関税への懸念が強まる中でも、ドルは短期的には売られ過ぎの状態にあることから、買い戻しが出る一方、実質金利が、他の通貨に対してドルを押し上げる要因となり得るとも見方も出ている。ストラテジストは以下のように述べている。 レポートでよく見かける「構造的には売りだが、戦術的には買い」という表現ほど、気持ちがくじけるものはない。どちらの立場も取っておけば、後でどちらでも「当たった」と言えるからだ。これは60対40%という確率予測と同じで、どっちが起きても言い訳ができるという。 とはいえ、時にはこのような「二枚舌的見方」が避けられない状況もある。長期的にはドルにとってマイナス要因が数多くあるからだ。例えば、世界貿易の縮小、ドルの国際利用の減少(いわゆる脱ドル化)、ヘッジ比率の再調整などが挙げられる。しかし、現時点でドルはすでにかなり売られており、マーケットというものは最終的なゴールに向けて一直線に進むわけではないので、短期的な反発が起きてもおかしくないというのが現状。 ここで注目すべきなのが「実質金利」。これは3-6カ月程度の短・中期の通貨動向を測る上で最も有効な指標の1つとなっている。ドル指数を構成する通貨の実質金利を比較することで、通常はドル指数の動きをうまく説明できる。現在はこの実質金利に対してドル指数が売られ過ぎの状態にあるように見える。 各通貨を見ると、より複雑な状況が見えて来る。ユーロ、台湾ドル、スイスフラン、カナダドル、ポンドは実質金利差から見てドルに対して下落修正(ドル高)しやすい通貨に分類される。 一方、メキシコペソ、インドルピー、円などは、実質金利の観点からはドルに対してさらに上昇する余地がある。 さらに、過熱感を測るテクニカル指標であるRSIといったテクニカル指標を見ると、ドルはメキシコペソ、スイスフラン、ポーランドズロチ、ユーロ、台湾ドルに対して最も売られ過ぎの状態にある。つまり、これらのうちメキシコペソを除いた通貨では、ドルが反発する可能性があると言える。 とはいえ、簡単に儲かる取引機会があるかというと、そうでもない。スイスフランと台湾ドルは、それぞれ安全資産需要とヘッジフローに支えられて上昇しており、安易に逆張りするには難しい環境。また、メキシコペソは実質金利差から見てまだ強さが続く可能性があるため、ショートするのは危険。そうなると、ユーロとポーランドズロチあたりが、ドル反発の恩恵を受けやすい候補となる。 総じて、ドル指数の主要構成通貨であるユーロ、スイスフラン、カナダドル、ポンドの動きを見れば、実質金利は短期的なドル反発をサポートしていると言える。 ドルインデックス 97.57 MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
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