ドル円は108円を割り込む ラガルドIMF専務理事が次期ECB総裁へ=NY為替概況

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 きょうのNY為替市場、ドル円は下値模索が続き108円を割り込んだ。きょうの市場はドル売りは強まってはいなかったが、米10年債が再び2%を下回るなど、米国債利回りの下げがドル円を圧迫したようだ。週末の米中首脳会談を無難に通過し、市場は貿易問題への懸念を一服させていたが、今度はトランプ政権による対EUへの追加関税の可能性が市場の懸念を再燃させている。

 米USTRはきのう、EUの大型民間航空機への補助金を巡り、WTOでのEUとの紛争で米国の権利を行使するため追加関税の可能性がある約40億ドルの製品リストを提出するとの声明を発表した。オリーブオイルやイタリアンチーズ、スコッチウイスキーなどが挙げられている。ただ、関税が賦課されるかどうかは未知数との見方もあるようだ。

 米中首脳会談の無難通過でドル円はきのうに引き続き108.50円水準を何度か試す場面も見られたが、またしても上値を拒まれている。そのよな中で米10年債が2%を再び下回ってきたことで、短期筋の見切売りも出ている模様。

 21日線が108.10円付近に来ていたが、その水準を再び下回っている。世界経済の先行きに対する不透明感も根強い中で、ドル円はリバウンドこそしているものの、上値に慎重な雰囲気を変えていない。目先は21日線を早期に回復できるか注目される。なお、フィボナッチ38.2%戻しも下回って来ている。50%戻しがターゲットとなるが、107.65円付近に来ている。

 ユーロドルは1.12ドル台に下落。21日線が1.13ドルちょうど付近に来ており、その水準を再び下回った。ロンドン時間にユーロは一時的に買い戻しが強まる場面が見られた。一部報道でECBは7月に利下げを急がず、今回は9月を視野にガイダンスを微調整すると伝えている。ECB当局者らは見通しが悪化した場合には今月25日の理事会で行動することが可能だと同意してはいるものの、今回はで追加金融緩和に踏み切る用意はなく、景気に関するさらなるデータを待つ考えだという。

 一部からは7月利下げの見方も出ていたが、全体的には9月の利下げが有力視されていたことから、ユーロは一時的な反応に留まっている。100日線が1.1260ドル付近に来ており下値メドとして意識される。

 なお、EU首脳は次期ECB総裁にラガルドIMF専務理事を指名した。この報道にユーロは売りで反応。そのほか、フォンデアライエン独国防相を新欧州委員長に指名した。ただ、それ自体への反応は限定的。ラガルド氏の総裁としての手腕は未知数で、ハト派なのかタカ派なのかも不明。ただ、景気支援する方向で動く可能性は高いと見られているのかもしれない。また、ドラギ総裁よりも表でのコミュニケーションを積極的に取って来るのではとの見方も出ている。

 ポンドは売りが強まり、ポンドドルは1.25ドル台に下落。カーニー英中銀総裁の発言が伝わり、「世界貿易の緊張が下振れリスクを高めた」と言及したことに敏感に反応している模様。「第2四半期の成長は弱いことが見込まれ、市場が利下げを予想していても驚きではない」とも述べていた。

 前日の製造業に引き続き、きょうは建設業のPMIが発表になっていた。結果は43.1と予想を大きく下回り、統計開始以来の低水準となった。英企業の景況感は悪化が続いているが、これまで英中銀は経済のファンダメンタルズに関しては自信を覗かせ利上げの可能性への言及を続けている。そのような中、きょうのカーニー総裁の下振れリスクへの発言は英中銀がファンダメンタルズに関してもハト派に転じる可能性を市場は意識したようだ。

minkabu PRESS編集部 野沢卓美

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