10月末で任期を迎えるドラギECB総裁。任期中のECB理事会は後二回。 最後の大仕事として積極的な金融緩和をどこまで行ってくるのか 注目のECB理事会が9月12日に行われます。 流石に任期切れ直前の10月24日の理事会での緩和実施は厳しいという見方もあり 市場では今回の理事会での緩和を見込んでいます。 前回、7月25日のECB理事会では、 声明において追加利下げや量的緩和(QE)再開の検討方針を示しました。 特に政策金利については2020年前半まで現状か、より低い水準にすると明言しており 市場では今回9月の理事会での利下げを織り込みにかかりました。 ドラギ総裁は理事会後の会見において 「長期間、強力な緩和姿勢を示すことが必要」 「全ての政策手段を調整する用意がある」と発言しました。 現状のECBの政策金利は 主要政策金利が0%、上限金利である限界ファシリティ金利が+0.25%、 中銀預金金利(預金ファシリティ金利)が-0.4%となっています。 今回引き下げが見込まれているのは、このうちの中銀預金金利。 -0.4%から-0.5%に引き下げるという見通しが一般的となっています。 ドラギ総裁は米中を中心とした貿易戦争やブレグジット問題などを受けて ここにきてユーロ圏域内製造業の状況がどんどん悪くなっていると警告を示しており、 物価上昇率の低迷を含め、年後半に向けた欧州景気への警戒感を示しています。 今回の措置で銀行が余剰資金を中銀に預ける際の金利を引き下げることで、 欧州金融機関から市中への資金の流れを刺激して 域内経済全体の金融引き締め状況を回避することが狙いです。 欧州大手金融機関などからは利下げへの反発が見られ、 独二大銀行はともにCEOが利下げで金融システムが痛手と警告を示しています。 とはいえ、各国の中銀総裁は今回の利下げ自体は容認の姿勢と見られ ほぼ確実視されています。 今後の金融政策のフォワードガイダンスについても 緩和姿勢を強調する形での強化が見込まれています。 また、ユーロ圏金融機関の不満解消のためにも マイナス金利が銀行に及ぼす影響を軽減するための金利の階層化 要は現状では金融機関が中銀に預け入れている余剰資金全体にかかるマイナス金利を 対象を指定して階層化することで、軽減するなどのなどの施策も同時に取られるとみられます。 そうした中、注目は量的緩和です。 昨年12月13日のECB理事会で正式に量的緩和(QE)の終了を決めたECB。 とはいえ、これまでの2兆6000億ユーロに及ぶ量的緩和の結果として保有している債券について 償還後の再投資を継続する形でバランスシートを維持しており、 元々これ以上の債券買い入れ(QE)に余裕がないこともあり ユーロ加盟各国は慎重な姿勢を示しています。 とくにドイツ、オランダ、オーストリアといった比較的経済が好調な国からは否定的な見方が目立ちます。 ドイツ連銀のバイトマン総裁は、大規模な景気刺激は最新のデータに即していないと発言。 オランダ中銀のクノット総裁は、債券購入再開を正当化するほど、ユーロ圏経済は弱くないと発言しました。 ECBのラウテンシュレーガー理事(ドイツ出身)も、債券購入再開の必要性を感じないとしています。 ドイツやオランダとは意見を異にすることが多いフランスも 直前になって今回の量的緩和実施には消極的な姿勢を示しました。 フランス中銀のビルロワドガロー総裁は同件についての言及をこれまで避けていましたが、 ECB関係者の発言が制限されるブラックアウト期間を目前にした9月3日、同国メディアのインタビューにおいて、 中銀預金金利の引き下げについては必要という姿勢を示しつつも、 量的緩和については、すべての政策手段を同時に使う必要はないと、今回の見送り示唆ともいえる発言を行いました。 もっともドラギ総裁は量的緩和に対して意欲を残していると見られ 金融機関などの見通しも割れています。 実際に量的緩和に踏み切るかどうか。 踏み切った場合、どこまでユーロ売りが進むのかなども含め要注意です。 minkabu PRESS編集部 山岡和雅
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