金・銀週間展望=調整警戒、米FRBの利下げをほぼ織り込む

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
             [9月8日からの1週間の展望]
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   週間高低(カッコ内は日)   2026 年  6 月限  9 月 1 日〜 9 月 5 日
        始 値   高 値    安 値    帳入値   前週末比
  金          16,250    17,119 ( 4)   16,233 ( 1)     17,046         +806
  銀           183.8     191.0 ( 2)    183.8 ( 1)      189.4         +7.6
 プラチナ       5,855     6,310 ( 4)    5,851 ( 1)      6,116         +250
 パラジウム     5,300     5,400 ( 3)    5,300 ( 1)      5,400         +100
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  NY貴金属(カッコ内は限月)      | 東京外為・株式/NY原油
         4  日終値  前週末比  |        終 値      前週末比
  金       (12) 3,606.7     +90.6   | ドル・円    148.22      1.14 円安
  銀       (12) 4,141.7     +69.4   | 日経平均  43,018.75      +300.28
 プラチナ   (10) 1,376.6      +6.1   | NY原油 (10)  63.48        -0.53
 パラジウム (12) 1,143.30    +19.30  |* ドル・円は15時45分現在、原油は  4日
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【前回のレビュー】
 金は米連邦準備理事会(FRB)議長の利下げ示唆や理事解任騒動で堅調、とした。
 金は米連邦控訴裁判所が米政権の関税措置の大半が違法との判決を下したことや労働
市場の減速による米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しを受け、内外で史上最高
値を更新した。現物相場は史上最高値3577.91ドルを付けた。金先限は上場来高
値1万7164円を付けた。
 米連邦控訴裁判所は、トランプ米大統領の関税の大半が違法との判決を下した。米政
権が最高裁へ上訴する機会を与えるため、10月14日までは関税を維持することを認
めた。控訴裁が取り上げたのは、米大統領が4月に発動した相互関税と2月に中国、カ
ナダ、メキシコに対して発動した関税の合法性。米大統領が国際緊急経済権限法(IE
EPA)に基づき関税を課す権限はないなどとした。鉄鋼とアルミニウムへの課税な
ど、他の法的権限に基づいて発動された関税には影響しない。ただ民主党政権下で選ば
れた判事のうち、6人が賛成、2人が反対しており、米大統領は「極めて党派的」な決
定と批判した。米政権は3日、最高裁へ上訴し、今月10日までに本件を審理するかど
うかを決定し、11月に弁論を行うことで、審理を迅速に進めるよう要請した。
 7月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前年比2.6%上昇した。伸びは6月の
2.6%と変わらずだった。8月の米ミシガン大消費者信頼感指数確報値は58.2と
なり、速報値の58.6から低下し、3カ月ぶりの低水準となった。1年先のインフレ
期待は4.8%と速報値の4.9%から鈍化した。7月の米雇用動態調査(JOLT
S)によると、求人件数は718万1000件と前月から17万6000件減少した。
事前予想は737万8000件。求人件数が10カ月ぶりの低水準に落ち込む一方、解
雇件数は増加し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)以降で初めて
失業者数が求人数を上回った。8月の全米雇用報告によると、民間雇用者数は5万
4000人増で事前予想の6万5000人増を下回った。米新規失業保険申請件数は
8000件増の23万7000件となった。事前予想の23万件を上回り、労働市場の
軟化を示唆した。CMEのフェドウォッチで17日の米連邦公開市場委員会(FOM
C)で25ベーシスポイント(bp)利下げの確率は99.4%(前週86.7%)と
なった。8月の米雇用統計と米消費者物価指数(CPI)を確認したい。
【金ETF残高は増加】
 世界12カ国に上場している金ETF(上場投信)の現物保有高は4日時点で
1170.01トンとなり、前週末比4.44トン増加した。米国で4.29トン、英
ETFSで0.17トン、オーストラリアで0.02トン増加、英GBSで0.04ト
ン減少した。米国の関税に対する不透明感や米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通
しを受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細
報告によると、8月26日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは21万
4311枚となり、前週の21万2590枚から拡大した。今回は新規買いが490
枚、買い戻しが1231枚入り、1721枚買い越し幅を拡大した。
 中国の習近平国家主席は、上海協力機構(SCO)の全ての当事者に対し、その「巨
大な市場」を活用するよう促すとともに、米国に対抗する新たな世界安全保障・経済秩
序構築への野心を示した。ロシアのプーチン大統領は習近平国家主席、インドのモディ
首相と会話した後、ウクライナの持続可能な平和のためには北大西洋条約機構(NAT
O)の東方拡大問題に取り組む必要があると述べた。またウクライナのゼレンスキー大
統領がモスクワを訪問すれば首脳会談は実現するだろうとしつつ、会談に価値があるか
は不明という認識を示した。ゼレンスキー大統領と欧州首脳らは4日、パリでウクライ
ナ支援の有志国連合の会合を開いた。マクロン仏大統領によると、ロシアとの和平合意
が成立した場合、ウクライナに対する「安全の保証」の一環として26カ国がウクライ
ナに部隊を派遣する用意があると表明した。米国はウクライナに対する安全の保証への
支援を近日中に最終決定する。ブラジルのルラ大統領は、8日にBRICS首脳のオン
ライン会議を開催する。
【銀はドル安や金堅調で2011年9月以来の高値】
 銀の現物相場はドル安や金堅調を受けて買い優勢となり、2011年9月以来の高値
41.42ドルを付けた。ただ米国の関税に対する不透明感を受けて株価が急落する場
面もみられ、景気見通しも確認したい。また欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁
は、トランプ米大統領がパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長やクック理事を解任
すれば、「米国と世界経済にとって非常に危険」との見解を示した。
 4日のニューヨークの銀ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比79.43トン
減の1万5230.57トンとなった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建
玉明細報告によると、8月26日時点のニューヨーク銀の大口投機家の買い越しは4万
6466枚となり、前週の4万6549枚から縮小した。新規売りが新規買いを上回っ
た。
当面の予定(イベント・経済統計)
 8日 国内総生産 2025年4-6月期2次速報 (内閣府)
    国際収支(経常収支) 2025年7月(財務省)
    中国貿易収支 2025年8月(税関総署)
    独貿易収支 2025年7月(連邦統計庁)
    独鉱工業生産指数 2025年7月(経済技術省)
    米消費者信用残高 2025年7月(FRB)
 9日 マネーストック 2025年8月(日本銀行)
10日 中国消費者物価指数 2025年8月(国家統計局)
    中国生産者物価指数 2025年8月(国家統計局)
    米生産者物価指数 2025年8月(労働省)
    米卸売在庫 2025年7月確報値(商務省)
11日 企業物価指数 2025年8月(日本銀行)
    欧州中央銀行理事会結果公表(ECB)
    米新規失業保険申請件数(労働省)
    米消費者物価指数 2025年8月(労働省)
    米財政収支 2025年8月(財務省)
12日 英貿易収支 2025年7月(国立統計局)
    英鉱工業生産指数 2025年7月(国立統計局)
    独消費者物価指数 2025年8月確報(連邦統計庁)
    米消費者信頼感指数 2025年9月速報値(ミシガン大)
    建玉明細報告(CFTC)
MINKABU PRESS 東海林勇行
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