金は8月22日のジャクソンホール会議でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長 が利下げを示唆したことや、トランプ米大統領がクックFRB理事の解任を表明し、F RBの独立性に対する懸念が出たことを受けて上値を試した。9月に入ると、予想以下 の米雇用統計や米雇用者数の年次改定で大幅に下方修正され、労働市場の減速が示され たことも支援要因となった。米消費者物価指数(CPI)の伸びが加速し、インフレに 対する懸念が残るが、米ミシガン大消費者信頼感指数やニューヨーク連銀製造業業況指 数の低下を受けて米FRBの利下げ見通しが強く、現物相場は3702ドル、JPX金 先限は1万7646円と史上最高値を更新した。17日の米連邦公開市場委員会(FO MC)では25ベーシスポイント(bp)利下げが見込まれ、10・12月も利下げす るとみられている。 米ロ首脳会談で和平合意の道が模索され、欧米とウクライナで協議が進んだ。ただロ シアのウクライナ攻撃が続いたことや、停戦後のウクライナの欧州軍駐留案にロシアが 反発したことを受け、和平合意は難しくなった。トランプ米大統領は2週間以内に停戦 できなければロシアに追加制裁を課すと述べており、欧州にロシア産原油の購入停止を 要求した。ポーランドやルーマニアでロシアのドローン(無人機)が領空侵犯してお り、北大西洋条約機構(NATO)は防衛体制を強化するとした。一方、イスラム組織 ハマスとの停戦交渉が遅れるなか、イスラエルはカタールの首都ドーハでハマス幹部を 標的に空爆を実施した。米大統領が不満を示したが、イスラエルはカタールにハマスを 追い出すように要求した。地政学的リスクが続いていることも金の支援要因である。 【ステーブルコイン発行で暗号資産やドルの行方も焦点】 米国で7月、ドルや米国債などを裏付けとするステーブルコイン規則法であるGEN IUS(ジーニアス)法が成立した。ステーブルコインはドルに対して一定の価値を保 つように設計されており、決済、送金手段として用いられている。欧州では2024年 6月にMiCA(暗号資産市場法)が発効し、準備資産の裏付けを要求している。日本 では2023年6月に改正資金決済法が施行、今年8月にJPYCという日本初の円建 てステーブルコインが認可され、今秋に発行される見通しである。暗号資産のブロック チェーンの技術が使用されるが、従来の価値が変動する暗号資産とは区別され、電子決 済手段として定義された。ステーブルコインが普及すれば手数料で不利になるクレジッ トカード会社や銀行の業績に影響が出るとみられている。また投資家の暗号資産に対す る関心が高まるとみられている。一方、上海協力機構(SCO)やBRICS首脳のオ ンライン会議で、中国の習近平国家主席は多国間貿易体制を守るように呼びかけた。ス テーブルコインがきっかけとなってドル離れが進むようなら、金が逃避先として買われ るとみられる。 【米利下げ見通しで金ETF・先物ともに買われる】 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、9月15 日に976.81トン(7月末954.51トン)となった。米連邦準備理事会(FR B)の利下げ見通しを受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CF TC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは9 月9日時点で26万1740枚(前週24万9530枚)となり、2月18日以来の高 水準となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えるなか、高値での買いが続い ている。 (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行) *17日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。
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