年初来で5回目の最高値更新、不安要因織り込みボラは低下 (2) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】

配信元:株探
著者:Kabutan
●主なポイント

 ○6月の株式市場では、政治関連イベントや中東情勢、さらに関税に対する国際的な懸念といった材料を消化しながら上昇する流れが続き、S&P500指数 は4.96%(配当込みのトータルリターンはプラス5.09%)上昇しました。5月は反発に転じて6.15%上昇(同プラス6.29%)、4月は0.76%下落(同マイナス0.68%)、3月は5.75%の大幅下落(同マイナス5.63%)、2月は1.42%下落(同マイナス1.30%)でした。2025年第2四半期のリターンはプラスに戻り、10.57%(同プラス10.94%)と大きく上昇しました。第1四半期は4.59%下落(同マイナス4.27%)、年初来では5.50%上昇(同プラス6.20%)、過去1年では13.63%上昇(同プラス15.16%)でした。2024年は23.31%上昇(同プラス25.02%)でした。

  ⇒6月のS&P500指数のトータルリターンはプラス5.09%でしたが、マグニフィセント・セブン を除くとプラス2.68%でした。4月8日に付けた直近安値からのトータルリターンはプラス24.92%となっていますが、マグニフィセント・セブンを除くとプラス4.09%でした。とはいえ、年初来で見ると(リターンがプラスとはいえ)マグニフィセント・セブンのアンダーパフォームは続いており、指数全体の年初来トータルリターンがプラス6.20%となったのに対し、マグニフィセント・セブンを除くとプラス5.22%でした。

 ○6月の主なデータ

  ⇒6月のS&P500指数は高値圏での取引となりました(日中最高値となる6215.08を記録、終値最高値も2回更新して6204.95をつけました)。5月が全面高で6.15%上昇したのに続き、6月も指数は(マグニフィセント・セブンによる押し上げ効果も働き)上昇基調を維持しました。一方で、2-4月の3ヵ月間のリターンは累計でマイナス7.80%でした。6月のS&P500指数は5月に全面高の展開で6.15%上昇した後に、4.96%上昇しました。4月は0.76%下落、3月は5.75%下落、2月は1.42%下落しました(1月は全面高となり2.70%上昇)。6月は20営業日のうち13営業日で上昇しました。5月は21営業日のうち13営業日で上昇しました。また、6月は値上がり銘柄数が減少したものの、引き続き値下がり銘柄数を大きく上回り、340銘柄が値上がり、163銘柄が値下がりしました。5月は347銘柄が値上がり、155銘柄が値下がり、4月は168銘柄が値上がり、331銘柄が値下がりしました(3月は154銘柄が値上がり、349銘柄が値下がり、2月は248銘柄が値上がり、255銘柄が値下がり、1月は355銘柄が値上がり、148銘柄が値下がりしました)。年初来では287銘柄が値上がり、214銘柄が値下がりとなっています。6月の出来高は前月比6%増、前年同月比では32%増となりました。

   →6月は11セクターのうち9セクターが上昇しました。5月は10セクター、4月は5セクター、3月は2セクター、2月は6セクター、1月は10セクターが上昇しました。6月のパフォーマンスが最高となったのは情報技術で9.74%上昇しました(年初来では7.70%上昇、2023年末比では46.14%上昇)。パフォーマンスが最低だったのは生活必需品で2.21%下落しました(同5.09%上昇、同17.68%上昇)。

  ⇒S&P500指数は6月に4.96%上昇して、6204.95で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス5.09%)。5月は6.15%上昇して5911.69(同プラス6.29%)、4月は0.76%下落して5569.06(同マイナス0.68%)で月を終えました。2025年第2四半期の3ヵ月では10.57%上昇(同プラス10.94%)、年初来では5.50%上昇(同プラス6.20%)、過去1年間では13.63%上昇(同プラス15.16%)しました。2024年は23.31%上昇(同プラス25.02%)、2023年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。

   →コロナ危機前の2020年2月19日に付けた終値での最高値(3386.15)からは83.24%上昇(同プラス99.13%)となっています。

 ○米国10年国債利回りは5月末の4.40%から4.24%に低下して月を終えました(2024年末は4.58%、2023年末は3.88%、2022年末も3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは5月末の4.92%から4.78%に低下して取引を終えました(同4.78%、同4.04%、同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは5月末の1ポンド=1.3462ドルから1.3733ドルに上昇し(2024年末は1.2520ドル、2023年末は1.2742ドル、2022年末は1.2099ドル)、ユーロは5月末の1ユーロ=1.1347ドルから1.1785ドルに上昇しました(同1.0360ドル、同1.0838ドル、同1.0703ドル)。円(対米ドル)は5月末の1ドル=142.88円から143.98円に下落し(同157.32円、同141.02円、同132.21円)、人民元は5月末の1ドル=7.1998元から7.1641元に上昇しました(同7.2770元、同7.1132元、同6.9683元)。

 ○6月末の原油価格は6.7%上昇し、5月末の1バレル=60.90ドルから同64.99ドルとなりました(2024年末は同71.75ドル、2023年末は同71.31ドル、2022年末は同80.45ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は6月に1.5%上昇し、1ガロン=3.338ドルとなりました(5月末は3.288ドル、2024年末は同3.128ドル、2023年末は同3.238ドル、2022年末は同3.203ドル)。2020年末から原油価格は34.2%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は43.3%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。

  ⇒2025年5月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、50%が原油(ディーゼルは45%)、17%(同23%)が販売・マーケティング費、17%(同15%)が精製コスト、16%(同17%)が税金となっています。

 ○金価格は5月末の1トロイオンス=3315.40ドルから上昇し、3318.40ドルで6月の取引を終えました(2024年末は2638.40ドル、2023年末は2073.60ドル、2022年末は1829.80ドル)。

 ○VIX恐怖指数は5月末の18.57から16.73に下落して6月を終えました。月中の最高は22.51、最低は16.11でした(2024年末は17.35、2023年末は21.67、2022年末は17.22)。

  ⇒同指数の2024年の最高は75.73、最低は10.62でした。

  ⇒同指数の2023年の最高は30.81、最低は11.81でした。

  ⇒同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。

 ○目標株価も上昇しました。S&P500指数に対する市場関係者の1年後の目標株価は前月から1.4%上昇して6668となり、現在値から7.5%上昇が見込まれています。5月末時点では11.2%上昇の6575、4月末時点では6543でした。ダウ平均の目標株価は前月から0.7%上昇し、現在値から5.3%上昇の4万6452ドルとなっています(5月末時点では9.1%上昇の4万6128ドル、4月末時点では4万6810ドル)。

●トランプ大統領と政治

 ○トランプ大統領は6月4日に、ロシアのプーチン大統領と75分間に及ぶ電話会談を行いました。報道によると、ウクライナへの軍事侵攻が主な議題で、プーチン大統領はトランプ大統領に対してウクライナの最近のドローンによる攻撃に対してロシア側は対応せざるを得ないと語ったとされており、両国の戦闘には収束や停戦の兆しは全く見えません。

 ○トランプ大統領は中国の習近平国家主席と90分の電話会談を行い(6月5日)、主に貿易と関税について協議したと伝えられています。両者は今後も交渉を継続していくことで合意し、9月にニューヨークで開かれる国連総会に合わせて、対面での会談を行うことが明らかとなりました。

 ○米議会予算局(CBO)は、議会で審議中(下院では賛成215票、反対214票で可決され、現時点では上院で審議中)の大型法案(税制・歳出法案、いわゆる「1つの大きくて美しい法案」)について、向こう10年間で財政赤字を2.4兆ドル拡大させるとの推計を公表しました。また、CBOは別の報告書の中で、2025年5月13日に発動された関税措置が今後もその効力を維持し、変更されない場合、向こう10年間で2.8兆ドルの歳入増が見込まれるとしています。

 ○上院は「1つの大きくて美しい法案」の修正案を公表しました。変更点としては、米内国歳入法899条(いわゆる報復税)の適用開始時期の先送りと税率縮小、州・地方税(SALT)控除上限を1万ドルに据え置き(下院案では4万ドルに引き上げ)、事業の税額控除の恒久化(下院案ではサンセット条項を導入)、メディケイド予算の削減幅拡大と新生児向け貯蓄口座の創設が挙げられます。

 ○上院は暗号資産ステーブルコイン(通常はハードカレンシーと連動するデジタル資産)の利用に関する規制枠組みを整備するためのGENIUS法案(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins)を可決しました。

  ⇒下院は4月にGENIUS法案と本質的には同内容となるSTABLE法案(Stablecoin Transparency and Accountability for a Better Ledger Economy)を可決しており、GENIUS法案は法制化に向けて下院での承認待ちとなっています(法制化にはGENIUS法案とSTABLE法案の相違点を解消することが必要)。

 ○トランプ大統領は3回目となるTikTok禁止法の施行を延期する大統領令に署名しました(同禁止法は2025年1月20日の大統領就任日に大統領令によって施行が75日間延期され、その後再び施行開始が4月5日から6月18日に延期されました)。この結果、同社の(2024年4月に成立したTikTok禁止法に基づく)米国事業売却の猶予期間が90日間延長され、売却期限は9月17日となりました。

 ○2025年6月21日の深夜に米国は、B2ステルス爆撃機に搭載した重量3万ポンドの「バンカーバスター」を使用して、核兵器開発への関与の疑惑がもたれているイランの核関連施設3箇所を攻撃しました。

  ⇒6月23日にイランは報復措置としてカタールの米軍基地にミサイル攻撃を実施しました(イランはカタールに対して攻撃を事前に通告)。発射されたミサイルは迎撃され、死傷者は出ませんでした。

  ⇒金融市場は今回のイランの攻撃を象徴的な意味合いを持つ抑制的な対応だと見なしています。原油価格の終値は、米国による攻撃が行われる前(6月20日)は1バレル=75.00ドルでしたが、事態がこれ以上悪化することはないとの安心感から同68.80ドルに下落しました(S&P500指数は同日0.96%上昇)。

  ⇒トランプ大統領は23日午後にイランとイスラエルが停戦に合意したと発表しました。発表直後に合意違反の攻撃が行われたものの、その後は合意が遵守されているもようです。

 ○今後の主要イベント

  ⇒7月4日:大型減税法案の上院可決の目標期日

  ⇒7月9日:相互関税の適用停止期間(90日間)の期限。EUへの50%関税の保留期間が終了

  ⇒7月31日:連邦控訴裁判所が設定したトランプ関税に関する訴訟の弁論期日

  ⇒8月12日:中国を対象とした10%を超える相互関税の適用停止期間(90日間)の期限

  ⇒8月下旬:政府債務が上限に達する見通し。米国債の元利払いの資金が枯渇する可能性

  ⇒9月17日:TikTok禁止法の3回目の施行延期期間の期限

※「年初来で5回目の最高値更新、不安要因織り込みボラは低下 (3)」へ続く

株探ニュース

このニュースの著者

Kabutan

有望株(銘柄)の発掘・選択をサポートするサイトです。株価 ニュース 決算 テーマや企業情報などが満載。 株価変動要因となる情報や株式の売買タイミングに役立つ情報、迅速な投資判断ができる仕組みを提供します。