米景気の先行きについては不透明感が強い。
 トランプ政権は新たに医薬品、海外製作の映画に対しても大幅な関税引き上げの可能
性を示している。今後もどのような分野での関税引き上げをトランプ大統領が言及する
か、関税の引き上げを発表しながらも、その直後に調整を入れる可能性もあるなど不確
実性が意識される状況が続きそうだ。
 その一方で注目されるのが米中貿易協議だ。米国のルビオ国務長官が明らかにしたと
ころによると、今週末にスイスで米中協議が開催される見通しとなっている。米中協議
がどのような進展を見せるかが注目されるところで、大幅な進展が見られるようであれ
ば安全資産を求める動きも緩和に向かうと予想される。
 米中貿易戦争の緩和が明らかとなるまでは、トランプ大統領の発言次第で高下する不
安定な足取りの中でも、米国の景気見通し不透明感が手掛かりとなってNY金は下値の
強い足取りを維持することになりそうだ。
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