強い米経済指標もドルは上げ一服 ドル円は148円台半ば=NY為替概況 きょうのNY為替市場、この日発表の6月の米小売売上高や新規失業保険申請件数など一連の米経済指標が強い内容だったことから、発表直後はドル高の反応が見られていた。ドル円も149円台に一時上昇したが、買いが一巡すると戻り売りに押され、148円半ばに下落する展開。 前日はパウエル議長の解任を巡る一連のノイズで市場が不安定になり、為替市場はドル売りが強まった。しかし、一時的な動きに留まり、ドル高の流れに戻っている。 ホワイトハウスを始め、米共和党はパウエル議長を解任したがっているようだが、法的には難しいとの見方が多い。職務遂行不能や犯罪・不正行為が立証されければ議長は解任できない。共和党は、FRB本部ビルの改修費用超過(約7億ドル超のコスト増)に絡んだ職務怠慢を根拠として解任の可能性を探っているようだが、無理がありそうだ。 ただ、ストラテジストは、前日の騒動に対するドルの反応を受けて、自身が以前から唱えている「ドルへの弱気スタンス」を裏付けるものだと主張している。中央銀行の独立性という建前が急速に崩れている中で、「ドルの戻りは売り場」という長期的なドル弱気見通しに合致しているという。 ドルは短期的な上昇の可能性はあるものの、上げは限定的になるとの見方は少なくない。年初からのドル下落は行き過ぎていた可能性があり、反発の余地があるという。ただ、FRBによる利下げ見通しがドルの回復を抑制し、ドル離れが長期的にはドルを押し下げると見ているようだ。FRBの9月利下げを予想しており、ドルの現在の回復は長続きしない可能性が高いという。 ユーロドルも下げ渋る展開。一時1.1560ドル付近まで下げ幅を伸ばしたものの、1.15ドル後半に下げ渋っている。ただ、21日線を下放れる展開は続いており、上値は重い。 米大手証券のストラテジストは、ECBは最近のユーロ高に対してそれほど不満を示していない可能性が高いと指摘している。先日、ポルトガルのシントラで開催されたフォーラムでのECB当局者らの発言は、ユーロ高に対するECBの抵抗がどの程度あるかについて、投資家の過大評価を招いたという。ユーロは現在、短期的な戦術的調整局面で1.15ドルに向けて下落しているが、その後は反発を予想しているようだ。 ポンドドルも一時1.3375ドル付近まで下落する場面が見られたものの、1.33ドル台に入ると押し目買いも出るようで、いまのところは1.34ドル台がサポートされている。本日は3-5月の英雇用統計が発表になっていたが、引き続き減速を示し、インフレが予想外に加速したにもかかわらず、英中銀の8月利下げ予想を正当化している。3-5月の週平均賃金(除賞与)は前年比5.0%上昇となり、4月の5.3%から鈍化。失業率は4.7%に上昇し、2021年4-6月以来の高水準となった。 経済の先行きが不透明な中、新たな給与税やエネルギーコストの上昇を背景に、英企業は採用を渋っているようだ。年初に力強い成長を見せた英経済も、ここに来て減速が見られており、5月の月次GDPは2カ月連続で減少していた。米国向け輸出が関税の影響で落ち込んだことが響いた。 今回の英雇用統計では、賃金の上昇が高止まりし、インフレが2%目標を上回っている中でも、段階的かつ慎重な利下げ方針を正当化すると見られている。 MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
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