<ポンド安>市場は合意なき離脱への警戒を強める~ポンドドル2017年3月以来の安値圏

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 ポンドは2017年3月以来の安値圏での推移。合意なき離脱への警戒感が強まっている。

 まずはポンドのブレグジット関連での動きをまとめてみよう。

 2016年の国民投票でのブレグジットの決議は、直前まで否決派が優勢との報道もあり、直前に1.5000近くまでポンド買いドル売りが進行。しかし、予想外にブレグジットが決まり、ポンドが急落。ポンドドルは1.3000を割り込む動きとなった。
 その後1.3000ばさみでもみ合いが続いたが、その年の10月にわずか数十分で9%という急落、いわゆるフラッシュクラッシュを起こして1.1841まで値を崩した。すぐに値を戻し1.27台を付けたもののた、翌年2017年の1月に1.20をわずかに割り込む1.1986を付けるなど、ポンド安の流れが継続。
 その後いったん1.25超えまで回復も、その年の3月に1.2110をつける動きに。その後は本格的に買い戻し局面となり、昨年4月に1.43台まで大きく回復。秩序あるEU離脱への期待や、ブレグジットが現実味を帯びる中での英経済の底堅さなどがポンド買いにつながった。
 しかし、その後再びポンドは軟調地合いに。メイ首相の求心力低下もあり状況が混とんとする中で、欧州議会選挙でのEU離脱強硬派であるブレグジット党の躍進もあり、保守党内でEU離脱派の勢いが強まり、先日のジョンソン元外相の新首相就任を受けて、合意なき離脱懸念がさらに強まるという状況がポンド売りを誘い、2017年3月以来の安値圏で脳いいとなっている。

 EUとの対立ポイントについて整理してみる。

 メイ首相がEUとの合意をまとめるにあたって譲歩を見せ、当時の英政府とEU首脳で合意した事項のうち、英保守党内で受け入れられなかったのがアイルランドと英領北アイルランドとの国境線問題でのバックストップ。同問題を抱えたままではDUPの協力が得れないことに加え、保守党内でも大多数の支持を得られない。
 保守党党首選の中でも穏健派の代表格であったハント前外相ですら、バックストップは期限付きでも認められないと発言しており、保守党内ではバックストップは決して認められないという意識が強いと観測される。
 しかし、一方でEUはバックストップなしでの合意はあり得ないという立場をとっている。

※バックストップとは
 1998年のベルファスト合意によって、英領北アイルランドとアイルランドの国境選では、国境管理が廃止されている。
 今後英国がEUを離れることで、英領北アイルランドとアイルランドでは関税や規制体系が異なることになるため、何らかの国境管理が必要になる。
 EUは北アイルランドをEUの関税同盟と単一市場の体系内に留める形での安全策を提案、これがバックストップである。
 ただ、この場合実質上の国境線が北アイルランドと英国本土であるグレートブリテン島との間にひかれる形となる。
 そのため、北アイルランドの地域政党で、与党に閣外協力しているDUP(民主統一党)が強く反発。
 北アイルランドも含めて英国であるという立場の保守党議員も多くが反発する形となった。 

今後について

 副首相格であるラーブ外相とバークレイEU離脱担当相を中心にEUとの再交渉を目指すジョンソン政権であるが、上記のバックストップ問題での合意ポイントが見えず、10月末までの合意はかなり難しい。ジョンソン政権はゴーブ国務相をリーダーとして合意なき離脱に向けた準備チームを作っており、合意なき離脱に向けた動きが加速している。市場は合意なき離脱に向けた動きを強めると見込まれる。この場合のポンドの下落は現水準程度ではない可能性が高いだけに、今後に注意が必要な状況。

minkabu PRESS編集部 山岡和雅

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