プラチナは高値圏でもみ合い、米利下げ観測後退も供給不足見通しが下支え

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
 プラチナの現物相場は、10月に金の史上最高値更新を受けて2013年2月以来の
高値1729.52ドルを付けたのち、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の
利下げ観測後退などに上値を抑えられ、1500ドル前後に下落したが、3年連続の供
給不足見通しが下支えとなり、もみ合いとなった。インフレ高止まりやBRICSなど
新興国を中心にドル離れの動きがみられることも下支え要因である。ドル安を受けて金
が史上最高値を更新すると、プラチナもつれ高となるとみられる。
 10月28〜29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(F
F)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き下げ、3.75〜4.00%とすると決
定した。労働市場減速のリスクを受けて9月に続いて2会合連続で利下げが決定され
た。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で「12月の利下げ決定は既定路
線ではない」と述べた。11月19日に公表された議事録では、データ不足やインフレ
高止まりで意見が分かれるなか、反対票が出るなかで利下げが決定されたことが明らか
になった。米政府機関の一部が10月1日から閉鎖されたことを受け、米雇用統計など
各省庁の経済指標の発表は延期された。11月13日に米議会でつなぎ予算案が可決、
トランプ米大統領が署名したことで、過去最長の政府機関閉鎖は終了したが、11月の
米雇用統計や米消費者物価指数(CPI)の発表はそれぞれ12月16日、18日と
12月の米FOMCに間に合わず、データ不足の状況に変わりはない。ただのウィリア
ムズ・ニューヨーク連銀総裁やウォラーFRB理事、ミランFRB理事が利下げを支持
しており、今後発表される経済指標で代替できるかどうかを確認したい。
【ガザ・ウクライナの和平の兆しで投資資金の動向も確認】
 国連安保理は11月17日、パレスチナ自治区ガザに国際安定化部隊を派遣すること
を認める決議案を採択した。トランプ米大統領がガザの紛争終結計画をまとめた。ただ
ハマスは武装解除しない方針を表明した。また決議はパレスチナ人が国家を樹立する可
能性に言及しており、イスラエルの対応も焦点である。一方、米国とウクライナは24
日、スイスのジュネーブでウクライナ和平案を巡る協議を行った。和平案の項目は当初
の28から19項目に絞り込まれた。ウクライナのゼレンスキー大統領が訪米し、トラ
ンプ米大統領と和平案について協議するとみられており、月内にまとまるかどうかを確
認したい。これまで米ロの核実験の可能性が伝えられるなど、地政学的リスクが意識さ
れたが、ロシアが和平案を受け入れると停戦期待が高まるとみられる。
【プラチナは3年連続の供給不足見通し】
 プラチナETF(上場投信)残高は11月24日の米国で37.61トン(10月末
38.48トン)、21日の英国で11.43トン(同12.29トン)、南アで
6.47トン(同7.18トン)となった。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測
後退を受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明
細報告によると、10月14日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越し
は1万8953枚(前週1万8341枚)に拡大した。米政府機関閉鎖が終了し、発表
が再開された。データは過去のものから、順次発表される予定である。
 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によ
ると、2025年は22トンの供給不足と前回見通しの26トンから下方修正された
が、3年連続の不足予想に変わりはなかった。トレヴァー・レイモンドCEOは
「2025年のプラチナの大幅な供給不足は、貿易摩擦に関連した投資フローによって
拍車がかかった。世界情勢の不確実性が依然として続くなかで、2026年に市場の均
衡という現在の予測は、貿易摩擦の緩和を想定したもの。こうした緊張が続く場合は、
2026年もプラチナの供給が需要に追い付かない可能性が高い」と述べた。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
*25日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。


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