[Vol.1045] 夏季五輪は「多様性」を紡いできた

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.05ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,800.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,205元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年09月限は450.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで745.05ドル(前日比5.25ドル縮小)、円建てで2,632円(前日比18円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月28日 17時11分頃 先限)
6,370円/g 白金 3,738円/g
ゴム 214.1円/kg とうもろこし 33,950円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「夏季五輪は「多様性」を紡いできた」

前回は、「実は東京は3度、夏季五輪の開催国になっていた」として、夏季五輪と東京の関係について、述べました。

今回は、「夏季五輪は「多様性」を紡いできた」として、夏季五輪に係る各種データに注目します。金(ゴールド)相場を分析する際のアイディアを練る上で、これらのデータは確認する意味があると、筆者は考えております。

以下のグラフは、夏季五輪における、選手数、参加国・地域数、競技・種目数、開催日数のデータです。近年、選手の数は全体として増加傾向(男性減少・女性大幅増加)、参加国・地域数は頭打ち、競技・種目数は増加、開催日数は横ばい、であることが分かります。

女性の選手数が大きく増加していることからは、夏季五輪において、社会が求める女性の社会進出・活躍が、実現しつつあることが伺えます。今回の東京大会の女性選手の比率は過去最高となる、48.8%です。(参考までに、2018年の平昌冬季五輪の女性選手の比率はおよそ42%とみられます)

参加国・地域数については、上図のとおり、政治的な理由でボイコット(自分たちの考えを強く主張するため、意図的に大会にでないこと)が起きた場合、一時的に減少することがあります。

1976年の第21回モントリオール大会では、アフリカの20カ国以上が、人種隔離政策を執る南アフリカと大会参加国の一つであるニュージーランドが交流があることを理由にボイコットしました。

1980年22回モスクワ大会では、前年の旧ソ連(ソビエト連邦)のアフガニスタン侵攻を理由に、米国や米国と関りが深い国、旧ソ連と反対の姿勢を取る国、合わせて65カ国がボイコットしました。

大会への参加は、NOC(National Olympic Committee国・地域ごとのオリンピック委員会 JOCなど)に加盟していることが求められますが、IOCが承認するNOCの数は206で、今回の東京大会には206のNOCの選手が参加する予定です。

外務省の資料によれば、世界の国の数は196です(2021年3月12日時点)。これらから、IOCは現時点で、ほぼ全ての国にあるNOC、そしてそれ以外のおよそ10の地域に属する選手の大会への参加を認めているわけです。今後、国や地域が細分化されない限り、これ以上、参加国・地域が大幅に増加することはないと、考えられます。

競技数・種目数は、この数回の大会で増加しています。今回の東京大会では、5競技、合計34種目が追加されました。競技は、野球・ソフトボールが復活し、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンが新たに追加されました。

種目では、アーチェリーや陸上、トライアスロン、卓球、水泳などの競技に男女混合の種目が、ボクシング、カヌー、自転車競技などに女子選手のみの競技が追加されました。混合や女子選手のみの種目が増えていることと、女性選手数の増加は密接な関係がありそうです。

また、IOCは、コンピューターゲームを使った対戦をスポーツ競技である「eスポーツ(esports)」に注目していると、報じられており、今後の大会(2024年の第33回パリ大会、2028年の第34回ロサンゼルス大会、2032年の第35回ブリスベン大会など)で正式競技になる可能性もあり、今後も、競技数・種目数が増加する可能性があります。

開催日数については、第二次世界大戦後の第13回ロンドン大会後、おおむね2週間で行われており、大きな変化がありません。参加者が増え、競技・種目数が増えても、日数はほぼ変わらず、です。この点は今後の課題なのかもしれません。

次回以降、夏季五輪における、金(ゴールド)に関りが深いデータに触れます。

図:夏季五輪における各種データ


出所:IOC(International Olympic Committee)の資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。