とれんど捕物帳 米中首脳会談を巡って一喜一憂の中で少し気掛かりな数字も

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 今週のドル円は106円台に下落する場面が見られるなど下値模索が続いていたが、週後半には買い戻しも見られていた。200日線から3.8%下方かい離し、過熱感を示すテクニカル指標のRSIも25まで低下していた。30を下回ると下げ過ぎのサイン。5月からの下げで、さすがに過熱感も出ていた。

 きっかけはブラード・セントルイス連銀総裁の発言であっただろう。同総裁は先日のFOMCで利下げを主張し反対票を投じるなどハト派の急先鋒となっているが、「市場が7月に0.5%の大幅利下げを期待しているのは行き過ぎ」と述べていた。今週は第2四半期末ということもあり、ポジション調整のショートカバーが出易かった環境もあったであろう。ただ、あくまで自律反発の範囲で、下向きの流れが変わったわけではない。

 今週も大阪G20サミットの際に行われる米中首脳会談を巡って一喜一憂していたようだ。市場の一部では期待が高まっているようだが、ホワイトハウスはその期待にブレーキをかけようとしているとの報道や、ムニューシン米財務長官の合意に前向きな発言、そして、中国紙による米中の暫定的休戦の報道などが市場をシェイクさせた。

 市場では、今回の米中首脳会談では最終合意まではなく、今後も協議継続を条件に、今回は追加関税見送りとのシナリオが有力となっている。自身もそのシナリオが有力と見るが、トランプ大統領のリスクは留意しておく必要はありそうだ。大統領はテレビのインタビューで、「G20での首脳会談に進捗がない場合はプランBを用意している。もしかすると自身の中ではプランAかもしれない」と述べていた。それは残りの3000億ドル規模の中国からの輸入品への関税発動だが、その場合は「25%ではなく10%」だとも具体的に述べていた。

 もし、その結果となれば、週明けの市場は大荒れが予想され、リスクは留意して置きたいところではる。首脳会談はきょう29日に大阪で行われ、何らかの声明が発表されるであろう。世界中の注目となりそうだ。

 経済のファンダメンタルズよりも政治情勢に市場は翻弄されているが、今週発表の米経済指標で少し気掛かりな数字があった。火曜日に発表された6月の米消費者信頼感指数だが、このところは同指標への反応もほぼなく、あまり参考視されないことが多いマイナーな指標になっている。

 ただ、今回は予想外に大きく低下し、2017年9月以来の低水準に落ち込んでいた。米中問題などが影響した可能性がありそうだが、詳細を見ると、6ヵ月後のビジネス環境や雇用、所得の予想がいずれも悪化しており、米消費者が先行きに不安を感じ始めていることを示唆する内容ではある。

 米経済の7割を占め、世界経済をも左右する米個人消費は、4-6月期は底堅さを維持し、下期もそれなりの推移をメインシナリオとするが、上記の米消費者のセンチメント低下が早期に回復せず、下期も続くようであれば、米経済及び世界経済は黄色信号が点灯するリスクも警戒される。FRBは予防的利下げに動きそうだが、景気のピークアウトへの警戒感が根強い状況の中で、従来のような適温相場への回帰は期待しにくい。その場合は、いよいよということになるのかもしれない。

 さて来週だが、ドル円は週後半に反発を見せたものの、下向きトレンドは強まっている。110円よりも105円のほうが先になりそうな流れだ。来週は7月相場入りだが、ドル円に関してはいまのところサマーラリーは期待しづらい状況ではある。来週は週末の米雇用統計を始め、ISM指数など重要な指標が発表されるが、何かをきかっけに売りが強まるリスクは警戒しておきたいところではある。予想レンジとしては106.00~108.70円を想定。スタンスは「やや弱気」を維持する。

()は前週 
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓↓)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↓)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↓↓)

◆豪ドル円(AUD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓(↓↓)

◆ユーロドル(EUR/USD) 
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 下から中立へトレンド変化
短期 →(↓)

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次回の配信は7月13日(土)の午前を予定しています。ご了承ください。
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minkabu PRESS編集部 野沢卓美

このニュースの著者

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